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第二部1章 黒き鎖の呪痕 奪われつつある光の章

6.卵が三つ。一つは本命、一つは予備……はて?残りは…………?

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これは……一応、聞いた方がいいんだろうか?
着替えが終わり、しばらくしてから部屋に入ってきたセレストとイアン。
今、問題なのは………

「あ、の、イアン?」
「うん?」
「その…頬っぺた、どしたの?」

イアンの頬っぺたは軽く腫れてる。しかも、これどう見ても手形だよな?

「これか?これは…まぁ、気にすんな」

いや!気になるよ。むしろ、気にならない方がおかしいだろ?
そっぽ向いてるセレストは若干怒ってるし……
あれ?これはもしかして……聞くだけ野暮というものでしょうか?

「放っておけ、アヤ。当人たちの問題だ」

バルドに諭され、確信しました。
ちょっと聞いてみたい気はするが、やめとこう…だってセレスト怖いもん…

「失礼します。入ってもよろしいか?」

アスラの声がし、ユフィカ・ラトナの二人も入ってきた。

「よくお休みになれましたか?」
「はぁ……まぁ…」

チラリと横を見るが、当のバルドは素知らぬ顔だ。
まぁ、そうだな。この俺様が反省なんざするわけもない。

「昨日の話をしようか?まずその前に、今回は助力してもらい助かった。礼を言う」

改まってラトナから礼を言われた。まぁ、関わった以上無視もできないしね。

「ダラダラ話を続けるのもなんだ、さっさと話す。まず、お前たちの目的は、オス同士で番となり、子を成す方法を得る事。間違いないか?」
「うん。今言うのもなんだけど、あるかないか半信半疑で来たからな。あるって分かって驚いたけど……」
「こちらとしては、真大陸の方に話がいってた事に驚いた。話の出処はこの際いい。聞いたところでどうなるものでもない。方法についてはもういいな?ラァムの実。差し当たって、幾つ必要だ?」

とりあえず一つあれは十分だ。

「昨日聞いたと思うが、あと三月もすれば、俺たち犬狼は発情期になる。だから、あまり多くは困るぞ?多数必要なら、発情期が終える更に四月後にまた来てもらわねばならん」
「そんなに要らないって。一個あればじゅ……」
「三つ貰おうか」
「バルド?」

俺を遮りバルドが応えた。
三つ?何で、三つも?

「一つは本命。俺とアヤが使う。もう一つは不測に備えた予備。もう一つは……悪いが個人的な用向きだ」

何それ?俺、何も聞いてないし、何でそんな言いにくそうなんだ?

「三つだけでいいのか?」
「あぁ、十分だ。後々、必要になれば交渉させてもらっても?」
「考慮しよう。ラァムの実については以上でよいか?」
「あぁ」
「ロシュと付き従っていた者たちの処遇が決まった。ロシュは後継からは外された。後継は、そこにいるアスラになる。それから、ユフィカを守ってくれたのと、迷惑かけたアヤにはこれを……」

コトリとテーブルに小さな小箱が二つ置かれた。何かモノリスの時を思い出す。

「……バカ高い宝石の原石ドォーン!とかやめろよ?」
「そんな下品な事するか!」

うわ!下品って言っちゃったよ?
ディオン、クシャミしてなきゃいいけど……

「えと、これ、は?」

開けてみろと促され、まず右側から恐る恐る開ける。中に入っていたのは………

「耳飾り?」

ピアスが一対。赤・紫・青のグラデがかった不思議な色味の石。涙型にカットされたそれに、シンプルな金の金具。
バルドが口元を手で覆い呻く。
え?え?な、何?何?何だよ?!

「魔鉱石……しかも、『サラマンディアの涙』か…俺も初めて見る……」

バルドが?皇子で皇太子のバルドをもってして、初めてって……

「『レイティア・サラマンディア』…グレインバルド、貴様も聞いた事あるだろう?」
「愚問だ……ラトナ、てめぇ…人の伴侶になんて代物渡しやがる」

二人だけで会話しないでほしい。なんの事かさっぱりなんだけど?

「セレスト…サラなんとかって何?」
「竜の希少種だ。火竜サラマンディア。混血を伴わない、生粋の炎竜同士から生まれる、火竜の純血種。『レイティア・サラマンディア』は、火竜でありながら、水竜オンディーヌの力も持つ稀種の火竜。その火竜が流した涙が結晶化したのが、魔鉱石であるあれだ」

言ってる内容全部は理解できない。けど……とんでもなく、とんでもない代物なのは理解できた。
それって……

「えっ、と……ちなみに、お幾ら万円?」
「お?値段の事か?」

コクコク頷くと、ハァッと溜め息つかれてしまう。
聞くのがこあい。

「知らん…そもそも、人間如きがどうにかできる代物ではない」

ひ、えぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
いやぁーーーーーー!怖すぎるーーーー!!!!!

そんな天文学的価値あるモノを身につけろと?
阿保か!気疲れで神経磨り減るわ!

「俺、無理……」
「…………いい。分かった…受け取ろう」
「バルド?!」

俺はバルドがラトナに返した意外な答えに、思い切り瞠目していた。








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