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第三部2章 消える魔導 双生の煌めき編

3.旦那さま奮戦!生まれ来る子は実は……?!④

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「別れてから久しいが、また、急な来訪だな?何の用だ?」

ユフィカに案内された屋敷の一室。
銀毛混じりの黒鹿毛に、同じ黒い尻尾を揺らし、紺碧色の瞳を眇めながら、青年が一人入ってくる。
あいも変わらず無礼千万な奴だ。

「用がなければ来ない。貴様の顔を見たいわけではないしな、ラトナ」

ふんと、鼻で吐き捨ててやれば、黒鹿毛の犬狼、ラトナもまた、ハッと吐き捨ててきた。

「変わらず、胸くそ悪い男だ!アヤは貴様なんぞのどこが良いのか?気が知れん!」
「お前なんぞに知れはせんだろう。知らんでもいい」

静かに怒りを込めた応酬を繰り返し、二人してむっすり黙り込む。
一々、腹の立つ男だ。未だに、アヤを諦めてないのが丸分かりなのも、益々気に喰わん。

「二人ともそこまでに。そんな事するために来たのでもないでしょう?」

やんわりと白い犬狼、ユフィカに窘められ、お互いがそっぽを向く。
クキュ~ン…と、小さな啼き声が聞こえ、ハッとなる。
ユフィカが抱いた布の塊の中からだ。

「先ほども居たが、ユフィカの子か?」
「まさか…!いえ、違います。僕は、まだ発情期がきてないので。兄の子です」

慌てて否定し、ユフィカが微笑む。

「ユフィカは次が初の発情期だ。俺の子だが、白きものとして生まれたんでな。番の体の具合が良くない事もあって、守りを任せている」

言われて見てみれば、包まれた布から覗く耳と尾が白い。抱いてあやすユフィカと同じだ。

「ラァムの実から、か?」
「あぁ。それ以外ない。番はユリスだ。覚えていよう?」

以前、この村と別の村のいざこざがあった際、負傷した白き犬狼の名だ。
療養とあったが、どうやら、慕っていたというラトナの番になれたようだ。

「いざこざはなくなったようだな?」
「今は、アスラが俺と同じく、次期としてあちらの村を治めてるからな」

ユフィカの番の名だ。敵対していた村の次期の弟だったが、その次期で兄が問題を起こし廃された為、代わりに次期になった犬狼。中々の好青年だったのを覚えている。

「そうか……」
「グレインバルド。そんな話をする為、来たわけではあるまい?何があった?」

ラトナに問われる。
確かに、こんな世間話してる場合じゃないな。

「話はそのラァムの実の事だ」
「ラァムの実の?」
「あぁ……お前たちの村から貰い受けたラァムの実を使ったんだがな……どうも、おかしい」
「おかしい?おかしいとはどういう意味だ?」

互いに座り、話の本題に入る。

「ラァムの実の使い方は教えたはずだが?」
「あぁ。使い方は間違ってねぇな。というか、間違ってないからおかしいんだが……」
「煮え切らんな。何が問題だ?」
「魔導が消える」
「は?何??」

消えるといえば、語弊があるが……あながち、外れてもおらず。

「すべてではない。大半が消えると言った方がいいか…俺とアヤとで注いだ魔導。そのアヤの魔導だけが消える。それどころか、足りんとばかりにギリギリまで吸い取られているようだ」
「何だ、それは?」
「俺が聞きてぇよ。だから、来た」
「ラァムの実にそんな力はない。なんでそんな事になっている!?」

顔をしかめ、解せないとばかりに言うラトナに、俺が答える言葉はない。

「殿下。申し訳ありませんが、兄の言葉は本当です。ラァムの実が注いだ魔導以上を吸い取るなんて事はありません。それに……」
「ユフィカ?」

あきらかに言い淀むユフィカ。
何だ?

「確信が持てないし……言うべきか分からないけど」
「気づいた事があるなら言え」
「兄さん……あの、魔導が」

困ったように躊躇いながら、ユフィカが口を開く。

「殿下とアヤのラァムの実……魔導を二つ感じるんです」








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