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第三部3章 思惑の全能神と真白き光の眠り姫 編
9.終焉の秤⑨
しおりを挟む真っ赤な真紅。
燃えている。目の前、周りが全部。
圧倒されるほどの炎と熱。
「あっつ……ッ!」
ーふん?これが今の光か?ブサじゃあないが、初代とまったく違うなー
炎は見えるが、声は相変わらず声のみ。
「今度は、炎?」
ーご名答。選ぶは力だー
「力?」
またざっくりとしている。何をもって力とするのか?
意味が分からない。
「力の何を……」
ー全てを守りし強大な力を取るか?守れる範囲の小さき力を取るか?ー
最初が道、次が記憶……そして、今が力。だいぶ、頭がはっきりしてきた。
おそらく、これは……
「俺が…背負う理を選ぶんだな…」
ー正解だ。頭は悪くないようだなー
小さく笑う気配。
「選び終わったら、俺はどうなるんだ?」
ーそれは答えられんな。俺が答えるわけにもいかんー
「だったら、なんで助けてくれるんだ?」
ーうん?ー
ここまで、全部。俺がちゃんと選ぶようどの魔導も……
俺の問いに、声の主は、あ~とかう~とか、どこか言いにくそうに唸る。
やがて、ハァと溜め息が聞こえた。
ー俺は甘やかしすぎだって思ったんだがな…まぁ、なんだ?俺、一人手を貸さんのも底意地悪いし。お前がブサなら、知るかって思ったんだが…ブサじゃねぇしよ。ブサじゃねぇんだよー
「?」
意味分からん。やたらと、ブサ(=不細工)連発するけど……
ーとにかく!選べ!とりあえず何でもいいから選べ!ー
何でも…よくはないと思うが。
半ばヤケくそみたいに言われ、困惑する俺に、声はハァ~と深く溜め息をつく。
炎の色が柔らかく変わる。
熱さが和らいだ。
ー何でこんなのに決まったんだかなぁ…全能神のクソが!ルー以外、ほんとどうでもいいんだからよー
何やらぶつくさ言い、伸びた炎が俺の頬に迫る。
咄嗟に身動いだら、クッと小さく笑われた。
ー心配すんな。だれが傷つけるかよ。加護をやるだけだー
「加、護?」
ーあぁ。先の二人からも貰ってるはずだー
フワリと炎の端に両手の甲を撫でられる。
視線をやると、それぞれ両手の甲に、小さな紋様が浮かんでいた。
「これ……」
ー終焉の秤の徴だ。もっとも、お前の場合は俺たちがズルさせてっけどなー
声の主がどこか楽しそうに笑い、炎が俺の左頬を撫でた。
ポッと一瞬熱くなり、消える。
左目尻の下に紋様が浮かんだのが感じられた。
「俺…まだ、選んでねぇけど?」
ー構わねぇよ。どうせ、理、無視しまくりの審判だ。今更、だろ?ー
ハハッと豪快に笑い、炎が呼応して逆巻く。
「力は……どっちも必要だ。選べないし、選びたくない」
ゆっくり目を閉じ、答えた。
ごうっと、渦を巻いた炎が俺を包み込む。
けど、大丈夫。もう、恐怖は感じない。炎は、俺を傷つけない。
スッと顎を持ち上げられる感触がし、閉じていた目を開ける。
キサに面差しが似た美丈夫が目の前にいる。
ー正解だ。力はあり過ぎてもなさ過ぎても駄目だー
唇の端を上げ、不遜に笑む。
ーあ!あと……ー
「?」
訝しむ俺に、炎の美丈夫がニッとイタズラっぽく笑うと、
ー姿見せんの違反なんだ。他には黙ってろよ?ー
俺の唇に人差し指が当てられる。
答える代わりに、炎が目の前を覆った。
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