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第三部3章 思惑の全能神と真白き光の眠り姫 編
9.終焉の秤⑥
しおりを挟む俺を取り巻くように複雑に絡む光の帯が逆巻く。
ものすごい魔導の奔流に、倒れ込まないよう踏ん張るしかない。
「全能神!!何の真似だ⁉︎アヤに何する気だ!!」
「これこれ。何も取って食おうというわけではないぞ。何度も言うが、終焉の秤にかけねば、そろそろ箱庭が保たぬでな」
「それはてめぇらの勝手な言い分だろうがッ!!秤だろうが何だろうが、アヤを巻き込むな!!」
「決められし定ぞ?どのみち、女神の光である以上……」
『黙れ!!消え失せろッッッ!!』
カッと一気に迸ったバルドの魔導が弾ける。
全破棄。
氷の魔導が全能神様を呑み込む。
ビキビキ亀裂が入り、けたたましい音を立てて砕け落ちた。
「バ、ルド⁉︎」
「アヤ!助けてやるから……」
「やれやれ……人の話を聞かぬ奴よな?『少し、退いていろ』
「なっ………!」
全能神様の声だけが響き、バルドが消え、ギルが消える。
アウフィリアとルーもいつの間にかいなくなり、白い空間に俺一人。
シンとした無音の世界。
「え……な、んで?誰か?……」
「さて、今生の光よ。其方には、始めに六つを選んでもらわなくてはならぬ」
ポッと光が灯り、全能神様が現れた。
「全能神様!ここは⁈皆は……バルドはどこだよ!!」
「其方の選んだもの次第ぞ」
「全能神……ッ」
『お喋りはここまでだ。執行は、俺…光のルーと、水のアウフィリア。全能神ユクトディオス、三柱で行う。始めに選ぶは土…過去と未来。どちらを選ぶ?』
二つ新たに光が灯り、ルーとアウフィリアも現れた。更に、四つの光のみが現れ、俺を囲う。
「土…過去と未来って……何のこと?意味、分かんねぇって!!」
『選びなさい、アヤ。”終焉の秤”は始められたわ。私は止めたい。だけど、止められない。選んで進むしか道は無い』
アウフィリアが静かに言い、悲しく苦しそうに瞳を伏せる。
選べって……土とか、過去とか未来の意味が分からないのに、選べるわけねぇじゃん!
「これだけだと、意味が分からぬか?土は、道を表す。行くべき道ぞ。過去、自分が歩いた道に戻りたいか。未来、これから歩む道へ進みたいかじゃ」
「それ……選んだら、どうなるんだ?」
「そこまでは答えられぬ。先に答えを知ってしまっては意味がなかろう?」
苦笑し、肩をすくめるだけの全能神の答えに、俺は言葉が出ない。
そんな事言われたら、益々、答えらんない。
俺が選ぶ事で、この先の全てが決まる。
そんな、命綱の端を握るかのような………
血の気が引いてく。
体が震える。
頭、真っ白で何も考えらんない。
『ルー…ユクトディオス。やっぱり、アヤには無理だわ』
『かもな。だが、選択の余地がない。選ばなきゃ、最悪の結末を迎えるだけだ』
『でも……!!』
「神の台座を創り、争乱の種を創り……アウフィリア。奔放なのが、其方の魅力だが、事を大きくし過ぎたは其方の咎。責は取らねばならぬ」
『だ、だったら!だったら、私が何とか……』
『できねぇだろ?光の魔導をお前が持ったままなら、或いは……だけど、お前は自分の六つの魔導を分け、女神の魔導と呼ばれるアヤ達を創り出した。終焉の秤を受けられるのは、光だけだ』
『………ーーーー』
厳しいルーの言葉に、アウフィリアが顔を歪め、唇を噛みしめる。
苦しそうに、アウフィリアが視線を俺に寄越す。
『ごめんね、アヤ……』
「アウフィリア……俺」
怖い……
怖い…………
怖い怖い怖い怖い怖い怖いッッッ!!!!!
駄目だ!我慢できないくらい、怖くてたまらない!!
「アヤ。酷なようじゃが、あまり悠長にもできぬでな」
無理だ!
「選んで貰わねばならぬ」
嫌だ!!
「どちらを……」
た………
「…け、て………ルド」
差しのばされる全能神の手が視界に入り、不安と恐怖が俺の限界を超えた。
「嫌だぁぁあああーーーーーーッッッ!バルドーーーーーーーーー!!!!!」
叫びが魔導となり、体から迸る。
ガッと強く掴まれる腕。
涙で煙り、泣き濡れた俺の視界に………ーーーーーーー
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