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第2章 水と炎の激愛、揺れる光の惑い編
16.能力(ちから)の根源の理解と封印の解放①
しおりを挟む『物騒な物を向けないでほしいものだな。此方は其方の愛し子であろう?』
アヤの姿で、面白そうに言うソレに、俺は盛大に顔をしかめる。
「言分に間違いはねぇが、やめろ。アヤの体を使うな!お前は何者だ?」
『ふむ…まず、一つ目。我は此方の封印にすぎぬ。故に、個の存在にあらぬ為、今は此方の体から出る事は叶わぬ。此方の体を使う以外、我は話す事もできぬ』
話し口調はまるで年嵩の者のようだ。威厳もあり、人の上に立つ事に慣れた者の口調。
『二つ目。我は封印であり、女神と立場を同じくする者。とだけ言っておこうか』
「女神と立場を同じくするだと?神だとでも言うのか?馬鹿な!!神は人の理に不可侵の筈だ!アヤの、一個人の体に入り、封印の役を果たすなど聞いた事もねぇ…」
『さすがに、女神の魔導なだけはある。よく、知っておるわ。正確には、我は女神の眷属だ。故に人の世に干渉は可能』
眷属。女神の血に連なる者。または、それに順ずる者。
神であり神でない。ならば、個人の封印に使われる事も可能か……
だが……
「何故、アヤの体に女神の封印なんぞが施されてる?確かに、アヤは時渡り。この大陸、いや、この世界の者ではおそらくない。女神とアヤに何の接点が……」
『ふむ…幾重にも、業と鎖、封印に縛られし者だ。が、どうやら、もともとこの世界に理を持つ者だったようだのう』
「もともとこの世界の人間だったってのか?一体、どういう事だ……」
『此方の理に関しては、我は知らぬ。だが、何やら多岐にわたり、しがらみを持つ者のようだ』
しばらく無言で見つめ、俺は一旦剣を鞘に納める。
「封印、と言ったな。お前は一体、アヤの何を封印していた?」
わざと過去形を使った。出てきたという事は、封印とやらは解かれているのだろう。
俺の問いに、ソレはニッコリ微笑む。
くそ!体はあくまでアヤだ。惚れた相手の、ましてや滅多と見られない微笑なんぞ、こんな場合に見たくない。
クスクス笑うソレに、俺の苛立ちはどんどん募る。
それ、やめろ!
こいつ、知っててやってやがる!
ギリギリ歯を噛みしめる俺に、口元に笑みを浮かべたまま、ソレは口を開いた。
『此度、当代の水は賢くもあり、よほど此方に惚れ込んでおるようだの。初代譲りの激情型か』
「俺を誰かと比べるな!俺は俺だ!」
『惚れたは否定せぬか……良いよ。其方の此方に対しての思いの波動は心地よい。我に答えられる事ならば、答えてやろう』
何が楽しいのか、ソレはクックッ笑いながら、フワリと宙に浮き、あたかもイスでもあるかのように空に座った。
何度も言うが、体、見た目はアヤそのものだ。あまり、人外な事はするなと怒鳴りたい気分だ。
ゆっくりと息を吐き、何とか気持ちを鎮めた。
話の前に、
「名前はあるのか?女神の眷属」
『我の名か?そうさな……レーテと呼ぶが良い。生憎、真名は教えられぬて、通り名だがな』
別に真名を知りたいとは思わないので、俺は頷いた。
「グレインバルドだ。クレイドルの皇太子で、水の魔導」
『女神に最も近き者。律儀な事よ、神に名乗るは恐ろしゅうはないか?』
「恐い?何とも思わねぇな。目の前で大切なものを失う方が、よっぽど恐ぇよ」
『経験したかのようだの』
「さてな………」
多くは語らず、はぐらかした俺に、レーテは特にそれ以上踏み込むでもなく、さっさと話題を変える。
『まぁ、良いよ。質問の答えだか、我が此方の封印していたは、此方の能力じゃ』
「アヤの能力?」
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