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第1章 とにかく普通と平穏を 騒がしいのはお断り!

13.三つ巴(?)はお断り!!

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「戯れあってるとこ悪いけど、いいか?」

俺とカレスがわちゃわちゃ攻防を繰り広げる中声がかかる。
皇子とは思えんくらいもの凄い力で顔を近づけてくるそれを手で押し返し阻みつつ、何とか顔を巡らす。
戯れなんて可愛いモンじゃねぇ!っと、文句の一つも言いたいが、実際はそれどころじゃない。
何度も言うが、皇子ってこんなたくましいものか?
ゼェゼェ、ハァハァなる俺とは裏腹、声の主、ユーグがゆったりと腕組みしこちらを見てきた。

飼い主のお許しが出たんでな。こっから、本気出すから覚悟してくれ」
「は?な、に?お許し?本気??」

言われた意味がすぐに理解できない。

「ユーグ、何の……ッ、わッっ⁈」

カレスの顔を押し返す為に当てていた手が、手首を掴まれ引き剥がされた。そのまま、視界がぐるりと周り、目を白黒させる間に、カレスの腕に抱きとめられる形で止まる。

「私の目の前で口説くなんていい度胸をしているね」
「魅力的だから口説いたまでだ」
「カナデは私の義弟で一応、皇子なんだけど?」
「一応ってなんだよ⁉︎」
「だから?ほっぽらかされてる皇子様口説くのに、あんたの許可がいんのか?」
「他はどうか知らないけど、私は軽視できかねるね」

無視か⁈
両者とも俺を完全無視。2人で会話をどんどん進めてく。

「ちょっ、だから!俺を……」
「義弟、ね?あんたの態度は、仮にも弟に向けられるそれじゃないな」
「お前も、言葉も態度も不敬極まるけど、頭は悪くないようだ」
「おい!おいってば!!」

1人喚くが、相も変わらず無視ぶっちぎり!
苛々メーターが溜まっていく。

「ふん!まぁ、いいや。御前演武で結果出しゃ、あんたの許可云々うんぬん関係ねぇ」
「一等勝者のかい?聞いたからには、私がそれをみすみす見逃すとでも?」
「温室箱入りおうぢ様に何がおできになると?」
「できないと思うのかな?」
「ッッッ⁉︎」

小馬鹿にしたようなユーグの言葉に、カレスがゆったりと返す。
触れた腕を通して、ビリビリと痺れるような闘気を感じ、俺の体が無意識に震える。
表情は一貫して優しく穏やかだが、カレスの目は笑ってない。

「なるほど……どうやら、見た目通りの皇子様ってわけじゃないようだ」
「ひけらかすのは好かないんだ。研いだ牙と爪は必要ない限り隠しておくに限る。面倒だからね」

緊張をみなぎらせたユーグに、カレスがふっと闘気を解いて微笑んだ。
無意識にカレスの腕をギュっと握っていたらしい。
慌てて離す俺に、カレスが横目に笑う。

「今は引く。だが、御前演武は諦めねぇ。悪いが、俺にも簡単には諦められるほどの熱じゃないようだからな」
「取れるものなら取ればいい。簡単には……無傷では済まさないよ?」
「おっかないこった……じゃあな、カナデ皇子。から待ってろよ?」

不敵に笑うカレスに、ユーグもまた不遜ふそんに返しその場を去る。
嵐の後の静けさとでも言おうか、その場が静まり返る。

「さ、て?皇族席に居るはずのお前がここに居る理由を聞こうか?」
「べ、つに……理由、なんか」

声音はやんわりとだが、何故か叱責されてる感が半端ない。
悪い事はしていない。
していないのに、なんだか後ろめたさを感じるのは何故だ⁉︎

「まったく…変なものを引き寄せて。こんな事なら、の方が良かったな」
「ッッッ!!」

カレスの言葉に、ビクッと体が震えた。

「ま、前って……?」

必死に出した声は、自分でも分かるくらいに震えて掠れて……
内心、叱咤しったする俺を尻目に、カレスが意味深に笑う。

「まぁ、私はどちらでも構わないかな。ただ、これ以上変な虫がつくのは嫌だから、少し、大人しくしてようね?」

スルリと頬を優しく撫でさすられ、ギュッと唇を噛みしめ手から逃れるように顔を背ける。

「こ、たえに、答えてないッ!」

叫ぶように返した俺を、カレスが再度強く引き寄せる。
ムカつく!
こちらの言うことには一切答えず、のらりくらり…
キッと睨みつけた俺に、カレスがクスと笑いながら顔を寄せてきた。
また⁈
慌てて顔を背け…ようとして、俺の思惑とは裏腹、カレスの唇が目元に口づけられる。
チュッと、酷く場違いな可愛らしいリップ音を立てて唇が離れた。

「もうそろそろ休息時間だ。自分の宮で大人しく、、ね?」

呆然としたままの俺の耳に囁き、カレスが離れて行った。
ガクンと力が抜ける。
のろのろと持ち上げた手で頬と目元に当てた瞬間、物凄い羞恥と怒りに顔が一気に茹だった。
ぶるぶる震える体で、ギッと去って行った嵐たちの方を睨む。

「ふッッッざけんなぁーーーーーーーーーーー!!」










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