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第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編

3.一難去って……また二難?!①

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ナ・コルテスーー

クレイドルと国境を隔てた小国。元は、国家ではなく、貴族の中でも一番力がある家名が統治していただけの地で、その貴族の令嬢が、クレイドルに嫁ぎ、国として立国を許されてまだ幾ばくもない。



ナ・コルテスの屋敷の庭に、騎竜が降りる。詰めていた兵士が手綱をとり、バルドが先に地に降りた。
手を差し出され、介添えしてもらい俺も降りる。

「第二皇子皇太子殿下!!」

屋敷の中から、年嵩の男性が何人かの兵を引き連れ駆け出してきた。

「ファーマン。息災だったか?」
「恐れ入ります。おかげ様にて……それより、おいでとは伺っておりましたが、よもや、これほど急とは…」
「止むに止まれぬ、というやつだ。世話をかける」
「滅相もない!お出迎えが間に合わず、恐縮の至りにて」
「そんな大層なモノではない」
「大層な事にございますよ、殿下。……それよりも、殿下。そちらの方は、もしや…………」
「あぁ、アヤだ。女神の光の魔導。俺の大切な伴侶だ」
「おお!!貴方様が!!」

いきなりの事にギョッとなる俺を遮り、ファーマンと呼ばれた男性が、恭しく膝をつき頭を垂れる。

「ちょっ、なっ?!」
「稀有なる光の御君よ。ご尊顔を拝し、恐悦至極に存じあげまする」

や~~~~め~~~~て~~~~!!!
俺、多分この人の半分どころも生きてないよ?!
そんな、人生の先輩を傅かせるなんて!恐れ多くて、心臓が止まる!!

「ファーマン、とりあえず立て。アヤはそういうのに慣れてないし、困ってる」
「なれど……」
「あの、その…できれば、そういうの止めて、下さい」
「左様に、ございますか?」

渋々といった風だが、とりあえず立ってくれた。

「猊下と太后様は?」
「いらっしゃいます。中へどうぞ」

先導されるように中へ入る。
城ほどではないにしても、屋敷はかなり大きい。調度品も華美華美しくなく、上品な仕上がり。
一室の前に着くと、ファーマンがノックした。
応えがあり、中へと入る。
広く明るい部屋。ソファに座った女性。傍に立った男性がいた。

「猊下。いらっしゃいました」
「久方ぶりだ、グレインバルド」
「ご無沙汰しております、猊下……」
「堅苦しいな。久しぶりに会う祖父孫の会話ではないぞ?昔のように、爺ぃじと……「呼びません!!」

こめかみヒクつかせ、苦虫を噛み潰したような渋面で返すバルド。
うわぁ~…………バルドが困ってる。

「あなた、もうそのくらいで。まだ、挨拶の途中ですわよ?ねぇ?私の可愛い子犬ちゃん」

へ?????

意味が分からずキョトンとなる俺。
隣を見ると、バルドが遠い目をしてピキンと固まっている。

「太后様……勘弁してください」

脱力しきった声で返すバルドに、女性がコロコロと楽しそうに笑う。

「ホホホっ!今も昔も、あなたは私にとって可愛い子犬である事に変わりありませんよ?昔はそれこそ、子犬のようにあちこち飛び跳ね……「お祖母様ッ!!」

やめてくれと言わんばかりに言葉を遮るバルドに、女性が益々愉快そうに笑う。
すごい……バルドが焦ってる。
こんな慌てふためくのは初めて見た。

「グレインバルド、それに居るのが?」

男性の問いかけに、バルドが軽く咳払いする。
男性と女性の視線が俺へと向けられた。
負の感情等はない。ただ、二人とも物凄い好奇心丸出しのキラキラ目で見てくるから、変に緊張する。

「アヤと申します。アヤ。猊下と太后様に挨拶を」
「え、っと……アヤ=アルシディア、といい、、じゃなくって!も、申しま、あげますか?」

うわ~~~~ん!!緊張して噛みまくり!
変な言い回しになった~~~~!!!
バルド、額に手当てて溜め息ついてるし~~!

「ホホホホホホッ!!女神の光の魔導と聞いて、どんな鼻持ちならないのを連れて来るかと思ってましたが、なぁ~んて可愛らしいんでしょ!私は、サティナキア。グレインバルドのお祖母ちゃんよ。よろしくね?アヤちゃん」
「グレインバルド!でかした!!可愛らしい嫁だ!!今回、ここへ来た理由はよく分からんが、さっさと子をつくって曽孫を抱かせよ」
「「……………………」」

敵意向けられるよりかはいいけど………………軽い。
なんてフレンドリーな(元)王様とお后様だ。

「お祖父様、お祖母様……アヤは男です」
「「それが何か??」」
「………………………………」

二人の声がハモる。
いや、何だろうか?宰相たちみたいにとは言わなくても、やっぱり歓迎されないかもと身構えてたから……

「お祖父様。二人で話がしたいのですが、よろしいか?お祖母様、申し訳ありませんが、アヤをお願いしても?」
「良いわよ。アヤちゃん、私と別室でお茶しましょう?」
「え?あ、、の…」

戸惑う俺に、バルドが小さく頷く。
正直、知らない所でバルドと離れんのは不安だけど…
太后様、サティナキア様を見ると、ニッコリ微笑まれた。
うん、凄く優しそうな方だから大丈夫!
それに、歳はいってても相応の美女だし♪♡
サティナキア様に促され、部屋を出る。
直前に見たバルドが、かなり真剣な顔をしていたのを目端に捉えながら……………………ーーーーーーーー









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