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第三部3章 思惑の全能神と真白き光の眠り姫 編
9.終焉の秤③
しおりを挟む『アウフィリア』
『アヤたち魔導は私が創り出したのよ⁉︎私の子も同然だわ!せっかく……あの時、止むを得ず手離したのに、また失えと言うの⁈』
『アウフィリア!!』
『ッッッ!!』
癇癪を起こした子供のように喚くアウフィリアを、ルー様が鋭く嗜める。
厳しい顔のルー様に、アウフィリアが顔を歪ませて唇を噛む。
「ルー様……何がどうなってるか分かんないんだけど?女神は何をしたんだ?全能神様が言ってた、選ばせるって何だよ?あんたら、神は…一体、俺たち……俺に何をさせる気なんだ?」
俺の問いに、ルー様…女神ルーが、真珠色の瞳を向けてくる。
暫し無言で見合ったあと、ルーがハァっと小さく溜め息をつく。
「待て、ルーよ。最初から言っておったように、儂から話す。関与しておるは儂だでな」
『………すきにしろ』
苦虫を噛み潰したように顔をしかめ、ルーが腕組みしたまま小さく吐き捨てた。
「アヤを解放しろ!話はそれからだ」
「それは無理だ。できぬ」
「貴様ッッッ!!」
『ユクトディオス!お願いだから……』
「アウフィリア。避けて通れぬ定ぞ?」
バルドと女神にすげなく返し、ユクトディオスが腕を組む。
悠然としたその姿は、ルーに絡んでいたおチャラけた空気は微塵もない。
「…話が終われば解放すんのか?」
「状況次第、じゃの。断言できぬ」
しれっと返す全能神様に、バルドがギリギリと歯を噛みしめる。
「バルド……話、聞きたい」
「アヤ………⁈」
「頼む……」
俺の静かな懇願に、バルドが顔をしかめた。
何が起きてるのかは分からない。見当もつかない。
だけど……
多分……物凄く、重大でとんでもない事が起きてる。それだけは分かる。
だって………俺、結界に囚われてから、、、
「話は聞く…だが!アヤをどうこうする気なら許さねぇ!!それだけは認めたわけじゃねぇからなッ⁉︎」
全能神様、ルー様…アウフィリアを、バルドが睨みつける。冷たく凍てついた魔導がユラユラ溢れ出す。
バルドの肩をギルゼルトが掴む。
「何だ?止める気か?」
「少し落ち着け。まずは話を聞く。それからぞ……それに………」
言葉を切ったギルゼルトが目を閉じ、ゆっくり開くと同時に、バルドに負けず劣らず物凄い威圧感の魔導が立ち昇る。
「我が其方を止めるなど、間違ってもないから安心せよ」
ギルゼルトを睨みつけ、フンと鼻を鳴らし、バルドが肩にかかった手を振り払う。
結界の俺を庇う形で前に立ってくれた。
すぐ目の前に背中あるのに……触れられないのが寂しい。
「結論から言え。貴様ら神は、アヤに何をさせる気だ?」
「気の短かき男じゃのお。エルネイレスとは違うようだの」
『魔導の本質はそっくりだ。光に惚れ抜いているところも』
「てめぇら……ッ!」
悠長に話す全能神様とルー様に、バルドの魔導が益々ささくれ立ってく。
「そう、怒るでない。させると言うても、何も難しき事ではないでな」
「だから!!それが何なんだってさっきから言ってんだろうがッッッ!!」
『終焉の秤』
キレたバルドが食ってかかると、ルー様が一言。
しゅうえんのはかり?
「何?それ」
俺が問うと、アウフィリアが目を伏せて顔を背けてしまう。
「しゅうえんのはかりって何なんだよ⁈」
「今生、光の魔導よ。其方が転生前、最初の魔導。つまりは其方の出発点。アルシディアが担う筈だった責」
「アルシディアがする筈だった……事?」
「そうじゃ」
「それっ、て………?」
ドクン、と、心臓が急に脈打つ。
何だ?この気持ち悪さ。
血が冷める。一気に冷たく引いていく感じ。
口の中がカラカラに乾く。
『終焉の秤は……』
ルー様の声が遠い。
よく、聞こえな………………
「この世界の終わりを其方が決め、左右させる事」
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