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第4章 忍びよる闇の策略と失われし久遠の刻編
1.自分を知る為に①
しおりを挟むラシルフから帰還(気絶してる間に)して、俺はマダムの店に顔を出した。
バルドの言葉通り、ファランには……
泣かれた。
えぇ、泣かれました。
それは、ケガをしたからとか、怖かったからではなく、自分をかばうためとはいえ俺が無茶をし、攫われてしまった事に対しての涙。自分をもっと大事にしろと、思い切り抱きしめて泣くファランに、罪悪感いっぱいになった。
でもって、キサとラーシャには、ガチで怒られた。
いや、もうね。マジでちびりそうになるくらい、こあかったです…
バルドはというと、今は城。ケンカ続行中とかではなく、何やら動いてるらしく別行動。
俺に無体を強いて、ラシルフから知らないうちに連れ帰られた時は本気で怒ったが。散々責めて、引きこもってやったら、ラシルフに手紙と贈り物をしてくれるってんで、俺が渋々折れました。
タータと最後ちゃんと言葉交わしたかったな……
あ!言っておくけど、俺は幼女趣味とか危ない思考は持ってないから!ただ、俺は女の子には特別優しく接するべしの精神に基づいてるだけだから!
そんなこんなで、
「アヤ、これ、あっちのお客さんに運んで~」
「了~解!これも、持ってこうか~?」
只今、接客中。昼間は食堂も兼ねてるマダムの店はかなり繁盛してる。夜は酒場になるが、この世界、酒は昼も夜も関係なく常飲されてるので、今も俺が運ぶトレイの上にはビールに似たエアーという酒とラクシという果実の酒が入ったカップが乗ってた。
ちなみにラクシはレモンとオレンジの中間の味で甘みは一切なく酸味と苦味が特徴の果物。酒に漬ける前のヤツ味見させてもらったけど、マジ、吐くかと思うくらいエグ酸っぱかった。酒に漬けるとそれがマイルドになるそうだから神秘である。
「お待ちどう様!エアーと、ラクシ酒ね。注文は以上?」
「つまみが欲しいから、ニゲルの串焼き貰おうかな」
「串焼きだけでいい?」
「アヤが付き合ってくれんなら、あとニ三品頼むけど?」
「俺は男だっつうの!女の子口説けよ。こんだけいんのに!」
「確かにこの店の娘は可愛いけど、アヤが一番可愛いからな~」
店の常連客の一人にからかわれ、手を伸ばしてくるのをわざとらしくはたき落としてやる。俺も相手も別段本気じゃないから仕草も言葉もふざけ半分だ。
「お~、痛い。姫はご機嫌ななめかぁ~?」
「姫じゃねっての!で?注文は?すんの?しないの?」
「ハハ!分かった分かった、するよ。あと、セオリの炒め物も追加ね」
「ったく!最初っから、ちゃんと注文しろっての」
ここの男共は、人をからかうのが本当好きだ。
注文を通しに厨房に向かう。
「アヤ」
「キサ、何?」
「城から連絡あった。戻って来い、だそうだ」
「今から?……分かった」
「用意できたら行くぞ」
「キサついてくんの?」
「一人で行かせると思うか?」
ですよね~?すいません…聞いただけです。
前科ありの俺は、行動する時は誰かと一緒が厳命されていた。
用意っても特になく、ラーシャのとこからリラ連れて来るぐらい。
「リラ。城帰るからおいで」
「キュイ、ピルルルッ」
ラーシャの部屋に行くと、リラはラーシャにかまってもらい嬉しそうにピルピル鳴いてた。
俺が呼ぶとそれ以上に嬉しそうに鳴いて、飛びついてくる。羽が生え換わり、少し大人びてきたみたいだ。
「アヤ。そろそろ魔道具買ったら?リラ、このままは可哀想よ」
「魔道具…そうだったな。でも、まだお金貯まってないし」
「殿下にねだったら?アヤが可愛らしく「お願い」って甘えれば一発でしょ?」
「ラーシャ……」
何かあからさますぎるよ。恥ずかしいな~…もう……
「使い魔にしないまま、あんたに何かあれば、リラは惑うことになるわ。これだけ、人に依存した妖鳥はもう人から離れては生きていけない。命を預かるならちゃんとしなさい」
「うん…そうだな。分かった」
魔道具。使い魔。リラのこともそろそろ本気でどうにかしないと。
「キサ、おまたせ」
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