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第三部3章 思惑の全能神と真白き光の眠り姫 編

7.女神、帰還への序章・終幕へ①

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霞んでぼやけた視界が徐々に鮮明になっていく。
ぼんやりと、俺は床らしき場所に横になっていた。
チリンと微かな音が絶え間なく響く。
ゆっくりと体を起こした。

『ここ…は?』

発した言葉は、不思議な響きで、思わず口を手で押さえた。
声が………!
口を押さえた手に固い感触が当たり、手の平を頬に当てると、濡れているのを感じた。
涙?
でも、固く…?
訝しみ、周りを見渡すと、座り込んだ俺の周りを取り巻くように、紫色の小さな欠片が無数に散らばっていた。
チリンと、またあの音が聞こえ、ハッとして見やると、頬を伝った涙が、途中で欠片に変わり転がった。
摘んで拾い上げる。

『アメジスト…?涙が、コレに変わってるのか?』

意味が分からない。
ここが何処かも、涙がアメジストに変わる理由も……
さらりと乾いた音を立てて、目の前に流れ落ちてきたそれを見て、更にギョッとなる。
淡いペパーミントとラヴェンダーがかった真珠色の髪の毛。

『これ?えっ……何?』

摘んで引っ張ると、頭に負荷がかかった。
俺の、髪⁈
鏡がないから、自分が今どうなってるのか分からない。
周りを慌てて見渡す。
真っ白な空間だ。
ここは………

『アストラル…だよな?』
『無論だ』
『ッッ⁉︎』

不意に声がし、突然目の前に現れた人物に、俺は息を呑んだ。
気配も何もなく、ホントに突然だ。

『眠りが浅くなっておるな…目覚めが近いか?』

腰ぐらいまである金色の髪に、エメラルドとアメジストの瞳の美丈夫だが、恐ろしく豪奢で派手派手しい。

『あ、んた…誰だ?』
『会うのは初めてか?う~、、ん…そうだったか?ま、よかろう』

一人で納得する男に、俺の警戒心が募る。
こういう話聞かない系の男には、過去何度もやばい目にあってきたから。

『魔導は十分だの。まったく、途中で魔導を移せなくなったは焦ったわ』

何やらぶつぶつ言ってるけど、こいつ、本当に誰なんだ?
ジリジリと、少しずつ後退りする俺に、男が場にそぐわないほどニッコリと笑った。

『アルシディア…は、前の名か?今生は、アヤであったか?其方らには悪いが、いろいろ利用させて貰った。まぁ、これ程に世界に波長が合うとは思わず、我もなかなかに手を焼いたがの。時期に終わる故、安心せよ』
『何言ってるか分かんねぇよ……あんた、一体』
『我か?う~、、ん…言っておらぬか?』
『………………』

話にならない。
言いたい事しか言わない。
俺、こういう奴ら嫌ってほど知ってる。すごく、嫌な予感しかしないけど……

『あんた………』
『我は、、、お?目が覚めたようだの』

男が笑い軽く手を振ると、またまた目の前に突然人が降って湧いた。
ドサっと倒れこむ。

『イヴァ…ネア!』

倒れこんだのは、イヴァン…ネアだった。
体を丸め込み、顔を軽く顰めている。

『ネア?ネア、大丈夫か⁈』

俺の呼びかけに、ハッとしたように目を開き、俺を認めると慌てて飛び起きた。
腕に………

『ネア、それ!!』

ネアが腕にしっかり抱きしめていたのは、ラァムの実。
俺とバルドの子。

『それだけを引き寄せる予定が、此方まで付いてきおってな。しかも、しっかり抱き込み離さぬときた』

男が苦笑いしながら言うと、ネアが俺の後ろにサッと隠れるように回り込む。
無言で男を睨みつける。警戒心丸出しの獣のようだ。

『傷つけぬと言うても、宥めすかしても駄目。毛を逆立て威嚇する猫のようで、ほとほと困った』

男の言葉に、ネアが益々目を怒らせる。
何だろう。ネアのこの感じ、守ろうとしてる?

『ネア?』

俺が呼ぶと、ネアがフワッと笑い腕に抱いたラァムの実を差し出してきた。
受け取ると、ネアが嬉しそうに笑う。

『守ろうと、してくれたんだな?ありがとう』

頭を小さい子にするみたいに撫でてやった。何でとか分かんないけど、そうしてやるのがいいような気がして。
案の定、ネアがニコニコ無邪気に笑った。

『微笑ましい光景だが、がないと困る。悪いようにはせぬ故に、一度、渡してはくれぬかの?』

男の困ったような笑いが耳に届く。
ネアにラァムの実を渡し、背後に庇う。

『俺とバルドの子だ。ネアも守ってくれた…正体不明のあんたに渡す訳ねぇだろ!!』
『ふむ……まぁ、もっともだの。だが、まだ終わっておらぬで、目的遂げるまでは、我にはそれが必要なのだ。無論………』
『えっ?あッ⁉︎』

男の姿が消える。
ほんの瞬き数秒で背後に立たれ、体を拘束された。

『其方も、我の目的には必要だ』
『、にすんだよ!離せッ!』
『大人しくせよ。傷付けるは本意でない。綺麗なもの、可愛らしきものは愛でるものだ』

耳にフッと息を吹かれ、ゾッとなる。
性的な雰囲気はないが、かと言って悪戯でも好きでもない奴にやられて気持ちいい筈がない。
ネアが男の腕にしがみつき、俺から引き離そうと引っ張ったり、叩いたりするが、男は痛くも痒くもなさそうだ。
体に回された腕の感触が気持ち悪い!
同じ強引でも、腕が違うだけで、受ける気持ちがまったく違う。

『こ、の!俺に触るな!!』
『これこれ。何も無体を強いようというのではない。少しばかり、利用されてもらうのと、かねてよりの……』
『だから!意味分かんないってば!!も、やだッ!』

怒りと混乱に、カッと体が熱くなる。
睨みつける俺と、男の瞳が交錯した瞬間、俺たちの周りを取り囲むように、光を放つ方陣が出現した。








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