上 下
78 / 465
第3章 ラシルフ 騒風と騒乱の風編

*オレ様皇太子様の側近は女王様?

しおりを挟む
*読んでも読まんでも大丈夫です(^◇^;)



セレスト=カーディナル。二十四歳。
クレイドル皇太子、グレインバルド=ルーク=クレイドル付き、筆頭側近近衛長官兼、護衛長官。
淡いスミレ色の髪に、ライラックブルーの瞳の青年。
美人と言える容姿と、性格から、陰で付いたアダ名は………………





セレストは、目の前にあったソレを思い切り蹴りつけた。

「いだぁーーーーーーッッ!!だ、誰だ?!何しやが…
セ、セレスト!何だよ、何で蹴るんだよ?痛いだろ」
「やかましい!痛いのは、貴様のケツ蹴った俺の足だ」

腕組みし目を眇めて睨めつけるセレストに、蹴られた男は、セレストより一回り以上は大きい体をビクビクと小さくさせた。
全身黒で統一させた、男。
イアン=フリーズ。セレストより二歳上の二十六歳。近衛副官兼護衛副官。セレストの補佐。
暗めの赤髪に、マゼンダ色の目の男として整った容姿の男前。だが、今は情けなくも目の前の人物の前で、様子を伺うようにビクついている。

「城の警備、城門、城壁、裏門。一体全体どうなってる?」
「は?何の事だ?んなの、交代制で切らさないよう…」
「城から、光の魔導が抜け出した」
「光の魔導って…殿下がお連れになったって噂のか?
え?抜け出した?城からか?」
「そうだ。しかも、二回目だ。把握は?」

腕組みしたセレストの指が、トントンと二の腕を叩いている。イライラしている仕草。

「できてない……」
「だろうな。二回とも、裏門から抜け出てる。警備はどうなってる?」
「三人配備……「させてたんだろう?」

遮るように言うセレスト。口元には薄く笑み。イアンは、ゴクリと緊張から飲み込む。

「光が抜け出した時間、三人とも私用で勝手に持ち場を離れたそうだ。これを何て言うか分かるか?」
「え~~っと……」
「職務怠慢だ。そのせいで、光は城抜け。しかも、ラシルフにどうも攫われたらしい」
「は?嘘だろっっ?!」
「それは、俺が言いたい言葉だ。事の重大性が理解できたか?」

セレストの眉間に縦じわが刻まれ、イアンは益々体が小さくなる。警備全体は、イアンの管轄だ。セレストは主に、グレインバルドについている為、イアンが全体の指揮をとる。

「持ち場を離れた三人は、俺から注意しておいた。俺はこれから、殿下とラシルフに外交という名の殴り込みだ。暫く、帰れない」

三人がどんな注意を受けたのか、イアンは聞くのも怖かったが、それより、続いた言葉の方に焦った。

「帰れないって!休日は?次の休日、約束してただろ?!」
「なしだな。それどころじゃない」
「セレスト~、そりゃ、ないだろう~」
「うるさい。恨むんなら、自分の職務怠慢を恨め」

フンと鼻であしらわれ、イアンはガックリ肩を落とす。

「セレストはいいのか?休日、俺、楽しみにしてて」
「別に。休日がなくなるのは辛いが、別の日に取り直せばいいだけだ」
「じゃあ、帰ったら約束……「するのは、お前次第だな」

ツンとしたまま返すセレストに、イアンはザーッと青くなる。約束を反故にする余地があると言われたも同然だからだ。
未だ腕組みしたままのセレストの腰を、イアンは慌てて抱き寄せた。拒まれはしないが、腕組みは解かれない。

「どうしたらいい?どうすれば、約束し直してくれるんだ?」

デカい体の男前が、情けなくも必死に言い募る。

「俺が殿下と帰るまで、しっかり警備するんだな。入城はもちろんのこと、退城も。部下の不始末は上官の俺の責任だ。だからそれはとる。当然だからな。が、副官のお前だけ何も無しじゃ俺の腹の虫が治らん!俺がいない間、しっかり反省しろ!」

腕組みが解かれ、イアンの首にスルリと腕が回される。
顔には、ふんわりと見るものをうっとりさせる、綺麗で妖艶とも取れる美しい微笑み。
細い腰を抱き寄せようとしたイアンの動きは、耳に吹き込まれたセレストの言葉に固まった。

「俺が帰るまでにまた何かしら不備があれば、差し当たって、休日の約束は無しだな。不備の大きさによっては、この先一生の約束は無し、お前との付き合いも考えるかもしれん。分かったら、血反吐吐く勢いでしっかり働け!」

固まったイアンの腕から抜け出し、セレストはその場から立ち去った。
残されたのは、白く灰と化したイアンのみであった。

合掌ーーーーーーーー。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...