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第4章 忍びよる闇の策略と失われし久遠の刻編
10.初めての??①
しおりを挟む目を覚ますと、俺はバルドの腕の中にいた。
バルドの部屋の、バルドのベッドの上で。
自分に都合のいい夢だと思っていた。本当は、まだあの暗い塔の中にいて、イヴァンに追われ、捕まり、あれ以上に酷い目に会い、と、だから………
目の前で優しく強く抱きしめてくれる存在は現実じゃ…
でも、バルドの匂いが……する?
「頭は起きたか?」
「え…え?ここ、は……」
「城だ。起きてるか?アヤ」
やんわり抱き起こされ、だんだん頭が覚醒すると同時に、今までの出来事がフラッシュバックする。
「や……やっ!!」
「アヤ、大丈夫だ…大丈夫だから、こっち見ろ…俺を見ろ」
逃がしかけた体を、半ば無理矢理引き戻され、視線が合わさる。綺麗なサファイアだ。
「ゆっくり、息しろ。…大丈夫だから」
言われた通りにゆっくりと呼吸を繰り返す。
「落ち着いたら、目を開けて……俺が分かるな?」
「バル、ド………」
「いい子だ。話、できそうか?」
「うん…多分、大丈夫」
早鐘打つ心臓を何とか宥め、俺は顔を上げて周りを見渡す。見慣れたベッドに、調度品。部屋には、落ち着く香りが満ちている。
「ごめん…ごめん、俺。また、みんなに迷惑かけた」
自分が、自分だけがどうにかなればなんて、そんな訳ないのは前回で分かってたはずなのに。
ファランに続いて、今度はリコ…多分、また泣かれて、キサとラーシャに説教されて………
いい加減学習しろよ、俺……
情けなくて……涙が…
「もう、ねぇよ」
「え?」
「もう、誰にも攫わせねぇし、誰にも奪わせない」
「あ、の……」
「まぁ、それには、お前がもう少し自覚して、軽はずみな行動しねぇってのが前提だがな」
「う、……ごめんなさい」
み、耳に痛い!
顔を合わせて、バルドと二人笑いあう。
「思い出すの嫌かもしれんが、とりあえず話してもらわないといけない。大丈夫そうか?」
「うん……」
多分、イヴァンに攫われてからでいいかな?
とりあえず、攫われて以降何があったかを、俺はバルドに話した。
「イヴァンたちはモノリスに行ったんだな?」
「うん。で、魔物の体を都合してもらって、融合?っていうやつ、してもらったって…俺が連れてかれたのは、暗黒の塔っていうらしい。部屋から逃げた後、俺捜してた奴らが話してるの聞いたから」
「モノリス…暗黒の塔」
「何か分かるか?バルド」
「いや……これだけだと、まだ何とも。そもそも、土の魔導の国であるモノリス自体が、未開の国だからな。暗黒の塔とやらが、モノリスにあるのかないのかどうかすら判断できん」
「鎖国なんだ、モノリスって…」
「さこく?」
「あ~、え、っと、国自体、他の国との交流を絶って、自国の情報が外に漏れないようにする、みたいな?」
「ああ、そうだな。確かに、モノリスはそれで言ったら、さこくだ」
モノリス……イヴァンたちはそこで…
沈んだ俺に、バルドが頭をポンポンしてくれた。
「魔物と融合した時点で、そいつはもう人じゃない。だから、お前が気に病む必要もない」
「バルド、だけど!」
「アヤ、よく聞け。魔物は確かに無害なのもいる。リラやゲルグなんかはそうだ。だが、多くはそうじゃない。そんなものと交わり、己を、人を捨てた時点で、そいつはただ、人の形をしただけの異形と成り下がる。そんなものでも傷つけたというお前の心根は美しいが、奴らはお前が胸痛める価値もないし、第一、それを知ったからといって何を思う心すら持ってねぇ。あいつらにあるのは、自分の欲求を満たしたいという本能だけだ」
俺が傷つけ、多分、殺したのは人じゃない…バルドはそう言いたいのか?
もちろん、生き物である以上、傷つけたり殺したりはよくない。だけど、少なくともそれが自分と同じ人ではないとしたら、少しは気持ちも楽になるだろうと…
身を守る為に、止むを得ず殺めたのは仕方ないと…
でも……
「許されない、だろ……食べる為だとか、理由あって殺すならともかく……」
「俺が許す。他の誰が、たとえこの世界の者全てがお前を許さないとしても、俺は、俺だけがお前を許す」
「バルド……」
呆気にとられた。
相変わらずの俺様ぶりだ。強引で優しい皇太子様のおかげで、ちょっとだけ胸のつかえが取れる。
思わず笑ってしまった俺に、同じく笑ってからバルドがベッドから降りる。
「報告なんかがあるから行く。お前はまだ寝てろよ」
「え…?バルド、行くの?」
思わず、何で?という感じの声が出た。バルドもそう感じたのか、?という顔だ。
二人して顔を見合わせたまま数秒。バルドが、ハァッと深く溜め息一つ。
「お前は……無自覚で人煽るな」
「え…え…え?…………………………………ッッ!?」
バルドの言葉を反芻し、理解した途端、俺は顔と言わず全身大噴火させた。
俺、あれじゃ、無意識に「行っちゃイヤ♡」って言ったも同然じゃない?!
いやぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
恥ずい恥ずい恥ずい恥ずい恥ずい!
バルド、絶対呆れてる!攫われて、助け出されて、一人で勝手にパニくって、挙句に何言っちゃってるんだ?って、ぜーーーーーーったい思ってるよ!
最低!俺。不謹慎だ!何考えてんだよ!?
いつもはヤダヤダ言ってるクセに、こんな時だけバルドを欲しがって……
勝手すぎる……
情けないし、恥ずかしいし。自分に対して腹が立つしで、涙が溢れて……
「あ、え、ちが!ご、ごめ…なし!今のなしだから!だから、……あっ!!」
慌てて言い繕ったら、いつの間にかバルドに抱き寄せられていた。
*次は☆入るかなぁ~?
子猫よ、責任は自分でとろうぜ?的な(笑)
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