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第三部2章 消える魔導 双生の煌めき編
3.旦那さま奮戦!生まれ来る子は実は……?!③
しおりを挟む「ぅ、ん……」
「アヤ?」
腕の中、軽く身じろぎ小さく呻いたアヤに、俺は抱き抱える腕を直し見降ろす。
すーッと、また深く眠り込む。頬に手を当てると、柔らかく温かい。
「魔導はだいぶ戻ったか…目覚めんのが気になるが、苦痛を感じてるようでないのが幸いか……」
アヤを着替えさせ、厚手の柔らかい敷布に包み込み、オーキッドに乗り込んですぐ魔大陸へと向かい数時間。
アヤが倒れ眠りについてからはもっと経つように感じる。
腕にはラァムの実を抱き抱えたまま。着替えさせる時にもなかなか離さず苦労した。
一体、何があったのか…ーーーーー
「急いだ方が良さそうだ。オーキッド、少し早めろ」
俺の指示に、やや不満そうながらも、オーキッドが速度を上げる。
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魔大陸に着き、犬狼の村近くの湖。
着陸し、俺たちが降りやすいよう伏せたオーキッドから、アヤを抱えて降りる。
「オーキッド、ここで待て。さすがに、お前は連れて行けん」
グルルと鳴き、ついとアヤを見るオーキッドの気持ちは分かる。
「心配するな。これがお前の大切な主人であるように、俺にとっては大切な伴侶だ。何があっても俺が守る」
オーキッドが、じっと俺を見やった後、グクゥっと鳴き目を伏せその場に座り込んだ。
それに小さく頷き、アヤを抱え直し村に向かい歩く。
「前に来た時より、瘴気が薄いな…闇の支配から抜けたからか?」
闇黒の塔で、邪神ラゼルが画策していた時より、淀んだ空気はなくなった。
魔大陸だから、多くの魔のものが住まう地だ。が、人が住む大陸とは隔絶に近い為、必要以上の負の魔導を出す必要は本来ならない。だから、これが通常の状態と言えるだろう。
「ラゼル……か」
ふと思い出した。
ラゼルを退けられたのは良かったが、結局、あの時の圧倒的な力の正体は分からず終いだ。
『知らずとも良い』そう言って砕け散った邪神。ラゼルほどの神を、軽く払い退ける力……
腕の中の存在を見降ろす。
長い苦悩と、渇望の末に手に入れた唯一の光。
ー女神の光の魔導の命運は苛酷。
一体、どれだけのものを背負わされているのか?
「アヤ…………」
眠り続ける伴侶の額に小さく口付け、犬狼の村に向かい歩を進めた。
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犬狼の村の入り口。
真っ白な犬狼が、腕に抱いた赤子をあやしている。
「ユフィカ」
「ふえ?え、あ、、皇太、子、殿下?!」
振り返った白い犬狼、ユフィカが目をまん丸にし、慌てて駆け寄ってきた。
「殿下、どうなさったのですか?一体、急に……」
「聞きたい事があってな」
「さようで、すか…えっ?あ!アヤ?!殿下、アヤが……!?」
一旦落ちついてから、俺に抱かれたアヤに気づき、ユフィカが再び慌てふためく。
「眠ってるだけだ。それについても中で。とりあえず、村に入れろ。あと、ラトナは居るか?」
「は、はい…!中へどうぞ!」
弾かれたように村に促し、ユフィカが駆け出す。それを見送り、俺もまた、アヤを抱え直し歩き出した。
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