上 下
104 / 465
第4章 忍びよる闇の策略と失われし久遠の刻編

3.闇の鎖①

しおりを挟む



セレストに連れられ、俺はマダムの店に戻った。

「明日、また迎えを寄越す。それまで……」
「ウロチョロすんな……」
「分かってるならいい。じゃあな」

俺ってどんだけ信用……………………まぁ、ないな。
自分がこれまでやらかした事を思い、そっと溜め息をついた。

「おかえりなさい、アヤ」

裏口から入ると、休憩部屋でリコが寛いでいた。傍らには何やら大きな荷物。

「ただいま。リコだけ?」
「うん。キサはマダムと一緒に御用聞きよ。ファランもお使いに行ってるし、ラーシャは接待中。あたしは、休憩終わったら、これ頼まれてるから持ってくとこあるし」
「重そうだね、持とうか?」
「え…あたしは助かるけど。アヤ、いいの?」
「何が?」
「だって…出歩くなって、殿下に言われてない?」
「………………」

何だかなぁ~…俺ってほんと信用ないな。

「大丈夫だろ?確かにウロチョロすんなって言われてるけど、一人でって意味だし。リコと一緒なら、一人じゃないし」
「そう?でも、あたしじゃ、アヤの護衛にはならないよ?」
「………………」

リコ~?逆だよ~?立場、逆、逆!
う~~ん、何か悲しくなってきました。
ガックリしょんぼりなりながら、俺は力なく笑う。

「とりあえず、大丈夫だから。ね?手伝うよ」
「う、ん…分かった!じゃあ、ゴメンなさいだけど、手伝ってくれる?」
「もちろん!」

ずいぶん躊躇ってから、リコがようやく頷いてくれた。ニコッとはにかみながら笑う。
あぁ、可愛い。テレッてなりながら俺も笑顔。
荷物を届けるのは、店から歩いて十五、二十分くらいの古道具屋との事。
荷物の箱は持ってみると意外に重い。女の子でも持てない事ないけど、これ持って十分以上歩くのはかなり骨が折れそうだ。
中身は歌舞団の興行で使う際の小道具類。興行依頼のない、今のうちに修理に出すとの事だ。

「じゃあ、行こうか」
「ごめんね。ありがとう、アヤ」
「これくらい、大丈夫だって」

確かに軽々とはいかないけど、ちょっとの距離歩くくらいならわけはない。
道すがら、他愛もないお喋りをし、あっと言う間に古道具屋に着いた。
俺じゃ何をどう頼んだらいいか分からない為、リコにお願いして俺は外で待つ。

「お待たせ。アヤ、喉乾かない?付き合ってもらっちゃったし、この先に果実水の美味しい露店があるから、ご馳走させて」

女の子に奢ってもらうのは気が引けたが、リコに「ね?」と可愛らしくお願いされて、俺はありがたく奢ってもらう事にした。
何の果実水にするか、リコと楽しく相談しながら歩いていると、ふと、曲がり角が入り組んだ一角で、リコが立ち止まる。

「リコ?どうしたんだ?」
「あ…うん。…気のせいかな?今、あそこの角曲がったの、イヴァンだったような」
「イヴァン?でも、イヴァンは……」

イヴァンはマダムの店にいた男。俺がキサに助けられてしばらくしてから、数人の男達と一緒に話しかけてきた時にいた、あの綺麗な男だ。
たしか、ファランの話では……

「そうよね。団を辞めて、もう帝都にはいないはずなんだけど……」
「リコ、気になるのか?何かあった?」
「気になるのはイヴァンじゃなくて、一緒に辞めちゃった、ランスの事なの」
「もしかして、ランスの事好きだった?」

俺が指摘すると、リコが恥ずかしそうに、でもコックリ頷く。
うお!マジか?!

「イヴァンなら、まだ追いかければ間に合うかもよ?追いかけよ」
「え、でも…違うかもしれないし」
「違ってたら、違ってたでいいじゃん!でも、そうなら、ランスの事聞けるかもだし」
「そう、ね…うん!追いかける!」
「わ?!リコ、ちょっと待って!」

急に決心したように走り出すリコに、俺はとっさに反応できず出遅れた。
女の子って、こう!って決めたら早いよね。完全に出遅れて、先を走ってたリコ見失っちゃった…
しかも、何かやたら入り組んでないか?ここ。
リコが曲がったであろう角を曲がり、開けた場所に出たが行き止まり。
道間違った?
慌てて引き返そうと振り返り、俺はギクリと固まった。





しおりを挟む
感想 459

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

その日君は笑った

mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。 それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。 最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。 拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。 今後ともよろしくお願い致します。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...