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第2章 タイムリミットは20歳なんて聞いてない!
1.やめて!俺の為に闘うなんて〜(byヒロイン風)…なんて、なるかいっ!!①
しおりを挟む顔色をなくしたリリヤを介抱しようとしたが固辞され、結局、御前演武会場に戻ってきてしまった。
まぁ、王族である以上拒否権はないらしいし、戻るしかないのだが、できればこんな茶番は丁重にお断りしたい。
周りをチラ見してみるが、相も変わらずどいつもこいつも試合なんぞ見ちゃいねぇ。お喋りに夢中な奴ばっかだ。
なんでわざわざこんなの見ながらやる必要があるのか、さっぱり理解できない。
ただただお喋りしたいだけなら、どっかで茶でも飲みながらすればいいだけだと思うのは俺だけか?
「皆んなやる事ないわけ?よっぽどヒマなんだな」
「カナデ様……また、お声が漏れてます」
リリヤに窘められるが、最早、隠す事もなく大仰に溜め息をついてやる。
どうせ聞いてやしない。まぁ、この際聞かれて、関わりたくないと放っといてくれるんならありがたい。
物言いたげにされるが、改める気は更々なかった。
退屈なものは退屈なのだ。
給仕に回ってきた侍従に飲み物が入ったカップを差し出されるが、軽く手を振って断わる。
先程も飲んだばかり。喉は乾いてない。
それに………
「どうせ、果汁だし……ガキじゃねぇんだから、ジュースばっか要らねーよ」
「カナデ様?」
「………なんでもない」
おっと!危ない。ついつい、飲まなきゃやってらんねぇって気持ちが声に出たようだ。
向こうじゃ、一応成人はしてたからついクセが……
「そういえば……俺って歳幾つだ?」
「明日で18の御歳とおなりです」
ボソッと呟いたのに、リリヤが応えてくれた。
18……18、、ね。
「分かっておいでですか?カナデ様」
「は?何が?誕生日って事じゃん。そんくらい、分かるって」
そう言や、カレスが言ってたような。18ってこの事か…
「分かっていらっしゃいませんわ!18といえば…」
言い募ろうとしたリリヤの声が、突如湧いた歓声に掻き消された。
「うわ⁉︎な、何?」
特に黄色い歓声が上がってかなりの喧しさだ。
闘技台を見ると、先程までのダラけた雰囲気が一変していた。
蜂蜜を溶かし込んだような金髪に、ライラックの瞳の美丈夫と、見知った青年が対峙しているのが目に映る。
「ユーグ?と、、、、、あれ、誰?」
「近衛騎士副隊長、ハルヴィル=ホーク様です。ユーグ様が補佐なさる上官様ですわ」
副官補佐って言ってたか?
あのイケメンが、上司とやららしい。
ユーグと対峙するイケメン、ハルヴィルがニコリと柔らかな笑みを浮かべた途端、キャーーーーーーーーーーッ!っと、まさに絹を裂くとはこの事だとばかりな歓声があがる。
み、耳が痛い!
イケメンパワー恐るべし。世界が変われど、イケメンを前にしたら、お嬢様だろうとお姫様だろうと、一般ピーポの女子だろうとあげる喜声(?)は変わらないようだ。
それにしても……
「また顔面偏差値馬鹿高野郎出現かよ…」
またまた現れたそれにも、早口言葉みたいな漢字の長い羅列にもうんざりだ。
この世界、本当にそんなのばっかり。
今のところ、美人美女より、美男美丈夫イケメン滅べな野郎の出現率ばっか高い。
無駄にキラキラしくって眩しくて嫌になる。
「近衛騎士は見目麗しい方々ばかりです。もちろん、実力もおありですが……筆頭は、あちらのホーク様と、隊長のシルヴィウス様で二分なさってます」
あんなのと似たのがまだ居んのか⁈
うわぁ……空気モブ希望の俺が、近付きたくない奴の宝庫とやらがあるらしい。
ユーグの上司らしいし、奴に極力近づかなきゃOKか?
ややうんざりしながら見ていると、ユーグと目が合った。剣先が下に向くように持ち直した剣の柄に、おもむろに軽く口づけ、握り直した剣を真横になるよう俺の方へと向けてきた。
意味が分からず首を傾げる俺とは対照的に、軽いどよめきと黄色い悲鳴があがる。
「なんだ、あれ?」
向けられた(おそらく何かのサイン)意味も分からないし、周りの妙にザワザワした空気も意味不明。
こちらを見て、あからさまにヒソヒソしてる奴までいて、正直居心地悪い。
「ユーグ様……なんてことをなさるんですの」
「リリヤ?さっきのあれ、ユーグ何したわけ?」
分からないなら聞けばいい。
リリヤに振ると、苦虫を何個も何個も噛み潰したかのような渋面で、リリヤが溜め息をつく。
「あれは、この御前演武において、勝ちを取りに行く者の宣言ですわ」
「勝ち?」
ユーグが勝ちに行くのと、その宣言とやらを俺に向ける意味とはこれいかに?
全くもってピンときてない俺に、リリヤが呆れ半分に目を眇めた。
「カナデ様。御前演武に勝った一等勝者のお話、覚えていらっしゃいますか?」
「勝ったら、望むものが貰えるってやつ?あんま、大それたもんは駄目だけど、大概のものは………」
って、、、、、そこまで言ってハタとなる。
「え?ちょ、え?待っ、て……………ま、さか、あいつ!」
考えたくないが、物凄く怖い考えに至り、恐る恐る自分を指差す。
どうか間違ってますようにと、心で拝みまくる俺の目に、額を手で押さえ、リリヤが頷きながら深く溜め息を吐く姿が映った。
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