383 / 465
第三部2章 消える魔導 双生の煌めき編
2.消える魔導の行方④
しおりを挟むピチャ、と音を立て、唇と舌が絡み合う。
シュルッと布が擦れる音と共に、体から圧迫感が消えた。コルセットが緩まされ、ハァッと、自由になった呼吸に、俺は力を抜いてバルドに凭れかかる。
「大丈夫か?」
「…ぅん……やっと、息できた」
無理やりに締め上げられ、不自然に変えられていた体は負担を負っており、緩んだ途端に肋骨と腰の辺りにシクシクした痛みを覚えた。
バルドの胸元に寄りかかり、痛みを堪えていると、顔を上向かされ目元に口付けられ片目を瞑る。
「ここまでしろって言ってねぇけどな…」
「相変わらず、侍女’ズは有能だよ」
有能すぎるが故の全力投球だ。怒るわけにもいかず、苦笑せざるを得ない。
不意に体がふわりと浮いて、横抱きに抱き抱えられる。
「バルド?!」
そのままソファに移動し、俺を横抱きのままバルドが座る。
抱き抱えられたまま、まじまじと見つめる。
「何だ?」
「いや……てっきり、、」
「てっきり?”てっきり、あのまま抱かれる”とでも思ったか?」
答えるならば、「うん!」だ。
だって、あんな抱く気満々空気ダダ漏れで…
「抱いても良かったがな。キスの時、唇が異様に冷たかったのと、疲れてるように見えたからな。抱かれてる途中で、ホントに具合悪くなられてもと思ったんだが……いらん気遣いだったか?」
「いや…全然、んな事ありませんです!むしろ、もっと気遣って下さい!!」
ここで、「じゃあ…」なんて、気が変わられても困る。慌てて否定したら苦笑され、鼻の頭にチュっと小さくキスされた。
「バルドって……」
「うん~?」
目尻やこめかみやら、もちろん、唇もと、あちこち小さく口付けが施され、擽ったさと気恥ずかしさで顔が熱くなる。
「スキンシップ……は、通じねぇか?え、っと~…触るの好きだよな?イチャつきたいタイプ、、性格、とか?」
「お前だけだ」
「え?」
「こんなにも、触れていたいと思ったのは、お前が最初で最後だ」
真顔で言われ、意味を理解したら……
は、は、恥ずかしい奴!
嬉しくない……訳はないが、こういう事臆面なく言えるのは、さすが皇子だ。
「アヤ?」
「や……ちょ、っと、今は……まだ」
うぅ~…駄目だ!顔、上げらんない!
顔を伏せたまま、う~あ~言ってたら、クッと笑ったバルドが、俺の頭のてっぺんにもキスを落とす。
「いい加減馴れろよ?」
「無、、理……」
くはっと、堪え切れないとばかりに吹き出し、バルドが俺を抱きすくめ、肩を震わせて笑い出す。
「ひっど……!大体、こういう事、恥ずかし気もなく
……ッ!ん、あっ」
怒って振り仰いだ顎を取られ、そのまま深く唇が重なる。唇が舌で開かされ絡まる。
「んぅッ!ゃ……ぁ、ずる……ッ!」
「な、にが?ずるく、ねぇだろ?」
舌を吸われ舐められながらの文句は、同じく潜もったバルドの声で返された。
粘膜同士が絡み、口の中を刺激され、体がヒクヒク跳ねる。
ずるいだろ……!?
俺が、バルドのキスに弱いの知ってて仕掛けるなんて。
あぁ~…駄目だ。気持ちよくって、頭、ボーっとしてきた。
ついこの間抱かれたばかりだ。いくらなんでも、やりすぎじゃなかろうか?
そう思うのに、思いとは裏腹に、俺の腕はバルドを抱き寄せるように首に回る。
フッと小さく笑い、バルドの唇が離れる。
「ぁ、………!」
微かに不満の声が漏れた俺の唇を、バルドがゆっくりと舐めた。そのまま、また入れてくれるのかと期待したが気配がない。
「バ、ルド……も、なぁ、」
「うん?何が、だ?」
躊躇いがちに強請るが、わざとらしく知らんぷりされた。
「うぅ~~………!意地が悪いぞ?!」
分かってるくせに焦らすなんて……やる事がオヤジ臭い!言ったら、後が怖いから言わねぇけど。
「アヤ。欲しいんなら、何が欲しいのか言えよ?」
「言わなくたって……」
「言わなきゃ分からん」
「ッッッ!!!!!」
知ってるくせに!
この意地悪皇子!!
「もッ、なんでそう、言わせたがる…ッ!」
「恥ずかしがりながら、それでも言うお前が可愛いのが悪い」
こンのぉ~~~~!!
涙目で睨むが、いつもの如く効きやしない!
こうなりゃ、意地だ!
バルドだって、少しは余裕なくせばいい。
バルドの胸を押し、後ろに両手を突っ張ったバルドの腰の辺りに馬乗りに座る。
上着の留め具を全部外し、前を肌蹴させると、バルドが目を瞠り、ニッと笑った。
「随分、大胆になったな?」
余裕綽々、憎たらしい。
着ていたドレスを肩から引き下ろす。バルドが息を呑み、視線が俺の胸元に注がれるのが分かった。
見られているのを意識しながら、両手を肌蹴たバルドの胸に這わせる。
ピクッと軽く反応したのに気を良くし、自分から唇へ口付けた。
俺の行動に一瞬惚けたバルドに、溜飲が下がり、クスと思わず笑みがこぼれる。
「欲しいんなら、バルドが言えよ。俺だけなんてズルいだろ?」
目を瞠り、クックッと喉奥で笑った後、バルドが目を眇める。雄の色香漂うそれに、俺は失敗と成功を悟り、ぞくりと体を震わせる。
後頭部に手をやられ、些か強引に引き寄せられる。
唇と唇がつきそうでつかない位置。
「上等だ……アヤ。俺を煽った責任は自分で取れ?」
甘く溶けるような吐息と言葉が、唇の中に消えていく
………………………………ーーーーーーーーーーーー
2
お気に入りに追加
2,208
あなたにおすすめの小説
俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~
アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。
これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。
※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。
初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。
投稿頻度は亀並です。
愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと
糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。
前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!?
「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」
激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。
注※微エロ、エロエロ
・初めはそんなエロくないです。
・初心者注意
・ちょいちょい細かな訂正入ります。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません
ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。
俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。
舞台は、魔法学園。
悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。
なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…?
※旧タイトル『愛と死ね』
転生したら第13皇子⁈〜構ってくれなくて結構です!蚊帳の外にいさせて下さい!!〜
白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)
BL
『君の死は手違いです』
光の後、体に走った衝撃。
次に目が覚めたら白い部屋。目の前には女の子とも男の子ともとれる子供が1人。
『この世界では生き返らせてあげられないから、別の世界で命をあげるけど、どうする?』
そんなの、そうしてもらうに決まってる!
無事に命を繋げたはいいけど、何かおかしくない?
周りに集まるの、みんな男なんですけど⁈
頼むから寄らないで、ほっといて!!
せっかく生き繋いだんだから、俺は地味に平和に暮らしたいだけなんです!
主人公は至って普通。容姿も普通(?)地位は一国の第13番目の皇子。平凡を愛する事なかれ主義。
主人公以外(女の子も!)みんな美形で美人。
誰も彼もが、普通(?)な皇子様をほっとかない!!?
*性描写ありには☆マークつきます。
*複数有り。苦手な方はご注意を!
明日もいい日でありますように。~異世界で新しい家族ができました~
葉山 登木
BL
『明日もいい日でありますように。~異世界で新しい家族ができました~』
書籍化することが決定致しました!
アース・スター ルナ様より、今秋2024年10月1日(火)に発売予定です。
Webで更新している内容に手を加え、書き下ろしにユイトの母親視点のお話を収録しております。
これも、作品を応援してくれている皆様のおかげです。
更新頻度はまた下がっていて申し訳ないのですが、ユイトたちの物語を書き切るまでお付き合い頂ければ幸いです。
これからもどうぞ、よろしくお願い致します。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
祖母と母が亡くなり、別居中の父に引き取られた幼い三兄弟。
暴力に怯えながら暮らす毎日に疲れ果てた頃、アパートが土砂に飲み込まれ…。
目を覚ませばそこは日本ではなく剣や魔法が溢れる異世界で…!?
強面だけど優しい冒険者のトーマスに引き取られ、三兄弟は村の人や冒険者たちに見守られながらたくさんの愛情を受け成長していきます。
主人公の長男ユイト(14)に、しっかりしてきた次男ハルト(5)と甘えん坊の三男ユウマ(3)の、のんびり・ほのぼのな日常を紡いでいけるお話を考えています。
※ボーイズラブ・ガールズラブ要素を含める展開は98話からです。
苦手な方はご注意ください。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる