458 / 465
外伝2 触れる指先ーエリオー
*好きだから受け入れられない事もある⑦
しおりを挟む触れ………かけた唇を避けるように顔を背けた。
「駄目ッ!駄、目です」
ラキティスの胸元に手をやり、体を離そうと突っ張る。
「駄目、とは?」
「だ、だっ、て……こ、んなの、、駄目に決まって…」
「だから、何がだ?」
「ッッ!!」
至近距離から顔を覗き込まれ、息を呑む。
分かってやってるんじゃないなら困りものだが、分かってやってるんなら意地が悪い!
それくらい、城の侍女や侍従たちが騒ぐくらい、ラキティスはいい男だ。それは僕も認める。
こんな距離から見つめられたら……
「違う……だって、、僕、は」
「……………………」
しばらく無言の後、ラキティスが静かに嘆息した。
溜め息ばっかり!僕が悪い……ところも多いにあるが、これはこれでかなり堪える。
「しょ……じゃ、ない……………………か」
「?」
片眉上げて見遣ってくるラキティスに、キッと涙目で睨みながら口を開いた。
「しょうがないじゃないかッ!貴方と僕じゃ、駄目なんだから!」
叫んだらもう駄目だった。
うわ、もう無理と感じた瞬間、涙が溢れ出した。
体は薬のせいで全く言う事聞かないし、ラキティスに恥ずかしくて情けないところばっかり見られるしで、色々耐えられなくなった。
「だから、何が駄目なんだって聞いてるだろ?」
「もう!何で分かんないのさ⁉︎僕みたいな汚れたのに触れたら、貴方まで……」
「汚れた?お前がか??」
「そ、だよ!貴方は……キラキラ綺麗な…人、、、で」
叫んで興奮したら体の奥で、また薬の効果が再燃する。もう、いっその事、僕1人放っておいて欲しい。
ハァハァと息が上がり始めた。
手首を掴まれているだけで、体がビリビリ痺れだす。
「前にも言ったが、俺はお前が言うほどお綺麗な人間じゃない」
「そ、な事……な」
肩がヒクヒク戦慄きだし、掴まれた手を振りほどこうともがくがビクともしない。
捩り立てたせいで、手首を掴むラキティスの手が肌に擦れ、背中から腰に一気に快感が走った。
涙が浮かぶ目を見開き、顎が上向き体が仰け反る。
「ぃ、うっッ!!」
ヒクンと震える体から一気に力が抜けた。
じんわりと足の間に温みが広がり、顔がクシャリと歪み、目の前がぼんやり見えなくなる。
ヒクと喉が鳴るのと同時に涙が止めどなく溢れ出した。
最低の最悪だ。
たったこれっぽっちの事で……
「離して……下さ……もう、やだ」
「意地を張るからだろ?」
「意地、、なんか……」
いやいやをするように弱く首を振り、離れかけた体が力強く引っ張られ抱き竦められた。
慌てて腕を拒んで体を離す。
「だ、、め……ッッ、!」
「そればっかりだな?俺に触れられんのは嫌って事か?」
「違ッッ、、そ、じゃなく、て」
分かって欲しいのに、分かってくれない。
伝わらないもどかしさに、苛立ちと悲しさが募り、頭の中も心もぐちゃぐちゃだ。
「違うんなら、何で拒む?俺がお綺麗な人間だから何とか言う理由は聞き飽きたぞ?」
「………僕、は……汚い」
「……………………」
口にした途端、ラキティスが目を瞠り、若干不愉快そうに顔を顰める。
こんな後ろ向きな発言、聞き苦しいからだろう。
だが、事実だ。
自分がのし上がるため、散々周りや宰相様の側の貴族たちを利用してきた。
それは、この身を使って。
「貴方に触れる……触れてもらうには……この、身は…あまりに……………………汚らわしい」
言うだけ言った。
自分自身、自ら言った言葉に、あまりの重苦しさに耐えきれず項垂れる。
やっぱり、、、違う。
僕はなれない。そちら側には行けない。
悔恨と、悲哀がせめぎ合う。
過去の自分が心底呪わしい。
どうしてもっと……………………
ポツリ、ポツリと雫が落ち、手の甲を濡らす。
自分がしてきた事の報いだ。
泣く資格も権利もない。
到底、受け入れられない。受けるわけにもいかない。
それは、、好きだから余計に……………………
ハァ~ッ、と、頭上に溜め息が落とされた。
ビクッと小さく肩が震え、静かに目を閉じた。
これで、終わる。お終いだ。
ラキティスは僕を見限る。悲しいけど、それで………
「お前は阿呆か?何度、言ったらその頭に俺の言葉は入るんだ?」
「な、、っ⁉︎えっ、、⁈」
呆れ返った辛辣な声音に、顔を上げた瞬間、先ほどより強く且つ強引に抱き寄せられ、顔同士の距離がなくなった。
ありえない距離で重なる視線。
ラキティスの薄茶色の瞳が妖しく光る。
目を見開く僕とラキティスの重なる唇が熱に包まれ溶けていった……………………ーーーーーーーーーーー
0
お気に入りに追加
2,222
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
欲情貞操教育 〇歳から始める非合意近親生交尾
オロテンH太郎
BL
春になったといっても夜は少し肌寒く、家に帰るとほんのり温かく感じた。
あんな態度をとってしまっていたから素直になれなくて一度も伝えられてないけれど、本当の家族みたいに思ってるって父さんに伝えたい。
幼い頃、叔父に引き取られた樹は、卒業をきっかけに叔父の本性を目の当たりにする……
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる