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第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編
4.想い合うが故に、すれ違い…②
しおりを挟む「う、ん…………ッッッぅあ!!」
トロトロと意識がうっすら覚醒した。ぼんやりしたまま身動ぎ、途端に走った体の痛みと怠さに呻く。
「ぁ……ぃ、、ぐ」
「アヤ様?アヤ様、目が覚めましたか?!」
視線をノロノロやると、心配そうなアリッサとローレンの顔がある。
「……ッ、サ…………ロ、レ………ケフッッッ!!」
「アヤ様!!ご無理なさらないで!喋らなくて大丈夫ですわ!ローレン、果実水を。蜂蜜を入れてね」
「えぇ、分かりましたわ」
パタパタと動き出す二人をぼんやり眺める。
頭がボーっとする。
周りを見るが、クレイドルの俺の部屋じゃない。だけど、何故か、俺仕えの侍女二人がいる。
ここ、は?…………
「アヤ様?ちょっと、失礼いたしますわ」
アリッサが断り、俺の額に手を当ててきた。思いの外、ひんやり感じたその手に、ピクッと体が動く。
「まだかなり熱いですわね……」
熱い?
何の事と思ったが、ここにきて自分の体が熱を出してる事に思い至る。
ぼんやりするのも、妙に目の前がグラつくのもそのせいかぁ…………
アリッサの手が冷たいんじゃない。そう感じるほど、俺の体が熱いんだ。
頭も痛いし、何より体の節々が痛む。そろっと上げた手で自分の額を触る。
熱い……な。
閉じていた目を開け、途端にギクリと体が強張る。
俺の手首には、うっすらと赤く鬱血した跡があった。
固まる俺に気付かぬまま、ローレンが俺をそっと抱き起こし、背中にクッションを当てて果実水のカップを持たせてくれた。
「アヤ様…顔色が真っ青ですわ。飲めますか?お手伝いいたしますわ」
アリッサの言葉に、俺はフルフルと顔を横に振る。
やっぱり、現実。
ここは…………
カップを握る手に、ギュッと力がこもる。
ふぅっと小さく息を吐き、なるべくそれを視界に入れないようにして、ゆっくり果実水を飲んだ。蜂蜜の甘さと、冷たすぎないよう配慮されたそれは、痛む喉と体に優しく美味しかった。
ポツッと、果実水の表面に波紋ができる。
ポタ、ポタッ、と、次々落ちる雫。固く目を閉じ、漏れそうになる嗚咽を堪える。
肩を震わせて鼻を啜る俺に、ローレンが俺の手からカップをそっと外し、アリッサがクッションを戻し、手を添えて横にさせてくれる。
二人の視線が外れるよう背中を向ける形。
気付いてないはずないのに、気付かぬフリをしてくれる。二人の優しさに、そっと上掛けに潜り込み、声を殺して泣いた。
*
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いつの間にか眠っていたらしい。
うとうとと、緩く覚醒する。ふと枕元を見ると、果実水があり、喉が渇いていたので手を伸ばす。
痛みは引いたが、まだそれでも全快には程遠く、億劫に感じつつ、カップを取り上げる。
一口飲むと、程よく冷えたそれは、俺が好きなリンゴに似た味の果実水で、甘酸っぱくスッキリと喉を潤してくれる。
見渡すと、部屋は薄暗くシンとしていた。気配からしても夜っぽい。
アリッサとローレンはいない。
一人、寝台に居る。大人三人は楽々寝られるだろう、だだっ広いそこに俺一人だけ。
不意に寒さを感じて、毛布の中に包まる。
当たり前になりつつあった温もりが、今はどこにもない。
寒いなぁ……
それに…何だか、また…すごく、眠くなって……
瞼が重くなり、倒れるように寝台に横になる。
目を開けてられない。
急に襲った睡魔に逆らう事なく、俺はそのまま意識を手放した。
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