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番外編② 恋の調べ

*プレゼントは何、贈る?④

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「な、なぁ……これ、ちょっと」

侍女ズとエリオに視線を向け、控え目に抗議。

「う~ん、まぁ、いいんじゃない?ちょっと、リボンが多いから、くどいかもしれないけど。殿下なら、上手になさるだろう」
「「がんばりましたわ!!」」
「……………………」

俺の格好。ちらっと見下ろし、溜め息をつく。

うぅっ…恥ずかしい。

いや、別に見るも恥ずいエッロい服とか、フリフリレースの服とかではない。
ただ…………

「なんで、やたらとあちこちリボンで結ばれてんだよ?」

なんかやたらと結びの多い服だ。袖もヒラッとして、シルエットが女の子っぽい。ってかこれ、絶対女の子モノだろ!?
少し伸びた横髪を綺麗に編み込まれ、リボンで結ばれサイドに撫で付けるように流されて……

「唇に、可愛らしくお色をのせたかったのですが、拒まれてしまって…」
「当たり前だろ!?俺、男だぞ?!」

リップなんぞ塗られてたまるか!

「ったく!何で、こんな格好…」
「いいじゃない。似合ってんだから」
「はぁ~~??こんなの、似合ってなんか……」
「「お似合いです!お可愛らしいですわ~♡」」

侍女ズに力説され、もはや言う気が失せる。アリッサもローレンも嬉しそうだ。
二人とも、俺の性別分かってるよな?
何か、不安になるんだけど……

「はい。じゃ、これ持って!」

エリオから渡されたのは、綺麗に飾られた葡萄酒のクリスタル瓶。
城の貯蔵庫から頂いた物。何か、試験の不正みたいで気が引ける。

「手段選んでる場合?殿下がお気に召したら、それで全て良し!でしょう?」
「そう、だけどさ……でも」
「いいから!ごちゃごちゃ言わずに、さっさと行く!お部屋に用意は整えて、殿下もお呼びしてあるから」

部屋から追い出され、仕方なくバルドの部屋へ向かう。

            *
            *
            *
            *
            *

部屋の扉をそっと開けた。

「い、ない……良かった。まだ、来てないんだ」

部屋の主人は不在で、ちょっとホッとする。
料理やら果物やら、食事するための用意が整えられた部屋に先に待ってられたら、さすがに入りにくい。
綺麗に準備の施されたテーブルに椅子が二脚。片方に座り、ホゥッと息を吐く。

「何だろ……いつもと同じ場所なのに、すっげぇ緊張する」

ソワソワして落ち着かない。やたら、喉が乾く。
葡萄酒の瓶に目が行き、フルフルと首を振る。
贈り物なのに、受け取る人より先に、俺が口つけてどうするよ!
テーブルの上に少し黄見がかった乳白色の飲み物があり、匂いを嗅いでみる。

「林檎っぽい?」

ジュースかな?

グラスに少し移し飲んでみた。甘くてちょっと酸味があり、気泡性のあるものなのか、シュワッと炭酸を感じた。
味はまんま、林檎の炭酸ジュース。だけど、感じたことのないフワッとした酩酊感があって………

「グローシュって果実の酒だ。甘くて美味いだろう?」
「わっ!?バ、ルド!」

首捻りながら、考え事して飲んでた為、気づかなかった。

「今日は、部屋に食事が用意してあるって言われてたが…」
「あ!えっ、と……明日、誕生日って聞いて…その…用意、してもらった」
「あぁ…そう言やそうか。そんなもん、久しく忘れてたな」
「そ、なのか?誕生日、嬉しくない?迷惑、か?」

滅多にいないとは思うが、誰もかれもが誕生日を嬉しがるわけではないだろう。
迷惑だったかと焦る。
フッと、困ったように笑、バルドが椅子に座る。

「せっかくだから、食事にするか?」
「あ……う、ん」

言いたくないのか?
上手くはぐらかされた感があるが、とりあえず座る。

「そ、だ。これ!えっ、と…好きだって聞いて」

葡萄酒の瓶を渡す。

「あぁ……」

少し、照れたように、それを誤魔化すように素っ気なく一言。

「バルド、聞いていい?その……さ。さっきの……」
「うん?…あぁ、誕生日を忘れてた件か?」
「や、ならいいけどさ………」

躊躇いがちに口を開く。
今更だが、セレストやエリオの言葉がのしかかる。

俺、バルドの事、ほんと何も知らなすぎる。

「聞いて楽しい話じゃねぇが?」
「いいよ…」
「お前には、不愉快な話も出てくるぞ?」
「大丈夫…」

バルドの事が、知りたい…………………………………







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