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外伝2 触れる指先ーエリオー

*好きだから受け入れられない事もある⑦

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触れ………かけた唇を避けるように顔を背けた。

「駄目ッ!駄、目です」

ラキティスの胸元に手をやり、体を離そうと突っ張る。

「駄目、とは?」
「だ、だっ、て……こ、んなの、、駄目に決まって…」
「だから、何がだ?」
「ッッ!!」

至近距離から顔を覗き込まれ、息を呑む。
分かってやってるんじゃないなら困りものだが、分かってやってるんなら意地が悪い!
それくらい、城の侍女や侍従たちが騒ぐくらい、ラキティスはいい男だ。それは僕も認める。
こんな距離から見つめられたら……

「違う……だって、、僕、は」
「……………………」

しばらく無言の後、ラキティスが静かに嘆息した。
溜め息ばっかり!僕が悪い……ところも多いにあるが、これはこれでかなり堪える。

「しょ……じゃ、ない……………………か」
「?」

片眉上げて見遣ってくるラキティスに、キッと涙目で睨みながら口を開いた。

「しょうがないじゃないかッ!貴方と僕じゃ、駄目なんだから!」

叫んだらもう駄目だった。
うわ、もう無理と感じた瞬間、涙が溢れ出した。
体は薬のせいで全く言う事聞かないし、ラキティスに恥ずかしくて情けないところばっかり見られるしで、色々耐えられなくなった。

「だから、何が駄目なんだって聞いてるだろ?」
「もう!何で分かんないのさ⁉︎僕みたいなけがれたのに触れたら、貴方まで……」
「汚れた?お前がか??」
「そ、だよ!貴方は……キラキラ綺麗な…人、、、で」

叫んで興奮したら体の奥で、また薬の効果が再燃する。もう、いっその事、僕1人放っておいて欲しい。
ハァハァと息が上がり始めた。
手首を掴まれているだけで、体がビリビリ痺れだす。

「前にも言ったが、俺はお前が言うほどお綺麗な人間じゃない」
「そ、な事……な」

肩がヒクヒク戦慄きだし、掴まれた手を振りほどこうともがくがビクともしない。
捩り立てたせいで、手首を掴むラキティスの手が肌に擦れ、背中から腰に一気に快感が走った。
涙が浮かぶ目を見開き、顎が上向き体が仰け反る。

「ぃ、うっッ!!」

ヒクンと震える体から一気に力が抜けた。
じんわりと足の間にぬるみが広がり、顔がクシャリと歪み、目の前がぼんやり見えなくなる。
ヒクと喉が鳴るのと同時に涙が止めどなく溢れ出した。
最低の最悪だ。
たったこれっぽっちの事で……

「離して……下さ……もう、やだ」
「意地を張るからだろ?」
「意地、、なんか……」

いやいやをするように弱く首を振り、離れかけた体が力強く引っ張られ抱き竦められた。
慌てて腕を拒んで体を離す。

「だ、、め……ッッ、!」
「そればっかりだな?俺に触れられんのは嫌って事か?」
「違ッッ、、そ、じゃなく、て」

分かって欲しいのに、分かってくれない。
伝わらないもどかしさに、苛立ちと悲しさが募り、頭の中も心もぐちゃぐちゃだ。

「違うんなら、何で拒む?俺がお綺麗な人間だから何とか言う理由は聞き飽きたぞ?」
「………僕、は……汚い」
「……………………」

口にした途端、ラキティスが目を瞠り、若干不愉快そうに顔をしかめる。
こんな後ろ向きな発言、聞き苦しいからだろう。
だが、事実だ。
自分がのし上がるため、散々周りや宰相様の側の貴族たちを利用してきた。
それは、この身を使って。

「貴方に触れる……触れてもらうには……この、身は…あまりに……………………けがらわしい」

言うだけ言った。
自分自身、自ら言った言葉に、あまりの重苦しさに耐えきれず項垂れる。
やっぱり、、、違う。
僕はなれない。には行けない。
悔恨かいこんと、悲哀がせめぎ合う。
過去の自分が心底呪わしい。
どうしてもっと……………………
ポツリ、ポツリと雫が落ち、手の甲を濡らす。
自分がしてきた事のむくいだ。
泣く資格も権利もない。
到底、受け入れられない。受けるわけにもいかない。
それは、、好きだから余計に……………………
ハァ~ッ、と、頭上に溜め息が落とされた。
ビクッと小さく肩が震え、静かに目を閉じた。
これで、終わる。お終いだ。
ラキティスは僕を見限る。悲しいけど、それで………

「お前は阿呆あほうか?何度、言ったらその頭に俺の言葉は入るんだ?」
「な、、っ⁉︎えっ、、⁈」

呆れ返った辛辣しんらつな声音に、顔を上げた瞬間、先ほどより強く且つ強引に抱き寄せられ、顔同士の距離がなくなった。
ありえない距離で重なる視線。
ラキティスの薄茶色の瞳が妖しく光る。
目を見開く僕とラキティスの重なる唇が熱に包まれ溶けていった……………………ーーーーーーーーーーー








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