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外伝1 星の煌めきを編み込みしーアレイスターー

*腕に抱かれし卵が見たものは……②

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閉じていた目を開ける。

暗い、、どこまでも続く闇。

『こ、こは………?』

たった一人、ただ暗く何もない場所に、アレイスターは立っていた。
誰もいない………
ひとりでに自嘲が漏れた。

『一人きり……ですか。結局、誰も残らないのですね』

自分で望み、覚悟した事とはいえ、やはり………

ボッと光が灯り、女性が現れた。
目を見開き、そっと伏せる。

「私を、責めていますか?結局、失ってしまう私を……貴女は、許せないでしょうね」

何も言わず、微笑んだ女性が消える。
その笑みに問いかける言葉が出る前に、また光が灯り、今度はラァムの実。青白く光り、その場に静かに浮く。
これだけは、失いたくない。
他は、しようがない。失われる事は、自分の罪で罰だ。
でも……これだけは!!
慌てて、駆け寄るアレイスターの手にラァムの実が収まる。
ホッとすると同時に、目の前で実がスーッと透明に変わっていく。

『い、や……ッ!!』

ピシ、ピキッ、と、ヒビ割れが生じた。

『ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』

言葉にならない言葉が口から放たれ、目の前が真っ白な閃光に包まれた。

            *
            *
            *
            *
            *

            *
            *
            *
            *
            *

声もなく飛び起き、脇目も振らずに飛び出しかけた体がガクリと傾ぐ。

「ぁっ……ッッ!」
「危ないッ!!」

ガッと、力強く体に回った腕に抱き込まれた。
体が安定し、思わずほぅっと息を吐く。閉じていた目を開け見上げると、呆れたような渋面が目に入る。

「ヨ、シュア……」
「お気をつけ下さい…危うく、寝台より落ちるところです」
「ぁ………私、は…こ、こ」
「お倒れになったのです。ここはご寝所にて、ご安心を」

スッと離れかけた腕を、思わず掴む。
ピクッと反応したそれに、慌てて離した。

「ごめんなさい……」

無意識に引き留めるような真似をしてしまった。
拒まれて、手を離す覚悟をしたクセに……諦めが悪い。
自嘲し、視線を逸らす。
見つめていたい。けれど、見るのが怖い。
苦しくて、辛くて……思わず熱くなっていく瞳を、アレイスターは必死に堪える。
ふと枕元に置かれた布に包まれたが目に入り、目を瞠り思わず飛びつく。
ラァムの実。
状態はあの時のまま。透明なまま。ただ、先程見た光景のようなヒビ割れはない。
ホッとして、抱き締める。

「実は、休息状態との事です」
「休息……ですか」

眠っているだけ。どうにかなった訳ではないらしく、安堵に溜め息をつく。

「私の、せいですね……ごめんね」
「陛下」

そっと頬を寄せ呟くアレイスターを、ヨシュアが呼ぶ。
ビクリと体が戦慄わななく。
逃げかけた体を逃がさないとでも言うように、腕を掴まれ引き戻された。
ビリっと走った痛みに、小さく呻くが構わず正面に向かされる。
あまりにらしからず、常より乱暴な仕草に眉を潜めるが、顔を見た瞬間、アレイスターは固まる。
呆れと怒りに、ヨシュアの表情は険しく堅い。

「ヨ、シュア……手、痛いです…」
「何故……」
「え?」
「何故、手首がこのように傷だらけなのです?刃の痕……侍医の話では、自傷とは思えない浅いもの。命を断つためのものではないとはいえ、何故、御尊体を傷つけられた⁈」

激昂したような声ではなく、静かに怒りを押し殺したかのような声。それだけに、ヨシュアの怒りが知れ、アレイスターは小さく震える。
戦慄く唇から言葉を発せず、堪えていた瞳から涙が溢れ出した。

「ご、め……な、さい」

ヒクと喉が鳴ると、抑えきれずに次々流れ落ちた。
ハァッと、溜め息が聞こえ、ビクッと体が跳ねる。

「何をなさっているんですか……あなたは」
「………だって」

拗ねて口を尖らせるアレイスターに、ヨシュアが更に溜め息をつく。
他の臣下や、弟であるグレインバルドにすら、こんな姿は見せた事がない。

「無理を言って抱いてもらったあの一度きり……実がなかなか育たなくて……」
「それは…」
「分かっています。責めている訳ではありません……それでもいいと言ったのは私だから。でも、どうしても…あなたとの繋がりが欲しくて。なんとか、実が育たないかと思って…………」
「何をしたのですか?」
「……………………怒りませんか?」
「……………………」

上目に伺うと、しばらく呆れたように無言のあと、ヨシュアが渋面のまま、重苦しく嘆息した。
小さく首を竦めたまま、ポソポソと白状した。

「魔導の源足り得る血を……私の血を与えていました。いろいろ試して……これが、一番効果があったので」
「あなたはッッ………!」
「怒らないッて……!」
「言っておりません!!なんて危険な真似をなさるのです⁈このところ、顔色が悪く、肌が紙のように白かったのはその為ですか⁈」

眉を吊り上げるヨシュアに、アレイスターが泣きそうな顔を向ける。
それを見たヨシュアが、グッと押し黙り、何度目か分からない溜め息をつく。

「とにかく!金輪際、それはなさらないで下さい!」
「……………………でも、実が」
「実は、一方的にあなたから血を与えられ育ちはしています。ただ、与えられるべき愛情が一つきりなので、これだけでは生まれる事ができない。実自身が命を繋ぐため、休息に入ったのだとの見立てです」

愛情不足。
突きつけられた現実に、アレイスターが目を伏せて俯く。
言っては駄目だ。
言うべきじゃない。
そう思いつつ、アレイスターの口が開く。

「この子が……生まれる事は、ないんですね」








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