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第三部2章 消える魔導 双生の煌めき編
5.終焉への序曲
しおりを挟む「……ま。アヤ様?」
「う、ん~~……?ふへ?」
優しく揺り起こされ、うとうとしていた微睡みから目を覚ます。
「申し訳ありません。眠ってらしたのに、お起こししてしまって」
「ううん…大丈夫。今、どれくらい?」
「もうすぐ、昼食時です。あまり、寝てしまわれると、夜、眠りが浅くなってしまいます。それで、失礼ながらお起こししましたわ」
アリッサに、申し訳なさそうに言われる。
「そ、か…う、、んぅ~~!」
伸び~をし、思いっきりあくびを漏らし、はふっと一つ息を吐くと、アリッサがニコニコしているのが目にとまる。
「何?」
「安心いたしましたわ」
「?」
花蜜を垂らした温かいお茶を受け取り、一口飲む。
うん、美味しい~…
「アヤ様のクタクタ具合を見ると、殿下のご寵愛の深さが分かりますもの♡」
「ぐっッッ!!!!!?」
ゴクンと意図せず飲み込み、むせかけて堪えた。
「ア、アリッサ?!」
「アヤ様がお倒れになって、お目覚めして以降。殿下ったら、アヤ様に益々らぶらぶで、おそばで見ている私たちは嬉し……恥ずかしくなるくらいに、
あまあまのいちゃいちゃなんですもの~~♡……アヤ様?どうかなさいまして?」
「いや………」
なんだかなぁ~…
あっちの世界の現代語。ちょこちょこ出ちゃってたから、バルドが面白がって使って、アリッサたちまで覚えちゃったんだよなぁ~…
「アヤ様。昼食後はまたしばらくお昼寝なさって大丈夫ですわ。また、適度な時を見計らって、お起こししますわ。なんでしたら、殿下もご一緒にらぶらぶ…」
「しないってッッ!!」
うぅっ…有能な侍女さんは助かるけど、いらんとこまで有能なのは困る。
思いっきり否定する俺に、あら~、残念ですわぁとかなんとか、本気で落胆しながらアリッサが部屋を出て行った。
ソファ下の毛足の長いラグ(のような敷物)の上に、フカフカの敷布に包まって寝ており、側にはラァムの実も一緒。ベッドかせめてソファでと、何回か言われたけど、下の方が落ち着くんだよなぁ~…
一人の時は尚更。バルドが一緒だと、大概、腕に抱き込まれて離してくれないから……
まぁ、一緒にいる時はそれが普通になってて、逆にされてないと不安に……
「って!いかん!思考がピンクな方向に」
アリッサが変な事言うから、俺まで感化されてる。
一度、変な力の干渉に会い倒れ、目覚めてから今の今まで、俺は部屋からほぼ一歩も出てない。
魔導が減る現象は治まったが、ラァムの実に魔導が流れないわけはなく、とにかく眠い。
必要な魔導が吸収されているというのは分かるが、体が実に与える魔導を作り出そうと、休息も欲する為、俺は大概寝てるか、飯食ってるかぐらいしか自分で動いてなかった。
俺自身やラァムの実に起きた事。消える魔導の行方や、あの謎の出来事……考えなきゃいけないのに、頭がちっとも働かない。
謎って言えば……
「あの子……誰なんだろ?」
白い空間。アストラルに似た場所で見た、真っ白な女の子。アメジストの涙を流し、アメジストに守られた。
なんで俺があんな場所に居たのかは分からない。
けど、何か理由があって、意味がある事なんだろうとは思う。
うぅっ…考えたいのに、思考にどんどん靄がかかる。
ふと、枕元に置いてたラァムの実が軽く震えているのが分かり、手を伸ばした。
「あの時、助けてくれた光って……」
多分だけど、俺とバルドの……
キュッと抱きしめると、ラァムの実がほわっと温かくなる。
「俺の魔導……どこ、行ったんだろ」
ーー……ま、っ…………て…たーー
「え?」
不意に聞こえた小さな声に、顔を上げた途端、俺の頭の奥でキィーーンっという音が鳴り響いた。
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