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第三部2章 消える魔導 双生の煌めき編

2.消える魔導の行方②

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「あん!いや、動いちゃッ!」
「駄目ですわ!じっとなさって下さいませ!」
「我慢!我慢ですわ!!きゃっ、急に動いたら…!」

何か、会話が物凄く如何わしいが、そんなスケベな場面じゃない。
屋敷の一室。
俺は………

「ゔっ……!!!!!ぐ、ぐるじぃ~~」
「我慢なさいませ!せっかく締めたのに!アヤ様が動くからコルセットが緩んだんですわよ?!」
「アヤ様は!元々!細いですけど!やはり!男性!ですから!ある程度は!締め!ないと!いけ!ませんわ!!!!!」

!の時に、グッと締め上げられ、腹から押し出された空気が口から漏れていく。
!!!!!で、ギュギュ~~ッと締められ、グエッとカエルが潰れたみたいな声が漏れる。
ヤバい!肋骨あばら折れるって!
アリッサ!細っこい、いかにもか弱い侍女然として、どっからこんな力が?!

「ふぅ~…!だいぶ、締めましたわ!でも、これ以上はやはり無理ですわね。もう少し締めたかったですけど、あまり締め付けすぎると飲み物も飲めなくなりますし…仕方ありませんわね」
「ゔっ、も、勘弁して……?」

女の子じゃないんだから、どんだけ締め付けようと括れなんざ出来ねぇっての!!
第一………

ドレス姿この格好、意味あんのか?式は礼装でやったのに……」

そう。
式典は、ゴネてゴネてゴネてゴネて………(以下略)
ゴネまくって、男用の真っ白な礼装(金糸銀糸で煌びやかだが男物)に、百歩譲歩してマリアベールだけつけた格好で挙げさせてもらった。
だから、参列者や、開放された屋敷の庭に集まった民衆には、俺が男だという事は知れ渡っている。
今更、こんな格好しても……滑稽こっけいに映るだけでは?

「意味は大有りですわ!礼装もお美しかったですけど、やはり華やかさに欠けますわ!アヤ様、恥ずかしがってお化粧もさせて下さらないんですもの!太后様の嘆きようをご覧になりまして?!たいッッっっへん!楽しみになさっていらっしゃいましたのよ?!」
「ゔっ……そ、それは」

サティ様の事出されると、何も言い返せない。

「お祖母様…可哀想だわ。可愛い孫嫁ができたと喜んでらしたのに…」

イザベル……

「美しく装うのは妃の大切な役割でしてよ?華やかな格好もさせられない、甲斐性なしだと、殿下が恥をかきますのよ?愛しい伴侶であらせられる殿下に、アヤ様は恥をかかせたいんですの?!」

いや……ローレン。それは……

「とにかく!腕によりをかけ、完っ璧な美女に仕上げますわ!!」

だから、俺は男だって~~~~~~~~!!

「「「文句言わずにジッとしてて下さいませ!」」」

            *
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            *
            *

ヒラヒラ、ひらひら………数は少ないけど、女の人たち綺麗だなぁ~……

「お美しい妃様で、羨ましいですなぁ」
「まことに。いやはや、男性だと思えないくらい可憐な方だ」
「さすがは、光を魔導となさる方。女神も正に格やといったところで……」

うんたらかんたら、なんたらどうたら………
もはや、お経か呪文か?
次々、嬉しくも何ともない美辞麗句を贈られて……
一体、男の俺にどうしろと?
お前ら、目と気は確かか?
そういった綺麗な言葉は、広間にいる美しいご令嬢やご婦人(カッコ可愛綺麗な男も多々あり)に贈って差し上げろ!
あぁ~……足痛い。コルセットは馴れてきたけど、苦しいのは変わらずだし。
最初は愛想笑いもしてたけど、段々するのも馬鹿らしくなってきた。
あからさまなお世辞に、嫌気が差す。
だって、結局こいつら………………

「グレインバルド皇太子殿下は、このような華やかな場所はお好みになられないかと…」
「クレイドルでなく、ナ・コルテスで式をしたはどのような?」
「宰相閣下や、大臣等はお招きしなくて良かったので?」

などなど……
どっちの側につくか決め兼ね、探りを入れるか媚びる奴らばっか……
ある程度はにかけられたけど、どっちつかずこういう奴らはどこにでもいる。
早く、終わらないかなぁ……いい加減女装これも苦行だ。

「そろそろ」

バルドがゆっくりと、だがはっきりと言う。

「場を空けようかと?」
「あ……あぁ!こ、これは失礼を!いつまでも邪魔をするは野暮でしたな」
「どうぞ、ごゆるりと。我々は各々で楽しませていただきます」
「好きに寛がれよ?行くぞ?アヤ」
「へ?あ、あぁ。うん…」

手を差し出され無意識に自分のそれを乗せた。

「猊下、太后様。私と妃はこれにて失礼を」
「あぁ。疲れただろうから休むがよい」
「部屋へ、飲み物と軽く食べられる物を持って行かせます」
「おそれいります。では……」
「バルド、待っ…!あの、御二方とも、失礼しま…」

殆んど攫われるように広間を後にした。








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