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第1章 水と光、交錯の相愛編

1.優しさは時に辛くなる?

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領主の屋敷に着くと、俺たちはすぐに宴の舞の準備にかかる。
俺とファラン、リコはあらかじめ茎から摘み取った花を、ラーシャが舞に使う肩からかけるショールのような布に仕込んでいっていた。両肩にかけて使う布は片方1メートルくらいあるが、オーガンジーのように薄く透け感のある布で、表から見えない折り目がありその間に花を入れていく仕組みだった。

「動き出したら、ここから花が落ちていくのよ。で、花を舞い上げながら踊るの」
「あたしたちは何回も見てるけど、それでもラーシャの舞は綺麗。憧れるわ」

ファランもリコもうっとりしながら、ラーシャの舞がいかに美しいか教えてくれる。

「あの、今更だけど…ラーシャを説得してくれてありがとう。あたしがラーシャを怒らせたのに」
「いや、別に、大丈夫…だよ」

申し訳なさそうに言うリコに、俺はサラッと返す。どうやって説得したのか説明できない以上、これ以上深く会話を続ける事ができない。

「おい、そろそろだぞ?準備できたか?」
「あ、はーい。ちょっと待ってね。うん、よし!できた。お待たせ」

キサの声かけに、ファランが最後の花をつめ終え、それを持ってラーシャのところへ持って行く為、リコと供に出ていった。

「大丈夫か?」
「平気だ。多分、俺の能力の事は気づいてないと思う。知ってるのは、キサとマダムとラーシャだけ」
「少し、いいか?」

舞が始まるまでまだちょっとある。改まって言うキサに、俺も神妙に頷いた。

「マダムはあぁ言ったが…アヤはどうしたい?どうしようと思ってる?」

マダムが言った事とは、今の俺の現状・能力の問題を
とりあえず先送りにするという話だろう。
帝都に着いてからという事で話は着いたが、実際、帝都に着くまで何も考えないのはどうなのかと、俺自身感じていた為、キサの方から話を振ってくれたのは助かる。

「正直、どうするか分かんないんだよな。勿論、魔導を知らないのは不便だし困る事が身に染みてわかったから、俺自身の魔導は調べるよ。この能力に関しても、調べられるだけ、調べる……」

能力自体、この世界でも少ないだけでない訳じゃない。それでも、俺のこの能力は、明らかに異質過ぎるらしい。
魔導を知らない俺が、無詠唱とはいえ魔導を操る。
簡単に言えば、無から突然有を作るようなもの。能力の理を完全に捻じ曲げている。
魔法や魔導とは無縁の世界で生きていた俺にも、これがおかしな事だという事は理解できた。
人は異質なものに出会うと、嬉々とするか恐怖するか俺は明らか、後者だった。

「帝都に行けば、調べられるとこや、詳しい人が少なくとも今よりはあるし居るだろう。あと、自分の身の振り方も考えるよ」

パタタッと羽音がし、俺の肩にリラがのる。

「リラの事も考えなきゃな?」
「身の振り方?団に居ればいいだろう?」

リラを優しく撫でてやってると、キサが訝し気に問うてきた。

「無理だろう。団にいれば、俺の能力の事はいずれバレる」
「説明すりゃあいいだろう」
「だから、無理だって!!俺自身、理解もしてないできないもんをどうやって説明すんだよ?!簡単に言うな!!」

キサの一言に、俺はつい苛立ち気づけば吐き捨てるように怒鳴り返していた。

最低だ、俺………

何も分からない状況というのが、こんなにも怖いなんて知らなかった。
ゲームと現実は違う。

「ごめん…ちょっと、外行って頭、冷やしてくる」
「アヤ、一緒に……」
「キサ、悪いけど一人にしてほしい…大丈夫だ。頭、冷えたら戻るから」

心配してついてこようとするキサをやんわり断り、俺はリラを肩に乗せたまま、頭を冷やし冷静ななる為、外に出て行く。

優しさが時には辛くなると、俺はこの時ほど感じた事はなかった。




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