319 / 465
第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章
8.女神の腕(かいな)②
しおりを挟む『仕方ないわね…手のかかる子達だこと』
声が聞こえた瞬間、周りが白く、真っ白な空間に切り変わる。
「アストラル…」
バルドもギルも、ラゼルも居らず、居るのは俺一人。
「な、んで…?」
『私が場を切り取ったからよ』
後ろから、再び聞こえた声に振り向く。
見知らぬ女の子が、宙に浮かんでいた。真珠色の髪に、右目は湖面の蒼、左目はアメジストの瞳の、七~八歳くらいの……
「だ、れだ?」
『はじめましてね?もっとも、魂の記憶では、私の事は刻まれているのでしょうけど、この姿でそうなるのは仕方ない事ね。私はアウフィリア。世界創造主の一人。花と水の守護女神。あなた達、魔導の原点、魔導の母よ』
女神!!
ニコと無邪気に微笑む女神に、俺は言葉を失い目を見開く。
母って……だって、どう見ても…
『見た目と実際は比例しないわよ?この姿は今、お気に入りなだけ。あ!女に歳は聞かないでね?人の女性はこう言うんでしょ?』
クスクス笑う女神に、俺はまだ言葉が出てこず。
『だいぶ、混乱してるわね?大丈夫かしら?』
「え、っと…深く、考えない事にする…」
『それが賢明ね』
ニッコリ笑い、フワリと目の前まで移動してきた女神に、俺は戸惑いながらも答えた。
しかし、問題は何で今アストラルに?
『だから、私が切り取ったのよ』
「切り取った?」
先程も思ったが、どうやら考えている事は女神に筒抜けらしい。
首を傾げると、女神が小さく頷く。
『神、女神は人の理に不可侵よ』
「らしいな…聞いてる」
『だから、私も理に関わるつもりはなかったのだけどね~……私は一度、間違えてしまっているから』
困ったように微笑み、溜息をつく。
女神が一度間違えた事?
『そうよ。あなた達、魔導を初めて生み出した時に…一度、ね』
それって………
『分かった?ラゼルとの口論で、神の台座を創り出してしまった事。私とラゼルの争いにあなた達を巻き込んだ事。光の魔導をこの世界から消し、ギルゼルトをあんなにしてしまった事。あら、一度じゃなかったわね』
クスクス笑う女神に、俺は盛大に呆れて顔をしかめる。
「ラゼルと喧嘩って……何で、あんなモン創ったんだ?迷惑以外ナニモノでもないだろ?」
『神々の酒宴の席で口論になってね~…まぁ、酒の勢いってやつよ』
「…………………………」
開いた口が塞がらない。酒の勢いって…
どんだけ暇と力持て余してるか知らないが、こっちは完全にとばっちりだ!
『私は、まぁ、そんなわけで?あなた達の理を、盛大に捻じ曲げてしまってるから…今回ばかりは黙ってようと思ったのだけど…さすがに、魔導殺されかけて黙ってる親はいないわ。それに、あまりに力の差がありすぎて不公平でしょ?あいつには、私も頭きてるから、そろそろ目の前から退場してもらわないとね』
「助けに入るなら、もっと早く入ってくんない?俺たち、かなりズタボロなんだけど?」
『しょうがないでしょ?私は他の神達と違って、いろいろ制約がかかってんの!おいそれと自由には動けないのよ!』
初めて会った女神だが…何となく、分かる。制限かけなきゃ、いろいろやらかすから、おそらく、女神より高位の神に禁止を言い渡されてんだろう。それくらい、やる事なす事、滅茶苦茶な空気がプンプンだ。
『失礼な子ね!アルシディアとはまったく似てないったら!』
「当たり前だろ?俺は俺。アルシディアじゃない」
『生意気な子。アルシディアは私に口答えなんかしなかったわよ?……まぁ、もっとも。あなただから…』
「???」
『何でもないわ。さて、残念だけど、私が力を貸せるのは一回よ。今回だけの魔導。この先も使うには、あまりに危険だから…この一回限り使ったら、記憶から消させてもらうわね?いいかしら?』
「ラゼルを……殺すのか?」
不安になり聞くと、ゆっくり首を振られる。
『それは、ないわ。できないし、むしろ、私がさせないわ』
「どういうこと?」
『あなたもさっき聞いたでしょ?』
「さっき?さっきって………あ!」
思い当たり、小さく声を発した俺に、女神が頷く。
『神殺し』
2
お気に入りに追加
2,208
あなたにおすすめの小説
俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~
アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。
これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。
※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。
初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。
投稿頻度は亀並です。
愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと
糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。
前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!?
「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」
激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。
注※微エロ、エロエロ
・初めはそんなエロくないです。
・初心者注意
・ちょいちょい細かな訂正入ります。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません
ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。
俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。
舞台は、魔法学園。
悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。
なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…?
※旧タイトル『愛と死ね』
転生したら第13皇子⁈〜構ってくれなくて結構です!蚊帳の外にいさせて下さい!!〜
白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)
BL
『君の死は手違いです』
光の後、体に走った衝撃。
次に目が覚めたら白い部屋。目の前には女の子とも男の子ともとれる子供が1人。
『この世界では生き返らせてあげられないから、別の世界で命をあげるけど、どうする?』
そんなの、そうしてもらうに決まってる!
無事に命を繋げたはいいけど、何かおかしくない?
周りに集まるの、みんな男なんですけど⁈
頼むから寄らないで、ほっといて!!
せっかく生き繋いだんだから、俺は地味に平和に暮らしたいだけなんです!
主人公は至って普通。容姿も普通(?)地位は一国の第13番目の皇子。平凡を愛する事なかれ主義。
主人公以外(女の子も!)みんな美形で美人。
誰も彼もが、普通(?)な皇子様をほっとかない!!?
*性描写ありには☆マークつきます。
*複数有り。苦手な方はご注意を!
明日もいい日でありますように。~異世界で新しい家族ができました~
葉山 登木
BL
『明日もいい日でありますように。~異世界で新しい家族ができました~』
書籍化することが決定致しました!
アース・スター ルナ様より、今秋2024年10月1日(火)に発売予定です。
Webで更新している内容に手を加え、書き下ろしにユイトの母親視点のお話を収録しております。
これも、作品を応援してくれている皆様のおかげです。
更新頻度はまた下がっていて申し訳ないのですが、ユイトたちの物語を書き切るまでお付き合い頂ければ幸いです。
これからもどうぞ、よろしくお願い致します。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
祖母と母が亡くなり、別居中の父に引き取られた幼い三兄弟。
暴力に怯えながら暮らす毎日に疲れ果てた頃、アパートが土砂に飲み込まれ…。
目を覚ませばそこは日本ではなく剣や魔法が溢れる異世界で…!?
強面だけど優しい冒険者のトーマスに引き取られ、三兄弟は村の人や冒険者たちに見守られながらたくさんの愛情を受け成長していきます。
主人公の長男ユイト(14)に、しっかりしてきた次男ハルト(5)と甘えん坊の三男ユウマ(3)の、のんびり・ほのぼのな日常を紡いでいけるお話を考えています。
※ボーイズラブ・ガールズラブ要素を含める展開は98話からです。
苦手な方はご注意ください。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
18禁BLゲームの攻略対象の弟に転生したら皆(攻略対象)が追ってくるんですが?!
雪白 ひな
BL
ごく普通?の男子高校生がBLゲームに転生しちゃいます!
誤字がありましたらコメントで教えて下さると嬉しいです!!
感想書いてくれたら嬉しいです✨やる気スイッチにします!
それと少しでもこの作品を面白いなど思ってくれたら、拡散もお願いします!!
投稿する日にちは2日に1話にします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる