419 / 465
第三部3章 思惑の全能神と真白き光の眠り姫 編
9.終焉の秤②
しおりを挟む怖い。
何が怖いって………
「ルー。愛しておるぞ?」
『頭、沸いてんのか?起き抜けに寒い事言うな』
罵られても罵られても、頬を染めて幸せそうな全能神と、何処までもツンドラ氷点下の如く冷たい光の女神。
「相変わらず口が悪いのぉ、ルーよ。だが、好き♡」
『気色悪い!』
ポッと照れながら言う、全能神様に、ルー様が顔を思いっきり歪めて斬って捨てる。
ルー様……物凄い美人なのに、美人なのに、美人な~の~に~~~~~!
「貴様ら、いい加減にしろ!ふざけてねぇで、何がどうなってんのか話やがれ!!」
バルドがキレた……
いや、気持ち的には俺もそうだけどさ……仮にも神様相手に貴様らって……
『遊んでる場合じゃねぇな』
「これこれ。儂は遊んでなどおらぬぞ?真面目に……」
『うるっせえ!!黙ってろッ!!』
いや……ルー様。
全能神様、黙っちゃったら説明が…
『何黙ってんだ、ユクト。さっさと話せ!』
あ~、自由だなぁ……
女神って、みんなこうなのかなぁ~?
思わず、問いかけるような視線をアウフィリアに向ける。
『何よ??』
「いや……なんでも」
触らないでおこう。面倒クサいし……
「何から話すか………」
『全部だよ。どうせ、最初っからお前が絡んでんだろ?』
『やだ!そうなの⁈』
目をキリキリさせるアウフィリアに、全能神様が意味ありげに笑う。
「そもそも、アウフィリアよ。其方が理を捻じ曲げたが原因ぞ?」
『女神戦争の事?あれは……!だって…………ッ』
女神戦争って…初代たちが最初の魔導だった時の、、、
「いったい……貴様ら、神は何を…」
「そうさの…話さねばなるまいな。其方たち、女神の魔導と呼ばれる者たちには」
ついと、全能神様に視線を寄越された。
ルー様の時と同じく、わけが分からない畏怖を感じる。
「アヤ?」
無意識にバルドの服の裾を握りしめていたらしく、訝しむ声音で呼ばれ、慌てて離した。
「何でもない……」
全能神様、女神二人から視線を逸らす。
「話す前に、せねばならぬ事がある」
「え?うわッ⁉︎」
全能神様が手を軽く振る。
と、同時に、俺の足元に方陣が現れる。複雑な紋様を織りなすそれが眩しく発光する。
「バルド!!」
「アヤっ⁉︎貴様ッ、何をした⁈」
バルドに向かって手を伸ばす。
俺とバルドの手が触れ合う前に、見えない壁のようなものにバチンッと激しく弾かれた。蒼白く静電気のような光が弾け、ジンジンとした痛みが指先を覆う。
「い…ッつ!!」
「チッ!!なんだ、これは!」
「退け!グレインバルド!!」
ギルゼルトが手に魔導を集約させ、黒い衝撃波を放つ。
衝撃波は俺の側数センチで搔き消える。
「結界……全能神よ。アヤをどうするつもりか?」
「どうこうするつもりはないのぉ。選ばせるだけぞ。それにより、儂が多少は整えはするがの」
「選ぶ、って…俺に、何を?」
わけが分からない。
戸惑い、結界内にて立ち尽くす俺に、微笑む全能神様。
『ユクトディオス!』
「ならぬ。この結果を招いたは、其方の咎…こうするより他はない」
『でも、、だってッ……!』
『アウフィリア』
ルー様が静かにアウフィリアを呼ぶ。
ビクンと体を竦ませ、ゆっくりと俺を見るアウフィリアの瞳が濡れていく。
女神が流す涙に、俺の中に、ザワザワしたあの妙な畏怖がどんどん広がる。
『い、やよ…私の子よ?また、失うの?』
何処か虚ろに呟く女神の声が、小さく、だがはっきりと響いた。
2
お気に入りに追加
2,222
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる