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第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編
3.一難去って……また二難?!③
しおりを挟む「失礼します……………」
入ってきたのは、お人形さんという表現がまさにピッタリな女の子。
赤い巻き毛に、同色の瞳。黄赤色のドレスに身を包んだ、炎のような美少女。
その美少女の後ろには、彼女よりかなり年上の青年。
暗めのシルバーブロンドで、結構、背が高い。
バルドと変わんないくらいかな?
伏せられていた瞳が現れ、俺は不覚にもドキッとした。
瞳はエメラルドより鮮やかなパロットグリーン。もの凄いイケメン。
それより……………………
俺を惹きつけたのは、青年の左目。
正確には、左目の側にある泣きボクロ。
な、何なんだろう…物凄く、エロい、、、
「失礼します。お祖母様、お邪魔してもよろしくて?」
ニコと笑う美少女。ちょっと吊り目でキツい印象を受ける。
サティ様を、お祖母様って呼ぶって事は…バルドと同じ孫に当たるのかな?
ちらっとサティ様を見ると、笑顔ではあるけど、困ったように微笑んでいる。
「構いませんよ。でも、急にどうしたの?」
「グレインバルド様の正妃様がこちらにおいでとか?ご挨拶は必要かと…」
笑顔で優雅に言ってるけど……何か、言葉にトゲを感じる。
ついと視線を寄越され目が合った。
キッと睨まれた。
言葉とは裏腹に、敵意満々。
正直、何でこんな敵視されてんのか分かんない。
「イザベル。こちらがそうよ。ご挨拶を」
「ご挨拶は必要かと」みたいなことを言ってたけど、俺なんかに自分から名乗るのは不本意だとばかりに不貞腐れている。
今、会ったばかりだけど……王侯貴族らしい王侯貴族のようだ。
眦キリキリさせ、不機嫌を隠そうともせず、イザベルが礼の形をとる。
「イザベル=ユーリェルと申します。お会いできて光栄ですわ、光の御君」
「アヤ=アルシディア、です。よろしく」
一応挨拶を返す。
握手とか必要かな?差し出した手は、フンと鼻で吐き捨てられ無視される。
いや、マジ意味分かんねぇんだけど?
引っ込めようとした手を、不意にやんわりと取られた。
「え?あ、あ、の……」
イザベルの後ろにいた青年。
柔らかく微笑んで、握られた手の甲に軽く口付けられた。
「なっ!!?」
「おっ、と!」
思わずバッと手を振り払う。両手を降参の形にし、軽く驚いてみせる青年を睨む。
俺の訝しむ視線に頓着せず、青年がニコッと微笑んだ。
「貴婦人にする礼はお気に召さなかったようで、失礼しました。ユリウス=ラス=フォーチュンと申します」
近くで見ても物凄いいい男だ。
この世界の男どもはどうして、こうも……
コンプレックス刺激されまくり、マジ凹む。
「俺……男、だから」
「はい、そうですね。でも、グレインバルド殿下の妃でもあらせられる。それに……」
「なっ!?ちょっ、とッッ?!」
「同じ男性とは思えないくらい、可愛らしい方なので」
振り払った手を再び取られ、指先に口付けられた。
ひぃにゃあぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!
む~~~~~~~~り~~~~~~~~!!
ゾクゾクっと、背中に走ったのは間違い無く悪寒。
気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!
バルド以外の男は、俺、やっぱりどうしても無理ッ!
「離して…離せッッ!!」
「お兄様!いつまで触ってるんですの?!(そんなの)離して差し上げたら?」
「ユリウス。皇太子の妃に不敬ですよ?お離しなさい」
二人(イザベルのは余計な言葉がついてそうだけど…)のおかげで、手が離されホッとする。
涙目で睨みつけるが、ユリウスはニコッと悪怯れなく微笑むだけ。
俺……こいつ、苦手かも。
さり気なく距離を置く俺に、ユリウスが何故か益々嬉しそうに微笑む。
「他に何か用があるのかしら?」
「あら、お祖母様。これから顔を合わせる事が常になるのですもの。お互い、どういう顔をしているのか知りたいというものでしょう?」
「イザベル……今、ちょうどそれを話そうとしていたのよ。私から話すからあなたは………………」
「貴妃ですわ」
「え??」
サティ様の言葉を遮り、イザベルが挑戦的に言い放つ。
ふふんと、さも得意そうにイザベルが口を開く。
「私、グレインバルド皇太子殿下の貴妃ですの。改めまして、お見知り置き下さいませ。アルシディア様?」
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