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番外編② 恋の調べ〜側にいる者たちに吹く風は〜

*素直になるにはどうしたらいいの?③

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「口付けはなさった事がある。というか、イアン様となさってるって事で、そのままでいいです。ただ、閨では気持ちを上げるために、舌絡ませたりとか深めなのして下さいね?」
「…………そ、いうものか?」
「そういうものです」

しれっと答えるエリオの横で、アヤは顔を伏せたままプルプルしていた。

「アヤ!シャッキリしなよ!」
「無理!つうか、何でそう平然としてられるんだよ?!恥ずかしくないのか?」
「何で?好きな人と睦み合うのって幸せじゃない。ついでに気持ち良くもなるし」
「うぅっ…ついてけない」
「はいはい!どうでもいいから、アヤもちゃんと協力して!」

再びシクシクしだしたアヤを放けたまま、エリオはさっさと話を進める。

「仲がいいんだな?アヤと……」
「はい?あぁ…まぁ。最初は最悪でしたけどね。セレスト様もご存知でしょう?」
「そうだったな。だから、何か変な感じだ」
「僕もですね。う~ん……でも、何というか…アヤって、憎めないし放っておけないし。何というか、構いたくなる、みたいな?」

複雑そうに、微苦笑するエリオに、セレストもまた苦笑。

「何だよ、それ!二人して!!」

ムスッとするアヤに、エリオもセレストも達観したように頷き合う。

「まぁ……女神の光は別として、アヤはアヤだからだろうなと…納得したというか、何というか」
「殿下を変えてくれた唯一の光、だからな」
「えぇ………」
「おい!二人とも…………」
「はい!無駄話はここまで!今は、セレスト様とイアン様の仲直りが先決!」
「うおいッ?!無視ぶっちぎりの置いてけぼりか?!」
「煩いよ、アヤは。殿下はさ、口付けのあと、どうして下さるの?」
「いきなりかよ………?」

エリオの問いに、アヤがしどろもどろになる。

「今はアヤのが一番参考になるでしょ。は~や~く!」
「どんなイジメだ?自分の体験人に懇切丁寧に話すって……嫌すぎるんだけど?」
 「セレスト様とイアン様の為だよ」
「うぅっ…分かったって。え、っと…口付けのぁと…首すじ……ら、胸も、と………………………………」
「アヤ、聞こえない」
「だからっ…………!~~~~~~~~~~!!!
ああぁぁぁああッッ、もうっ!!無理ッッ!!こんなの人それぞれだろ?!イアンは経験ないわけ?!あるんなら、イアンに任せろよ!!相手に甘えられて頼られて嫌な奴がいるか?いねぇだろ?」

ぷっつん切れたらしく、アヤが半ばキレ気味に言い放つ。
エリオが目をパチクリさせた後、ポンと手を打つ。

「ナルホドね。確かにそうかも。じゃあ、予備知識だけにして、イアン様に任せよう。セレスト様は、まったく知識ないのが怖いんですよね?ある程度知ってればどうです?」
「は?……あぁ、、まぁ、どうだろうか…?」
「とりあえず、こんな行為あんな行為がある、みたいな感じで話すんで。もし、どうしても無理そうなら別の方法で仲直り、考えましょうか?ただ……」
「あぁ……ただ?」
「今回無しにしたとしても、イアン様と付き合う以上、いずれは避けて通れないので、できれば覚悟決めた方が無難かと……」
「……………………」

エリオの言葉はもっともだ。セレストとて同じ性を持つ者。大なり小なりとはいえ、男が欲を抑えるのがどれ程大変かは分かる。

「イアン様…セレスト様の事、かなり大切になさってます。じゃなかったら、これほど待てませんよ?」
「俺もそう思う。イアンはさ、セレストが不安になる程、無茶苦茶な事しないと思うけど?」

アヤとエリオ二人から慰められ、セレストは苦笑した。年下の青年二人から励まされる。情けないの半分、擽ったいの半分に、セレストの肩から力が抜ける。

「分かった。逃げない…あいつと、その…ちゃんと、こ、いびとに…なる」
「かしこまりました。では……」
「エリオ」
「はい?」
「言葉。丁寧にしなくていい。使いにくいんだろう?アヤも、俺にはそんな喋りはしないし、お前も、俺を親しい者として見てくれるのなら、普通にしろ」
「……分かった。そうするよ」

一瞬、目を瞠ってから、エリオが嬉しそうに笑う。

            *
            *
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            *
            *

クレイドル帝都から離れた草地。林と湖がある。
開けた草原地に、剣のぶつかり合う音が響く。
ギィンッッと、一際鋭い音が響き、ギリギリと鍔迫り合う音がし動きが止む。
セレストとイアンは、互いに剣を合わせ睨み合う。暫し、睨み合いフッとお互いに笑み離れた。

「やっぱ、強いな。セレスト」
「技術面は、だろう?純粋に力だけなら、お前には勝てん」
「技術だけじゃねぇから、上に立っていられんだろ?謙遜けんそんすんなよ」
「イアン……」
「うん?」
「休み、とってまで俺と出かけたかったのは、剣の稽古これか?」
「まぁな。城じゃあ、お前と手合わせってなると、自分も自分もって奴らばっかになって、お前とゆっくり剣を交える事もできねぇだろ?」

ニッと笑うイアンの言葉は最もで、城の護衛兵たちにとって、セレストは憧れの的。強くて美人。キツい事をズバズバ言うが、基本、セレストは面倒見がいい。だから、好かれ慕われる。剣の稽古をとなれば、手合わせしたい者で溢れかえるし、セレストも性格上、律儀に応える。部下の腕の向上の為、となれば、イアンとて引くしかないしそうする。が、やはり、独り占めしたい気持ちも無きにしも非ず、で………………

「少し、休憩しよう」

互いに剣を収め、草地に座る。
風が髪を吹き上げ散る。乱れた髪を押さえるセレストを、イアンが静かに見つめた。

「何だよ?」
「ん~~、いやぁ、美人だなぁと思ってさ」
「ッッ!!!阿呆か?!いきなり、何だよ!?」
「ひでぇな。恋人が美人で嬉しいっつっただけだろ?」
「……………………」

言葉は茶化した感じだが、イアンの目は真剣で、セレストは一瞬、黙り込んだ。

「イア………………」
「セレスト…………」

セレストの呼びかけを遮り、イアンが口を開いた。



「何で……嘘ついてまで逃げたのに、戻った?」











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