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第三部2章 消える魔導 双生の煌めき編

2.消える魔導の行方④

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ピチャ、と音を立て、唇と舌が絡み合う。
シュルッと布が擦れる音と共に、体から圧迫感が消えた。コルセットが緩まされ、ハァッと、自由になった呼吸に、俺は力を抜いてバルドに凭れかかる。

「大丈夫か?」
「…ぅん……やっと、息できた」

無理やりに締め上げられ、不自然に変えられていた体は負担を負っており、緩んだ途端に肋骨と腰の辺りにシクシクした痛みを覚えた。
バルドの胸元に寄りかかり、痛みを堪えていると、顔を上向かされ目元に口付けられ片目を瞑る。

「ここまでしろって言ってねぇけどな…」
「相変わらず、侍女’ズは有能だよ」

有能すぎるが故の全力投球だ。怒るわけにもいかず、苦笑せざるを得ない。
不意に体がふわりと浮いて、横抱きに抱き抱えられる。

「バルド?!」

そのままソファに移動し、俺を横抱きのままバルドが座る。
抱き抱えられたまま、まじまじと見つめる。

「何だ?」
「いや……てっきり、、」
「てっきり?”てっきり、あのまま抱かれる”とでも思ったか?」

答えるならば、「うん!」だ。
だって、あんな抱く気満々空気ダダ漏れで…

「抱いても良かったがな。キスの時、唇が異様に冷たかったのと、疲れてるように見えたからな。抱かれてる途中で、ホントに具合悪くなられてもと思ったんだが……いらん気遣いだったか?」
「いや…全然、んな事ありませんです!むしろ、もっと気遣って下さい!!」

ここで、「じゃあ…」なんて、気が変わられても困る。慌てて否定したら苦笑され、鼻の頭にチュっと小さくキスされた。

「バルドって……」
「うん~?」

目尻やこめかみやら、もちろん、唇もと、あちこち小さく口付けが施され、擽ったさと気恥ずかしさで顔が熱くなる。

「スキンシップ……は、通じねぇか?え、っと~…触るの好きだよな?イチャつきたいタイプ、、性格、とか?」
「お前だけだ」
「え?」
「こんなにも、触れていたいと思ったのは、お前が最初で最後だ」

真顔で言われ、意味を理解したら……
は、は、恥ずかしい奴!
嬉しくない……訳はないが、こういう事臆面おくめんなく言えるのは、さすが皇子だ。

「アヤ?」
「や……ちょ、っと、今は……まだ」

うぅ~…駄目だ!顔、上げらんない!
顔を伏せたまま、う~あ~言ってたら、クッと笑ったバルドが、俺の頭のてっぺんにもキスを落とす。

「いい加減馴れろよ?」
「無、、理……」

くはっと、堪え切れないとばかりに吹き出し、バルドが俺を抱きすくめ、肩を震わせて笑い出す。

「ひっど……!大体、こういう事、恥ずかし気もなく
……ッ!ん、あっ」

怒って振り仰いだ顎を取られ、そのまま深く唇が重なる。唇が舌で開かされ絡まる。

「んぅッ!ゃ……ぁ、ずる……ッ!」
「な、にが?ずるく、ねぇだろ?」

舌を吸われ舐められながらの文句は、同じく潜もったバルドの声で返された。
粘膜同士が絡み、口の中を刺激され、体がヒクヒク跳ねる。
ずるいだろ……!?
俺が、バルドのキスに弱いの知ってて仕掛けるなんて。
あぁ~…駄目だ。気持ちよくって、頭、ボーっとしてきた。
ついこの間抱かれたばかりだ。いくらなんでも、やりすぎじゃなかろうか?
そう思うのに、思いとは裏腹に、俺の腕はバルドを抱き寄せるように首に回る。
フッと小さく笑い、バルドの唇が離れる。

「ぁ、………!」

微かに不満の声が漏れた俺の唇を、バルドがゆっくりと舐めた。そのまま、また入れてくれるのかと期待したが気配がない。

「バ、ルド……も、なぁ、」
「うん?何が、だ?」

躊躇いがちに強請るが、わざとらしく知らんぷりされた。

「うぅ~~………!意地が悪いぞ?!」

分かってるくせに焦らすなんて……やる事がオヤジ臭い!言ったら、後が怖いから言わねぇけど。

「アヤ。欲しいんなら、何が欲しいのか言えよ?」
「言わなくたって……」
「言わなきゃ分からん」
「ッッッ!!!!!」

知ってるくせに!
この意地悪皇子!!

「もッ、なんでそう、言わせたがる…ッ!」
「恥ずかしがりながら、それでも言うお前が可愛いのが悪い」

こンのぉ~~~~!!
涙目で睨むが、いつもの如く効きやしない!
こうなりゃ、意地だ!
バルドだって、少しは余裕なくせばいい。
バルドの胸を押し、後ろに両手を突っ張ったバルドの腰の辺りに馬乗りに座る。
上着の留め具を全部外し、前を肌蹴させると、バルドが目を瞠り、ニッと笑った。

「随分、大胆になったな?」

余裕綽々、憎たらしい。
着ていたドレスを肩から引き下ろす。バルドが息を呑み、視線が俺の胸元に注がれるのが分かった。
見られているのを意識しながら、両手を肌蹴たバルドの胸に這わせる。
ピクッと軽く反応したのに気を良くし、自分から唇へ口付けた。
俺の行動に一瞬惚けたバルドに、溜飲が下がり、クスと思わず笑みがこぼれる。

「欲しいんなら、バルドが言えよ。俺だけなんてズルいだろ?」

目を瞠り、クックッと喉奥で笑った後、バルドが目を眇める。雄の色香漂うそれに、俺は失敗と成功を悟り、ぞくりと体を震わせる。
後頭部に手をやられ、些か強引に引き寄せられる。
唇と唇がつきそうでつかない位置。

「上等だ……アヤ。俺を煽った責任は自分で取れ?」

甘く溶けるような吐息と言葉が、唇の中に消えていく
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