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番外編② 恋の調べ

*プレゼントは何、贈る?⑤

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女神の光お前が世界に戻るまで…俺は、何もかもどうでもよくなってた。荒れてた。荒んでたな…
この世界の者は、全て魔導を持つ。民も貴族も、皆。大なり小なりな。お前も知ってるだろうが、光以外の魔導は、光の魔導を持つ者に惹かれる。それはさがだ。とりわけ、俺たち、女神の魔導は”女神の枷”を持つ。故に、他の魔導持ちより激しく感応してしまう。真の光が失われても、女神の力が全く消えたわけじゃねぇ。だから、多くはなくとも、光の魔導を持つ者は生まれる。俺も例に漏れず、その者たちに惹かれては、落胆し。絶望し…の繰り返しだ。そんなもん何年も続けてみろ。どうなるかは分かるだろ?」

言葉が出ない。
女神の枷って……改めて聞いてみると、重すぎる。女神は、を愛し守らせる為、何があっても逃げていかないよう施したモノだと言っていたが、正に
”枷”だ。無条件に守るよう、魂の奥の奥まで雁字搦めに縛り付ける……

惹かれても、惹かれても、相手は真に求める者ではない。それでも、惹かれてしまう。そう仕向ける、そんなモノを抱えて……

「十の頃は、当たり散らしては滅茶苦茶やり回った。優しくする者も、本気で心配する者もいたが、全く顧みず…踏み躙った。とんでもねぇならず者、皇子で皇太子だってのが、呆れるほどのな。俺のそんな状況に巻き込まれた奴、お前も見て知ってるだろう?」
「リュシ……だっけ?」
「あぁ…あいつだけじゃねぇ。顔や名前すら覚えてない奴もいる。そんなんだ。誕生日なんぞ、頭にあるわけがねぇ」
「……………………」
「な?気分悪ぃ話だろ?」

俺が、来る前の話だ。
確かに、気分は……正直、良くない。本気じゃなかったとしても、バルドとそういう関係になった者が不特定多数。
だけど……面白くないけど。

「バルド…そっち、行っていい?」
「うん?」

返事を待たずにバルドの方へ。

「どうした?」

問いには答えず、側に立つ。
いきなりだから、もしかしたら引かれないかな?
ドキドキしつつも、思い切ってバルドの膝に横向きに座る。

「おっ、と!何だ?えらく、積極的だな?」
「いや、か?」
「まさか……そんなわけねぇだろ」

一瞬、目を瞠ってから、俺の問いにニッと面白そうに笑う。
腰に両手を回され支えられる。

「で?どうした?今の話聞いて、気分害したかと思ったが、そうじゃなさそうだ」
「バルドのせいじゃないじゃん……」
「アヤ……」
「あ!もちろん、だからって誰彼構わずそんな扱いは良くねぇよ?だけど!だけど……さ。女神が、一番悪いんじゃん。女神の魔導だって、人なんだから…傷つかないわけじゃない。バルドを傷つけた、女神が悪い」

言い訳だ。誤魔化しなのは分かってる。それを理由にして、誰かを傷つけていいわけじゃないのは分かってる。だけど………
やり場のない焦燥と怒り、悲嘆を、どうする事もできなかったのは分かる。分かるから……責められない。

「随分、乱暴な結論だな?」
「悪いかよ?俺だって、女神には腹立ってるから、別にいいだろ?!バルドは、悪いけど悪くない!」
「どっちだ?」
「どっちも!だけど、どっちでもない!!」
「だから……」

煩いとばかりに、言葉途中に、バルドの口を自分のそれで塞ぐ。
不意打ちに、一瞬、目を見開いてから、口付けの主導権はすぐにバルドに奪われる。
深く繋がり、腰と背中に腕がまわり引き寄せられる。ゼロ距離で上から覆い被さるように、噛みつかれるような口付けに呼吸さえ奪われた。

「ん!ん…、ッ、んゥぅうッ!」
「は…!アヤ……舌、寄越せ」
「バ、ルド……は、ぷッ!!」

歯列を舐め上げられ、口付けの合間にバルドから告げられ、擽ったさと息苦しさに喘ぎ、僅か開いた口をこじ開けられ、舌を絡め取られた。
腰からのゾクゾク感が止まらず、ビクンと背中が軽く反る。
水音を立てて、舌が離れる。

「煽るな……」
「あ、煽っ……な、い」

互いのもので濡れた唇を、指でなぞられる。

「誕生日……祝って、くれるんだろ?」
「…………」
「用意したのは、葡萄酒だけ…か?」

背中側の結びのリボンを指が弄る。
うぅっ…やっぱり恥ずかしい、この服!
バルド、服の意図ぜってぇ気づいてる!

「食事が……」
「後で、な」

どうあっても逃す気はないらしい。逃げるつもりはないけど……
肩に手をかける。

「…………誕生日……おめ、で、と」

震える声で一言。
弄られてたリボンが、シュルリと解かれる。体が横抱きにされ、ふわりと浮き上がり、慌てて首に腕を回した。

「…もう一つの贈り物を貰おうか?向こうで、な?」








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