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第二部1章 黒き鎖の呪痕 奪われつつある光の章
1.小さな波紋 できる・できないはデリケートな問題です!!①
しおりを挟むモノリスから戻り、二日。
あれからすぐに、アレイスター様に頼みごとをするべく、俺は動いた。
すなわち………
「アヤ。クレイドルを離れるの?」
「うん。ちょっとね………」
マダムの店。
ファランやラーシャ、店の人たちに報告に来ている。
しばらく、帝都を離れる事を伝える為に。
「何で?理由は?何かあるの?」
「ファラン……」
泣きそうなファランに、俺は気持ちがぎゅっとなる。勿論、理由が話せるわけもなく……
「ファラン。矢継ぎ早にあれこれ聞くもんじゃないわ。アヤにはアヤの事情があるの。第一、聞いてどうするの?」
俺が困ってるのを見かねたのか、特に何を聞くでもなく、ラーシャがファランを諌めてくれた。
「だって!ラーシャ、アヤがどっか行っちゃう!だから……」
「だから、止めるの?それが、アヤにとって大事な事でも?」
「そ、れは………でも…」
あぁあ、ファラン泣いちゃう(汗)
とうとう、泣き始めてしまったファランを、ラーシャがそっと抱きしめる。ラーシャに縋り付き泣きじゃくるファランに、悪い事してるわけじゃないけど、申し訳なさでいっぱいだ。
「帰ってくるんでしょ?」
それは……そのつもりだが。確証はない。応えあぐねていると、
「帰ってきなさい!絶対!じゃなきゃ、あんたのせいで、ファランの涙は一生止まんなくなるわよ?」
それは、困る。そんな事になったら、自分が一生許せなくなりそうだ。
「分かった。戻る…必ず」
「それでいい。待ってる者がいる、あんたが居なくなれば泣く者がいる事を覚えときなさい」
*
*
泣く者がいる……か。
「アヤ…」
マダムの店からの帰り、後ろから呼び止める声に振り返る。
「キサ」
「離れるのか?ここを」
キサとはモノリスで一緒だったから、事情は知ってる。
「うん……このままじゃいられないし」
「神の台座だったな。だが、何もお前一人が背負わなくても……」
「そうも言ってらんない…女神戦争の例がある。俺が引き金になれば、また悲劇は二の舞だ。だから、行くよ」
「………………」
「大丈夫だって!逃げないから。俺は逃げない。ただ、運命から逃げたって何も解決しない。だから、見つけて壊すよ、神の台座」
「……そうか。あいつも…皇太子も一緒なら、大丈夫だろうな」
「…………うん。そう、だな」
「アヤ?」
歯切れ悪く返した俺に、キサが怪訝そうにするが、俺はやんわり笑い、何か言いたそうなキサを残しその場を去った。
*
*
帰城し、アリッサとローレンに頼み、謁見にふさわしい礼装を用意してもらう。
湯は使い、体はすでに清めてある。支度は自分でした。二人の有能な侍女が用意したのは、白い礼装。白い刺繍と、金があしらわれたそれは目にも眩しい。
鏡を確認し、ふと煌めく紫の光に一瞬だけ微笑み、意を決し、両耳から外す。今まで感じていた微かな重みがなくなり、一度目を閉じ、ゆっくり開くと同時に鏡の前にそれを置く。チリッと小さな音を立てるのを聞かないよう顔を背け、俺は静かに部屋を出た。
*
*
回廊は静かだった。
不思議と誰もおらず、衛兵一人にさえ会わず謁見の間の扉前に辿り着く。
扉を開ける兵はいない。人払いを頼んだのは俺だ。
ゆっくり扉を開け中へ入ると、玉座に鎮座するのは只一人。
「お目通り、感謝致します。クレイドル国王、アレイスター陛下」
玉座下の階段まで歩み寄り、俺は跪き、ゆっくりと頭を垂れる。
臣下の礼と口上。もう、慣れたな。
「其方からの願いを受けてから待ったが、気持ちは変わらないか?」
「はい……」
「さようか。では、あれへはどうした?すでに?」
「いえ……言えておりません。言わぬまま、行こうかと思っております」
「言わぬ、と?」
「御意に……」
「互いに苦しむだけだと思うがね?ちゃんと、話をしなさい。アヤ」
「陛下?ア、レイスター様…?」
ニコと、が、少し呆れたように微笑み、背後を指し示すアレイスター様の動きに、俺はゆっくり振り返る。
そこには……………ーーーーーーーーーーーー
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