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外伝2 触れる指先ーエリオー

*好きだから受け入れられない事もある④

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フェイスの口から出た言葉は衝撃的なものだった。
まるで、それじゃあ……

「今更、何言ってんの?エリオを欲しいって言ったのはそっちでしょ?」
「だがッッ……!」
「うるさいなぁ!!僕はこいつが気に喰わないの!どうなろうと、どうしようと僕の勝手でしょ⁈酷い事しない?馬ッ鹿じゃないの!するに決まってるでしょ⁈」
「なっ!?」

唖然とするフェイスに、クリスティアンが馬鹿にしきったようにクスクス笑う。
こいつの性格の悪さは知ってたが、あまりの悪辣あくらつさに、おそらく利用されたであろうフェイスが逆に気の毒に思えた。

「エ……侍従どの。すまない!このような事をしでかし、謝れた義理ではないが……俺が間違っていた!」

いや、ほんと……謝られてもどうしようもない。
しかも、体はいかがわしい薬使われてかなりマズいし…
クリスティアンの猫被りは完璧だ。フェイスのような直情型な青年なら騙されるのは仕方ない。
だからと言って、巻き込まれたくはないが……

「あっッ、、くっ!!」

身動みじろいだ瞬間、服に擦れた胸に疼きが走り、堪えるような声が思わず漏れる。

「体辛そうだねぇ?ちょうどいいからさ、抱いてもらったら?」
「ッッ!!」
「なっ⁈な、にを⁈」

あまりにあまりな、クリスティアンの言葉に僕は絶句。フェイスは動揺激しく、近衛騎士らしからず狼狽まくる。

「汚れきった体なんだ。今更、誰に抱かれたって構わないだろ?あ!ラキティス様は駄目だからぁ。彼の方に、お前なんか相応しくないし?むしろ、そぉんな、汚ったない体で触れないで欲しいし」
「良いのは見た目のみか……性根が腐りきってる」
「は⁉︎何、それ!僕に言ってんの⁈」

眉を顰め呟いたフェイスに、クリスティアンが顔を怒りで真っ赤に染めた。
言葉には至極同感だが、今、この状況で刺激するのはよろしくない。
体が万全でも、敵側の領域で迂闊うかつな事をするのは良くないって言うのに……

「な、んだよ……なんだよ、、なんだよなんだよなんだよ!!なんだよ、それ!!じゃあ、何⁈僕はそいつより汚いって言いたいわけ⁈僕がそいつより、劣ってるって言いたいのかよーーーーーーーーッッ!!!!!」

殺気と怨嗟えんさに瞳をギラつかせ、クリスティアンが喚く。
駄目だ、。理性をなくした相手、それも分別が備わってない相手ほど厄介なものはない。

「はは!ははははっ!!あっ、そう?じゃ、もういいや!あんた要らない!!エリオを欲しいって言うから、利用しようと思って、あっさり騙されたから使えるかと思ったけど!結局、肝心なとこで動けないんだから!騎士精神ってやつ?馬ッッ鹿みたい!!そんな汚れきった奴に……く、やしい!悔しいッッ!!ラキティス様だって…なッんで、お前なんかにッ………!」

笑い出し、喚いたかと思ったクリスティアンの顔が泣き顔に変わり、悔しそうに歪む。
フッと笑みを浮かべたクリスティアンが、ニヤリと口元をいやらしく歪めた。

「ラキティス様の前に出れないくらい壊せばいいんだよ。外にね、待機させてあるんだ。みんな、屈強くっきょうな男ばっかり…薬も効いてるし。大丈夫。狂って、狂って狂っておかしくなって、ラキティス様も目を背けたくなるくらい!お前なんかッッ滅茶苦茶になればいいんだよ!」

男たちを呼ぶ為か、クリスティアンが呼び鈴を振る。
フェイスが僕を守ろうとするかのように目の前に立ち塞がる。
部屋の扉が開く。
待機していたと思しき男が1人立っていた。

「何してるの?サッサと入ってきて!そいつ、滅茶苦茶にしてよ!!」

突っ立ったままの男に、クリスティアンが顔を顰めて喚く。

「ちょっと…!」
「あ、、がっ、、、ぐっ!」

男の目がグルンと白目を剥き、そのまま前倒しに倒れ込んだ。
あまりの事に唖然となる僕たちの前に、男の背後から見知った姿が現された。
まさか、とか、なんでという思いがぐるぐる駆け巡り言葉が出てこない。
見開いた僕の目に映る、薄茶の瞳が光を弾いた。
自分に都合の良い夢を見ているようで、言葉が出てこない。
震える唇と体は果たして何故か?
瞬きすら出来ない僕を見つめたまま、がゆっくり歩み寄ってくる。
近くまで来た瞬間、フェイスが弾かれたように僕から離れた。
見上げる僕に、フゥッと呆れたような溜め息が落とされた。緊張の糸が解けたように、僕もゆっくり息を吐き、静かに目を閉じる。

「何をなさってるんですか…貴方は。ラキティス、様」








*本日、2回目の更新!ラブ(の前に、エリオとキサのやりとり有り!)まで、あともうちょいです!!
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