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第1章 とにかく普通と平穏を 騒がしいのはお断り!

6.とりあえず回避!避けて避けて避けまくる!!

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壁ドン。
まさか、いい男の仕草、憧れを、自分がされる羽目になるとは……
カレスはニヤニヤと意地悪そうに笑っているが、見た目がいいから少しも下品に映らない。

くそ!イケメン、滅べ!!!

後ろは壁。それ以上退がれもせず、が、ビッタリ壁にくっ付いて、精一杯睨む。
こんな奴に怯えた顔は見せたくない。

「睨んでも可愛いだけだぞ?それより、素直に自分の事、話した方がよくないか?」
「話すも何も…俺はあんたの異母弟…」
「まだ、認めないわけ、か…身体に聞いたら素直になるか?」
「か⁉︎な、な、なななっ、!!」

何、言ってくれてんだーーーーーーーーーー⁈
あまりにとんでも発言するカレスに、俺の口はパクパク開くばかりでまともに声にならない。
ずいっと、体を更に密着される。
鼻先数センチ。吐息を感じるくらいに顔が近い。

「か、か……」
「かか??」

何とか言葉を絞り出そうとする俺に、カレスがふわりと微笑んで唇を寄せてきた。

だ、駄目だ!
悔しいが、これ以上、イケメンアップに耐えらんない!

ギュッと固く目を閉じ、勢いよく口を開く。

「噛むからなッッ!!」
「……………………は?」

カレスの口から、呆けたような声が出た。
閉じていた目をそろっと開くと、目をパチクリさせるカレスが映り、今の内にと、胸に両手をつき体を押しやる。

「か、噛むからな!それ以上寄ったら、その顔噛んでやるッッ!!」

我ながら、なんて情けない脅し文句だと思ったが、なりふり構っていられない。
とりあえず、意表をつくことはできたらしい。
カレスが呆然となったおかげで、離れる事ができた。

「ぷっ、、!ははっ!あははははっッッ!」

しばらく無言の後、カレスが大笑いしだした。
憮然となる俺に、カレスが目端に浮かぶ涙を拭き取り、笑いながら視線を向けてきた。

「ははは!こ、ここまでやって、こんな拒まれたのは初めてだ。しかも、顔を噛むって、そんな事言ってきたのもお前が初めてだ」
「別に笑わせようとしたわけじゃ……」

ムッスリ不貞腐れる俺に、カレスが堪えきれないと、更に盛大に吹き出す。
こんなに笑われると、それは逆に面白くない。
変な空気になってたのを逸らせたのはいいが、まるで馬鹿にされてるみたいだ。
肩を震わせ、口元を手で覆い、未だに笑い続けるカレスから、ムスッとしたまま顔を背けた。
勝手に笑ってろとばかり、離れようとした俺の手首がカレスに掴まれ引き寄せられる。

「しつっこい!!もう、いいだろ⁉︎俺ももういい!」

これ以上ここに居れば、ますます人生やり直しどころじゃなくなる。それが分かった以上は、こんな場所、目の前の危険な男からはさっさと離れるべきだ。

「ますます気に入ったな。俺は是非とも
「俺はなりたくない!断わるッ!」

間髪入れず即答する俺に、カレスが愉快そうに笑い目を細めた。
フッと不敵に笑んだカレスの腕が引かれる。
手首を掴まれたまま、なす術なく、俺の体がカレスに抱き込まれた。

「な、っ、ちょっ、、!!」

俺の抵抗を物ともせず、カレスの顔が首すじに埋められた。
チリと微かな痛みを感じ、必死に体を捩り立てて逃げた。唇が当てられた首すじがピリピリと痺れてる。

「とりあえず、お手つきの証。よっぽど神経図太い人間じゃなければ、見て何も思わない奴はいないだろ」

それという言葉に、バッとそこへ手をやる。
顔が羞恥と怒りに熱くなる。見なくても赤くなってるのが分かる。

「今はここまで、な?なろ?」
「~~~~~~~~~!!誰がなるかッッッ!!」

壮絶なまでの流し目つきで色っぽく言われるが、生憎と、女の子じゃないんだからよろめくわけもなく、ギッと強く睨みつけ言い放った。(若干、涙目なのは目を瞑る…)
悔しいが、ここは逃げるが勝ち!
また捕まる前にと、部屋を飛び出す。
背後から聞こえるカレスの愉快そうな笑い声には、耳に見えない蓋をして聞こえないふりをした。

            *
            *
            *

「お揶揄からかいすぎなのでは?あまり構い過ぎて嫌われても知りませんよ?」
「構わないさ。可愛いから構うんだ。嫌う?上等だな。嫌われても逃す気はない。むしろ、手に入れる気満々だ」

侍従とカレスが交わした会話を知る由もなくーーーーー。









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