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第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編
10.空気は新鮮な物に限ります!!①
しおりを挟む結局、なし崩し的に三日三晩、部屋から、寝室から出してもらえなかった。
嫌だとも言ったし、もう無理だと何度も泣いたが、宥めすかされ、甘やかされ、それこそイヤになるくらいに抱き潰された。
あぁ…外の空気が新鮮だ。
当分、あの爛れた空気はゴメンこうむる。
「……ちゃん?アヤちゃん?」
「…えっ?あ、あぁ、はい!すみません、サティ様」
ボーっとしていた。サティナキア様に呼ばれ我に帰る。
「ホホホ、いいのよ」
慌てて謝る俺に、サティナキア様は妙に嬉しそう。
「あ、の??」
「ごめんなさいね。でも、アヤちゃんがそうして疲れきってるの見ると、ね?」
ニコニコニコニコ笑うサティナキア様に、俺は益々困惑だ。
俺が疲れてると、サティ様が嬉しいとは…コレ、如何に???
カップを取り、優雅に飲むサティ様に、俺もまたお茶を頂く。
うん……花の実入りのお茶だ。美味しいし、香りもいい。
「ひ孫の顔を見られるのも遠くないようね♡」
「ぶーーーーーーーーーーーーーーッッ!!」
お茶、思っ切り吹いた!
ヤバい…気管に入った。
「ゲホッ!ケッホ!う、ぇっ!」
「あらあら、大変!アリッサ」
「失礼いたします。アヤ様、こちらを。ローレン、新しいお茶をお願いしますわ」
アリッサにハンカチを渡され口元を抑える。俺が吹き出したお茶やテーブルなどがテキパキ綺麗にされていく。
「驚かせてしまったかしら?」
「サティ様~……勘弁して下さい」
「ホホホ!でも、ひ孫の顔を見たいというのは本当よ。楽しみだわぁ~♡」
「…………………」
サティ様…俺の性別分かってる?俺は男ですよ~??
お花飛ばしてポヤポヤなさってるが、大丈夫だろうか?
そもそも、男同士じゃ、正規の方法じゃ子供はできない。
だから、アレなんだが……
男の嫁を受け入れてくれたのが奇跡なのに、果たしてあの方法まで受け入れてくれるだろうか?
「サティナキア様。用意が整いました」
「あら、そぉ?じゃ、運び入れてちょうだい」
ローレンが声をかけると、サティ様がニッコリ笑う。
考え事から引き戻された俺の目の前に、続々と煌びやかな物が運び込まれてくる。
服やら、宝石やら、靴や小物などなど…
うん、普通に綺麗だ。
「まぁ、綺麗だこと」
満面の笑みで、宝石類の箱を開けたりするサティ様。
楽しそうだなぁ。
どんどん入ってくるけど、どれぐらいあるんだ?
所狭しと並べられていく物の数。
「さぁ、アヤちゃん。始めましょ?」
「……………………………………はい???」
何を??
訳が分からず困惑の俺を放ったまま、サティナキア様が、品物を届けた男性とサクサク話をしていく。
「白い礼装も綺麗だけど、少し堅苦しいわね。縫い取りの刺繍糸は全て白金と白ね」
「太后様、宝石は如何しましょう?」
「やはりダイヤでしょうか?」
「アヤちゃんの可愛さを邪魔しないためには……そうねぇ、、悩むわね~」
「え?……ええええぇぇぇッッッ!?サ、サティ様?!」
アリッサ、ローレンを交え話をしだした中に俺の名が出て、思わずギョッとなる。
「も、も、もしかして、今、これ……俺の服とか選んでます??」
「もしかしなくてもそうよ?あら、言ってなぁい?」
「聞いてません……」
キョトンと可愛らしく小首をかしげるサティ様に、俺はがっくり項垂れる。
我が道を地で行く……うん。やっぱりバルドのお祖母様だ。
「あら、そうだったかしら?まぁ、もう分かった事だし大丈夫ね。アヤちゃん、どれが着たい?」
さくっとしれっと流されたなぁ~……
これは、アレか?言うだけ無駄ってやつ??
引きつり笑いのまま、遠い目になる俺をさておき、サティ様に指定された服を、アリッサとローレンが代わる代わるあててくる。
「やっぱり、白ね!宝石は……あら?」
「?」
サティ様が部屋の扉の方へ視線を向け、優しくニッコリ微笑んだ。
そちらへ目を向ける。
赤い巻き毛の美少女が、所在無さげに立っている。
「イザベル………」
呼びかけると、ハッとしたように視線を上げ、俺と目が合うと気まずそうに逸らし、意を決したように顔を上げた。
「入ってもよろしくて?」
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