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番外編② 恋の調べ〜側にいる者たちに吹く風は〜

*素直になるにはどうしたらいいの?②

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「イアン、を…?」

アヤに言われた言葉を反芻はんすう。近くにいるのが当たり前になっていた為、考えた事すらなくぽかんとなる。

「そういう事するの、無理なのか?無理なら無理って、言ってやらねぇと。期待させるだけさせて拒絶したら、イアンもセレストも傷付くぞ?」

お節介かもしんないけどとぽつぽつ言う。

「………中々、受け入れんのは勇気いるけどね。俺もそうだったし」
「そうなの?何でさ?殿下、素敵な方なのに!?」
「あのなぁ~!俺は元々、女の子が好きなの!男はノーサンキューなんだよ!」
「のー……?よく分かんないけど、男は駄目って事?変なの」
「いや…俺は普通………まぁ、この世界はそれが普通か。とにかく!セレストはどうなのかって事だよ。どうなんだ?」

話を振られ、セレストが口籠る。

「…イアンの事は、嫌いじゃ……ただ」
「ただ?」
「抱かれるっていうのが……」
「抱かれるのが嫌なんですか?セレスト様は、イアン様を抱きたい?」
「違う!恐ろしい事を言うな!!」

イアンはかなり体格がいい。がっしりした男前で、それを抱いてるところをうっかり想像してしまい、セレストとアヤはゲンナリした。

「もしかして……セレスト様、行為自体が分からない、とか?」
「えっ!?そうなのか??」

ピンときたらしいエリオの言葉に、アヤが驚きの声をあげた。
マジマジと見られ、顔が熱くなる。

「セレストって、もしかして…エッチ、、じゃなくて、閨事ねやごとした事ない。とか?」
「……………………そうだ」
「「えええぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~!?」」

フイと顔を背け、ぽそっと応えたセレストに、アヤとエリオが素っ頓狂な声をあげた。

「嘘だろッ?マジで!?」
「そんなに美人でいらっしゃるのに、貴重すぎます!」
「「今まで何してたんだよ?・ですか?」」
「煩い……仕事一辺倒に頑張ってたんだ!そんな事やってるヒマはないし、する気も起きなかったんだ!仕方ないだろ」

顔をほんのり染めたまま、若干むくれるセレストに、いち早くエリオが平常に戻り柔らかく笑う。

「僕、分かっちゃいました♡」
「分かったって?」
「ふふっ。セレスト様、可愛い♡」
「なっ!?」

柔らかく、且つ、少し揶揄い気味に笑うエリオに、アヤは?顔。セレストは狼狽えて目を白黒。

「お休み、反故にしたの…怖かったから。ですよね?」
「違………ッ!!」
「そうなのか?!えっ!それって、イアンとヤるかもしんないのが怖くてって事?!セレストも、怖いなんて思ったりすんの!?」

否定しようとしたセレストの言葉は、アヤの言葉に掻き消された。
しばらく、口をパクパクさせてから、セレストは諦めたように深く溜め息をついた。

「お前たち、面白がってないか?」
「えぇ~、そんな事ねぇけど?でも、まぁ……」
「うん。そうだねぇ~…」
「「ほんのちょっとだけ?」」

悪びれなく、悪戯っぽく笑いながらアヤとエリオが声を揃えた。
一瞬、目を眇め、セレストが再び嘆息。

「もう、いい。お前たちに弱いとこ見せた自分の責任だ」
「セレスト、怒った?」
「怒ってない。ただ、少し後悔しているがな」
「申し訳ありません。協力しますから、失礼をお許し下さい」
「協力?協力って、どうすんだ?エリオ」
「閨事だよ」
「「はっ??」」

アヤとセレストの?に、エリオがニッコリ笑う。

「要するに!閨でどんな事して、どういう事されるのか。した方がいい事とか、何やかや?僕とアヤとで教えて差し上げればいいんだよ。あっ!知識をだよ?さすがに、僕たちで抱いたり抱かれたりはないから」
「当たり前じゃん!だけど、知識をって……まさか、実際、どんな事されるのかとか…された事やした事ある事話すのか?」
「そうだよ。僕も、まぁ、それなりに?あるし……アヤは当然でしょ?殿下との事、話して差し上げればいいんだよ」
「はぁ?!ヤダよ!!」
「何?アヤって冷たいね?セレスト様とイアン様。仲直りさせて差し上げたいと思わないの?」

エリオの言葉に、アヤが反論できずウッと言葉を詰まらす。

「いや、エリオ?俺は、別にそこまでは……」
「セレスト様!イアン様と仲直りしたくないのですか?」
「え?……あ、あぁ、まぁ…したい、が」
「じゃ、決まりですね。アヤも、いいよね?何とか今日中に仲直りさせるよ?」
「うぅっ…分かったよ」

            *
            *
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            *

お茶を淹れ直し、改めて。

「セレスト様。まずは、確認しますけど。どこまで知ってます?」
「…………言うのか?」
「当然です。じゃなきゃ、何をどうお教えするか変わってくるじゃないですか」
「………………………」

アヤを見るが、アヤはエリオに任せるようで、軽く肩を竦めるのみだ。
ここまでくれば、もう恥じても仕方ないと腹をくくり、セレストは口を開く。

「口付けして、体中を撫で回されて撫で回して、終いは尻に股間のモノを入れる!以上だ!!」
「ぶーーーーーーーーッッッ!!!ゴホッ!え、っほ!!セ、セレストっ!!」

お茶を飲みながら聞いていたアヤが、お茶を思いきり噴き出し咳き込む。

「何だ?何か間違ってるか?」
「間違ってるとか、ど、とかじゃ、、くて!」
「間違ってないですけど……穴ぼこだらけですね」
「そ、ゆ問題じゃなひ…もう、やだ…この世界の奴ら。俺のメンタル、ゴリゴリ削るんじゃねぇよ」

テーブルに突っ伏し、シクシクしだすアヤ。とりあえず、今は放っときますというエリオに、セレストはちらっと気にしつつ、視線を戻した。








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