1 / 13
1.たとえそれが、、、①
しおりを挟む何時からだったろう?
何時から、、、自分の瞳は………………ーーーーーー
*
*
*
*
*
「きゃあああーーーーーーーーーーーーー!!!」
あがった悲鳴に思わず苦笑だ。
つい先だってもこんな事あったなぁなどと、呑気な事を考えていると、目の前にふと影が落ちた。
顔を上げると、手が頬に当てられる。
ふんわりと優しいその手は大きくーーーーーゴツい。
「いやーーーーーーーッッ!!なんなのよーーーーー!これぇーーーーー⁉︎」
あがる悲鳴はだが低くて野太く、僕の目の前に立ち塞がる体もがっしり逞しい。
引き締まり逞しい筋肉に覆われた大柄な体。
その一見引いてしまいそうなほど立派な体の見かけによらず、目の前の人は優しく繊細だ。
「やだやだ!腫れてるじゃないのよーーーーー!!」
目の前の、どこから見ても筋肉ムキムキの大柄な男の口からあがる女性っぽい話し方。
最初はかなり面食らい戸惑ったが、今はもう慣れた。
「ルース様。あの、、大丈夫ですから」
大柄な男、ルースが、僕の言葉に顔を顰める。
「どこが大丈夫なの⁉︎こっっっっっっっんなに!真っ赤に腫らして!!やったのね⁈あいつでしょ⁈あンの、クソ親父!!こっっっっんな、かぁわいい顔になにしてくれてんのよっっっっ!!」
僕の頬に負けず劣らず、顔を怒りで真っ赤に上気させ、ルースが吠える。
叩かれた頬に、痛まし気な視線を向けられ小さく苦笑。
ルースが言うところのクソ親父とは、僕の父親の事。事実だけど言わない。
あの人の話はしたくない。だから、それには触れないように、やんわり話を逸らしていく。
「ちゃんとすぐ冷やしましたから……痛みもさほど」
「そういう問題じゃないでしょ⁈体の痛みは引いたって、エリィの心はそうじゃないでしょ!」
違うのよーッ!っと更に吠えるルースに、実際はまだジンジンして火照っていた熱と痛みが和らぐ。
自分を取り巻く環境が変わった。
自分の周りにいる人たちも変わった。
変化にも慣れた。
でも………
まだ、これには慣れない。
自分へ純粋に向けられる優しく温かい感情。
嬉しくて、体の中がふわふわしてくる。
向けられ慣れてないそれに、どうしていいか分からず毎回戸惑う。
「あああああっっっ!あたしの可愛いエリィの顔がぁ!!」
「ルース様……」
「うるさいぞ?馬鹿弟子が。エリオはお前のものではない!正確には儂の侍従じゃ!」
「お師様!ズルいわ!これ見よがしに強調しないで下さい!あたしだって、エリィみたいな子が侍従になるって知ってたら立候補したのに~~~!!」
「お前は不真面目すぎるんじゃ!真面目に侍従を探そうともせず、面倒くさがるから好機を逃す。儂は知らん!」
「悔しいーーーーーーーーーーー!!」
顔を顰めながら、魔導士長のファンガス様が割り込み、ルースがキーキー喚く。
「もう、いいですーーーーーっだ!ささっ、エリィ。意地悪なお師様は放っておいて、その可哀想な頬っぺ冷やしましょ?」
「放っておいてとはなんじゃ!儂は師じゃぞ⁈まったく!可愛くない弟子じゃ!!」
今の僕はファンガス様の侍従。
これでも、下級ではあるが貴族の出で、ここへ来る前は宰相閣下の侍従だった。
紆余曲折の上、今はここにいるのだが……
トクンと小さく波打った胸の奥に、ハッと息を呑む。
「エリィ、どうかした?やっぱり痛むの⁈」
「あ……いえ!違います、大丈夫です!」
慌てて頭を振り、ふと息を吐く。
ふいにズキッと痛んだ別の痛みに、そろとルースから離れる。
「ファンガス様。書室へ行ってまいります」
「母御の命日参りから戻ったばかり…あまりな仕打ちを受けておるのだし、無理は要らぬぞ?」
「そうよぉ!だから、行くことないって言ったのよ?行って大丈夫なのかって、あたし言ったじゃない!」
2人から言われたが、曖昧に誤魔化して部屋を出た。
扉を背にして深く息を吐く。
これ以上自分の事で2人に心配をかけたくない。
ズキッと、先程より強く痛みだしたそれに顔を顰める。
やはり早めに痛み止めを飲んでおけばよかったと考えつつ、歩み出す。
書室へ行く前に自室へ寄り、飲んでバレないようにしようと考え込んでいた体が、手首を掴まれ後ろへと強く引っ張られた。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません
ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。
俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。
舞台は、魔法学園。
悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。
なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…?
※旧タイトル『愛と死ね』
体調が悪いから病院に行ったら兄貴がいて、プレイをすることになっちゃうお話。
うさぎ2
BL
創作BLとなっております!
苦手な方は、回れ右をお勧めします!
____________
ユニバースで兄弟物で初物です!!
弟が体調不良になり、病院に行ったら兄貴が医者になっていて、弟とプレイしないといけない状況です!!
↓
↓
____________
プレイ中………
攻め「goodboy(良い子だね♡)」
受け「〜〜〜/////あっ♡♡♡イッちゃッ…♡♡////あ""〜〜〜/////♡」
ピュルル〜〜………ビク ビク
受け「えっ?!嘘………。。」
えっ?!兄貴のコマンドでしかも……
『イク』ッとか………?!
久しぶりだからか……腰に力が入らなッ……こんな簡単なコマンドでっ!?!?
「陛下を誑かしたのはこの身体か!」って言われてエッチなポーズを沢山とらされました。もうお婿にいけないから責任を取って下さい!
うずみどり
BL
突発的に異世界転移をした男子高校生がバスローブ姿で縛られて近衛隊長にあちこち弄られていいようにされちゃう話です。
ほぼ全編エロで言葉責め。
無理矢理だけど痛くはないです。
モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています
奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。
生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』
ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。
顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…?
自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。
※エロは後半です
※ムーンライトノベルにも掲載しています
弟の代わりに勘当されて、売られて、幼なじみの愛人になりました。
イセヤ レキ
BL
題名の通りです。
世の中を知らない真面目なボンボン主人公が、俺様幼なじみに取って食われてあっさりご主人様と認める話。
自信家の幼なじみ×真面目な美形(元ノンケ)
※功に元妻、子供あり。
※他サイトにも掲載しています。
調教/監禁/執着/無理矢理/拘束/甘々/腹黒/快楽堕ち/メス堕ち/シリアス/ほのぼの
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる