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第4章 忍びよる闇の策略と失われし久遠の刻編

16.真実は時として残酷なり①

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「そもそも、女神が何故六つの個である我々魔導を創ったか…一つは、自身を守る為。もう一つは、光を守る為」
「自分を守る為に、己自身の力を分散させては意味がなかろう?」

カーティスの言い分は最もだ。守るべき力をバラバラにしては、ただ力が弱くなるだけだ。

「普通ならばそうでしょう。しかし、この場合は分けるしかなかったのですよ」
「と、言うと?」
「力を分けねば、女神自身が狙われるからです」
「狙われるとは……随分、物騒な話だ。一体、何があると……」
「神の台座……全ての始まりで発端です」

神の台座。
初めて聞いた言葉なのに、心臓がドクンと大きく脈打つ。ギュッと鷲掴みにされたかのように胸が痛い。

「アヤ、どうした?大丈夫か?」
「……大丈夫。へいき」

バルドが心配そうに聞いてくる。話の腰を折るわけにはいかない。普通に返し、軽く笑んで見せた。
本音で言えば、怖くて仕方ない。
俺、この世界に来てからこんなんばっかり。俺が感じる恐怖や不安は、一体どこから来てるんだ?

「女神や神がまだ人と密接にしていた時代。今から、およそ、数千年前ーーー。我々の生みの親である、女神アウフィリアは、ある神と些細なことから口論となり、決して生み出してはならぬものを創り出してしまった。それが……ーーー」
「神の台座……」
「えぇ…」
「そもそも、それはどういったものなんだ?」

バルドの問いに、ディオンが少しだけ躊躇い、意を決したように口を開く。

「万物の再生と創造、破壊と混沌を自在とする物とだけ、聞いております」
「端的に言うと?」
「世界を意のままにする力…と言えるでしょう」
「とんでもねぇな……」

さすが女神。創り出すものがえげつない。

「その、神の台座とやらと、我々の関係は何なのだ?」
「台座は、ただ持っているだけでは使えません。使う為の条件がある」
「条件?」

ディオンが俺にひたと視線を向け、無言で見つめた後そっと目を伏せる。

「女神の持つ光の魔導と………ッ…」
「何なのだ?!早く、言え!」

痛まし気に顔を背けるディオンに、カーティスの苛立った声。バルドは、僅かな怒りを含んだ顔で真っ直ぐ前を見据えている。

「命、か?」
「ッっ!!」

静かに、だが、確実な音をもってバルドの言葉が伝わった。
ディオンが息を呑み、だが、やがてゆっくり溜め息をはいて頷く。

「ご推察通りです、グレインバルド殿下」
「馬鹿な!命だと?!では、女神は……」
「カーティス殿下もお気が付かれましたか?えぇ、ご想像通りです。女神は、自分の持つ光を奪われない為と、女神が女神自身の命を守る為に、魔導を六つの個に分けた。それが、今日の我々、女神の魔導です」

凄い話だな。スケールが大きい。でも、やっぱり、神様ってのは………

「勝手だな、神ってのは」

俺が言うより先に、バルドが言った。口元には、薄っすら笑みを浮かべているが、瞳は恐ろしいくらい冷たく凍りついている。

「保身の為に力を分け放て、奪われない為…光を守らせる為に、残りの五属性魔導を創り出した。守るという気持ちをせさせん為、女神の枷をかけた。それが、光への圧倒的な執着心。全ては、自分自身を守る為……勝手だ勝手だと思っていたが、つくづく身勝手な女だ!」
「バルド?!」

グワッと、バルドの魔導が膨れ上がる。冷たい、極寒とも言える、肌を凍てつくほどの冷気の魔導。
肌が…痛い。
ピキピキ、ピシピシ音が響く。
これ、ちょっと…
全員、一旦バルドから離れた。

「マズイな。怒りが膨れ上がってる。グレイの女神嫌いは元々だが、今の話で火に油だったようだ。さすがに止めんと、空間ごと消し飛ぶ」
「セレスト様、サラッと怖い事言わないでください。どうすりゃいいんです?」
「俺の魔導をぶつけるか?」

セレスト以上に物騒だっての、カーティス。

「いえ……アヤ」
「俺?俺の力じゃ、バルドには勝て「る。力じゃないがな」
「力以外で、グレインバルドを?シーファが危険ではないやり方だろうな?」
「姫の花のような肌が傷付くのは駄目ですよ?真珠と花は美しく、優しく繊細に柔らかく愛でるものです!」

ディオン……残念なのはフリかと思ったけど、素だったか。
まぁ、今はそんな事より……

「大丈夫だ。アヤ、耳貸せ」

今にも爆発しそうなバルドを気にしつつ、俺はセレストから耳打ちを受けるべく近づいていく。
俺だって、空間ごと消し飛ぶなんてヤだし、俺に止められるんなら止めたい。
だけど…なぁ~んか、ヤな予感すんだよね。

はたして、そのやり方は…ーーーーーーーーーーーー




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