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序章 突然異世界トリップ迷惑編
19.能力覚醒。肌に咲き染めし色の花②
しおりを挟む「キサ、何の用?そっちは、新入りの子でしょ?」
俺は、キサと一緒にラーシャのテントに来ていた。先程判明したばかりの能力、俺の彩色の能力を使い、ラーシャを説得する為に。
「なぁ~に?装飾品が用意できたの?それとも、それも無理で、団のまとめ役であるあんたが説得しに来たとでも?」
ラーシャは小馬鹿にしたように、少し蓮っ葉な物言いをしたが、俺にはやりきれない気持ちに少し無理してるようにしか見えない。
「ラーシャ。装飾品は無理だ。ここから前の街までは2日かかる。往復で4日だ。どうがんばっても、サンカスでの依頼日に間に合わん」
「でしょうね。で?」
「装飾品の代わりを準備した」
「代わり?あれに代わるものが準備できたって言うの?」
キサの言葉に、ラーシャは少し苛立った様子だ。それはそうだろう。予定していたものが、ミスで駄目になった、だから、代わりのもので我慢しろでは、俺が彼女と同じ立場だったとしても納得できない。
が、今回はそれを納得してもらわなきゃならないし、納得させなきゃならない。
キサが俺を見て小さく頷く。俺もそれに返して、一歩前に。ラーシャの前に立つ。
「この子?この子が、何だっていうワケ?」
「彩色師だ」
「は?」
「アヤは彩色師。その能力を使って、装飾品代わりに肌に彩色を施す」
キサが言い切ると、黙って聞いていたラーシャの肩がフルフルしだした。
「ふざけるんじゃないわよ!!『ーーーーーー!!』」
「アヤ!」
キサから体を後ろに引かれ、俺は抱きとめられるようにされた。キサの時以上の熱を感じた。キサの炎が赤とオレンジだったのに対して、ラーシャは真紅。熱の比は比較にならない。
本気で害そうとしたわけではないらしく、ラーシャはすぐにその炎を消したが、かなり怒っているのは明白だ。
「ラーシャ。腹が立ったからって、すぐに人や物に当たるな。炎を出すのはやり過ぎだ」
「腹を立てるな?やり過ぎ?どう考えても、あたしを怒らせるような事言ってんのは、あんた達でしょ?」
キサがラーシャの炎から庇ってくれたらしい。彼女が本気で俺を黒コゲにしようとしたとは思わないが、どうやら感情の起伏で、炎の質が変わるようだ。
やれやれ乱暴なお姫様だ。
「彩色師。あたしだって知ってるわ。帝都にも何人かいるもの。だけど、彩色は最低だし、魔導の質が悪すぎて痛いしで評判なんか地を這ってるわ!キサ、あんたあたしに痛い目見ろって言ってんの?!」
「ラーシャ。信じられないかもしれんが、アヤの彩色は無痛だ。マダムもそれは身をもって実証してる」
「マダムが……?」
マダムの名が出ると、怒る狂っていたラーシャが、疑うように、だが、先程とは打って変わって落ち着いてきた。
「マダムは、知ってるのね?」
「知ってる。俺たちが、ここに行ってくるって言った時も、ラーシャがどうしても嫌だって言うなら、仕方ないし、自分は判断はラーシャに任せるって!」
我慢できずに、俺は思わず口を挟んでいた。
「ごめん。俺は部外者みたいなもんだけど、女の子が困ってるなら助けてあげたいし、だから……」
「話したの?」
俺にではなく、キサに向けた言葉。キサは軽く肩をすくめた。
「必要だったからな」
「………おしゃべり、サイテー………」
ラーシャの顔が、泣きそうに歪んだ。最初の頃の怒りは、もう彼女からは消え失せていた。
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