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第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編

1.卵持参で逃避行?宰相様、いい加減にして下さい(怒)②

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身に付けていた上着やら、印章、帯剣用のベルトなどなどがバサバサと部屋の床に投げ捨てられていく。
あ、ちゃ~~…………かなり、荒れてるな~。
念の為、侍女と侍従は下がらせ、呼ぶまで来ないようにしておいて正解だ。

「バルド……?」

そっと背中に手を当てたら、弾かれたようにこちらを向き、そのままの勢いで抱き込まれた。
苦しいし、痛い……文句を言いかけてやめる。

「不甲斐ねぇな……」
「え?」

ぽつっと、囁くような言葉に聞き返す。
ハァッと深く息を吐き、ぎゅっと更に抱きすくめてきた。

「闇との闘いが終わって……やっと、お前と静かになれると思ったが……俺は自分の立場が恨めしい」
「バルド……」
「皇太子なんざ、クソッ喰らえだ!確かに、この地位で好きな奴は守れる。だが、それと同じくらいに悲しませる事もある」

吐き捨てるようなセリフに、何だか複雑だ。
皇太子の立場を糧に守られている。だけど、今回は皇太子の立場が仇に……

「貴妃……る、のか?」

皇太子の立場だけで考えたら、逆らえないよな?
おずおずと聞いたら、耳に口付けられ、耳たぶを唇で咥えられピクッと体が跳ねた。

「ッ!バ、、ルド?!」
「娶って欲しいのか?」
「んっ!ちょッ!!」

耳殻を舌で舐められ、耳の中に吐息と言葉が吹き込まれた。甘く、擽るようなそれに腰が砕けそうだ。
背中を抱いていたバルドの手が下がり、やんわりと包み込むように尻を支えられ、んッと詰まった吐息を吐くと顔が上向いた。
抜けるように澄んだ空のそれを彷彿とさせる瞳と、視線がかち合う。

「俺が、貴妃を娶っても平気か?」

ゆっくりとしたその言葉が、耳の奥底に静かに降りてくる。
貴妃を………娶る?
この瞳が別の誰かを映し、この唇が話しかけ、この手が誰かに触れ、この体を心を誰かと共有する?
考えたら頭の芯が冷たく冷えていく。
そんなこと………

「やだ…………そ、んなの…や」
「アヤ…」

口を突いて出た。
バルドが目を瞠ってから、柔らかく破顔した。唇が触れそうな場所まで近づく。
ふぅッと息を吹きかけられ、擽ったさに体を震わすと、小さく笑われた。

「いい子だ……」

甘く思考を溶かすような柔らかい声音にボーっとなる。ゆっくりと重なる唇に目を閉じた。
最初はちょっと触れるだけ。少しずつ角度が変わり、徐々に深くなっていく。
隙間から舌が入り込み、先端が触れ、ビクッと思わず引っ込めた。
バルドがクッと喉奥で笑い、ググッと深く差し込まれ容赦無く絡め取られる。
無意識に逃げ打った体を引き寄せられ、動きを封じられる。舐められ吸われ、甘噛みされて、力が入らず震えていた足がカクンと膝折れた。

「お、っと!」

咄嗟に抱きとめられ、転倒は免れたがかなり恥ずい。
毎度ながら、バルドのキス……威力が半端ねぇ。
立ち上がろうにも、完全腰砕けだ。

「だ、いじょう、ぶ…少し、したら立て、うわっ?!」

横抱きに抱き上げられ、目を丸くする俺に構わず、バルドがそのままソファに座る。

「バル、ド?」
「いらん」
「え?」
「貴妃は必要ない。俺のそばにいるのは、今もこれからも、アヤ。お前だけだ」

真っ直ぐに、真剣な目で言われ、カァーっと顔が一気に熱くなる。
何だこれ!?メチャクチャ恥ずかしいのに、顔がニヤけそう。

「無駄に男前すぎんだろ……恥ずかしいなぁ、もう」
「妻の不安をなくすのは夫の役目だ」
「……やめろって。返答に困る」

女じゃないのに、正妃だの妻だの……それで喜んでる俺もまた大概か?

いじめられた夫を慰めるのは、妻の役目だが?」
「へ?あっ!ちょ、ッと!?」

膝に座っていた体勢から、ぽすっとソファに仰向けに倒された。

「古狸どもに虐められた、憐れな夫だ。慰めないといけなくないか?」
「あのなぁ~……!何が”憐れな夫”だよ?!その気になりゃ、平気でやり返せるクセに!」
「お前がいたから我慢した。健気だろう?」
「自分で言ったら台無し……」
「慰めてくれ、奥さん…」
「言い方……」

なんか安っぽいドラマみたいだ。

「いけない事してるみてぇじゃん……」
「いけないこと??」
「拾わなくていいし……それより!こんな事してる場合じゃないだろ?あのふるだぬ…じゃなくて!宰相と大臣どうすんだよ?!」
「ちゃんと考えてある」

ニッと不敵に笑うバルドに、俺は目を瞬く。

「そ、なのか?どうするんだ?」
「あとで、な。そんな事より今は……」
「あっ!!ん……ぅ、ん」

口付けられ、唇を軽く舐められた。ふるっと肩を揺らす。触れるか触れないかの位置で囁かれ、俺は自然に目が潤むのを自覚した。

「いけない事…しようか?」








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