上 下
365 / 465
第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編

4.想い合うが故に、すれ違い…⑤

しおりを挟む



ハァ……と、溜め息が漏れる。

ユリウスに部屋まで運んでもらって、すぐに一人にしてもらった。
俺の態度はあまりよろしいものじゃなかったが、ユリウスは静かに笑って聞き入れてくれ、心配するアリッサとローレンを促し、今は一人きり。
いつの間にか疲れて寝てたらしい。

ハァ……また、溜め息。

「貴妃……イザベルを迎えるのかな?」

庭園で会った時、仲良く寄り添ってたし……多分、そうなんだろう。

顔が歪む。マジ、凹む。

「嘘つき皇子……貴妃なんかいらないって言ったくせに!…………俺だけだって」

最初に目が合っただけ。あとは、こっちを見もしなかった。
不本意とはいえ、ユリウス皇子の腕に掴まった俺に対して、一言もなかった。
それだけ、俺に対して怒ってる?
確かに怒らせるような事言ったのは俺だ。でも、だからって……あんな見せつけるように、イザベルを腕に纏わせて……………………………………………………
………………………………………………………………

「何だろ……めっちゃ腹立ってきた!俺だけが悪いのか?!バルドだって、俺の不安を煽るような事して、約束だって破ろうとしてんのに?!」

考えたらだんだんだんだん腹が立ってきた!
第一、俺もなんでこんな弱い女みたいに、一人めそめそしてんだよ!?

ムカつく………ムカつくムカつくムカつく!

「ああああッッッ!!!!!もうッッッ!!!!!!無理ッ!我慢できんわ!!そうだよ、何で俺が一人我慢するわけ?!」

言うだけ言ってやる。
イザベルを貴妃として迎えるってなら、俺は一人でクレイドルに戻る。
三人並んで仲良しこよしなんかできるかッ!!

寝台から起き上がり、服を着替えた。
寝室から、隣の部屋を覗くと、部屋はランプシェードの灯りのみ。

「夜、か?何時頃なんだろ……」

部屋を訪れるには遅い時間なんだろうか?

「まぁ、大丈夫…かな」

遅い時間だとしても知るか!

アリッサとローレンはいない、か?
バルドの部屋の場所、聞こうと思ったけど……

「それらしい部屋あったら覗いてみればいいかな」

部屋をそっと抜け出す。
廊下はランプシェードの仄かな灯りがあり、真っ暗ではない。
城とは違い、あちこちに護衛兵がいるわけではないので静かだ。
結局、最初に聞いてた、俺とバルドが使う予定の貴賓室、場所は聞けずじまいだし、俺は別室使ってるからナ・コルテスでは一緒に居ないまま。

「ラァムの実!確か預けたまんま…場合によっちゃ、あれだけは持って帰んなきゃ」

あれはまだ魔大陸にしかないもの。かなり希少なものだし、うっかり出回ったりしたら騒乱の元だ。
話次第という事で、とりあえず部屋を探して歩き回る。

「あれ?ここ、どこだ?」

見知らぬ場所に出た。
庭園に出られる、渡り廊下みたいな場所。案内された覚えはないから、迷ったらしい。
屋敷はかなり広く、元の部屋にちゃんと戻れる自信がない。

「えぇ~…、と…どうしよう」

すでに道順すら覚えてない。
勢いに任せて出てきたけど……早くも後悔だ。

「誰か居ないかなぁ……居ない、か」

こんな夜に、庭園歩いてるような奴……………………

「あ……居た」

視界の端に、男数人が荷物らしき大きなものを抱え、庭園を静かに歩いているのが映る。

「使用人、かな?」

大型のゴミでも捨てに行くのか?それにしても、大の男数人がかりって……

「まぁ、いいや。使用人なら、部屋分かるよな。聞いてみよ」

道と部屋を聞くべく、俺は男たちの方へ駆ける。

「あの、部屋が分からなくなって……」
「ッッッ!!!!!」
「えっ…………?!」

振り向いた男の顔を見て、俺は固まった。男たちは三人。その三人ともが、オペラ座の怪人に出てくるような仮面(色は黒)を付けていたからだ。

「おい!どうする、見られたぞ!」
るか?」
「これ以上長居できん!」

男たちが慌てふためき一気に捲し立てる。

やるって……”る”って言ったよな?今……

マズい……

俺の中で警報が鳴る。
こいつら、使用人なんかじゃない。
男の一人が抱えた布に包まれた荷物の端から覗いたものが目に留まり、思わずハッとなる。
深いエメラルド色の……

「イザベル?!おい!お前ら、一体…ッッ!!!!!」

男たちが抱えたものの正体を悟り、声を張り上げようとした瞬間、首の後ろに強い衝撃を受け、目の前がぐらりと揺らぐ。
四人、目?
男三人の他にも居たらしい。
目の前が急激に暗くなる。朦朧となる意識の中、ゆらゆらと振り向いた目に、月光で逆光となる中、鈍く光る暗めのシルバーを見てとり、俺の意識はそこで完全に闇に呑まれた…………ーーーーーーーーーーーーー








*久方ぶりの、トラブルほいほい発動!(笑)
さて、真相は?!次回にてm(_ _)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

僕の兄は◯◯です。

山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。 兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。 「僕の弟を知らないか?」 「はい?」 これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。 文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。 ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。 ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです! ーーーーーーーー✂︎ この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。 今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

処理中です...