8 / 37
第1章 とにかく普通と平穏を 騒がしいのはお断り!
6.とりあえず回避!避けて避けて避けまくる!!
しおりを挟む壁ドン。
まさか、いい男の仕草、憧れを、自分がされる羽目になるとは……
カレスはニヤニヤと意地悪そうに笑っているが、見た目がいいから少しも下品に映らない。
くそ!イケメン、滅べ!!!
後ろは壁。それ以上退がれもせず、が、ビッタリ壁にくっ付いて、精一杯睨む。
こんな奴に怯えた顔は見せたくない。
「睨んでも可愛いだけだぞ?それより、素直に自分の事、話した方がよくないか?」
「話すも何も…俺はあんたの異母弟…」
「まだ、認めないわけ、か…身体に聞いたら素直になるか?」
「か⁉︎な、な、なななっ、!!」
何、言ってくれてんだーーーーーーーーーー⁈
あまりにとんでも発言するカレスに、俺の口はパクパク開くばかりでまともに声にならない。
ずいっと、体を更に密着される。
鼻先数センチ。吐息を感じるくらいに顔が近い。
「か、か……」
「かか??」
何とか言葉を絞り出そうとする俺に、カレスがふわりと微笑んで唇を寄せてきた。
だ、駄目だ!
悔しいが、これ以上、イケメンアップに耐えらんない!
ギュッと固く目を閉じ、勢いよく口を開く。
「噛むからなッッ!!」
「……………………は?」
カレスの口から、呆けたような声が出た。
閉じていた目をそろっと開くと、目をパチクリさせるカレスが映り、今の内にと、胸に両手をつき体を押しやる。
「か、噛むからな!それ以上寄ったら、その顔噛んでやるッッ!!」
我ながら、なんて情けない脅し文句だと思ったが、なりふり構っていられない。
とりあえず、意表をつくことはできたらしい。
カレスが呆然となったおかげで、離れる事ができた。
「ぷっ、、!ははっ!あははははっッッ!」
しばらく無言の後、カレスが大笑いしだした。
憮然となる俺に、カレスが目端に浮かぶ涙を拭き取り、笑いながら視線を向けてきた。
「ははは!こ、ここまでやって、こんな拒まれたのは初めてだ。しかも、顔を噛むって、そんな事言ってきたのもお前が初めてだ」
「別に笑わせようとしたわけじゃ……」
ムッスリ不貞腐れる俺に、カレスが堪えきれないと、更に盛大に吹き出す。
こんなに笑われると、それは逆に面白くない。
変な空気になってたのを逸らせたのはいいが、まるで馬鹿にされてるみたいだ。
肩を震わせ、口元を手で覆い、未だに笑い続けるカレスから、ムスッとしたまま顔を背けた。
勝手に笑ってろとばかり、離れようとした俺の手首がカレスに掴まれ引き寄せられる。
「しつっこい!!もう、いいだろ⁉︎俺ももういい!」
これ以上ここに居れば、ますます人生やり直しどころじゃなくなる。それが分かった以上は、こんな場所、目の前の危険な男からはさっさと離れるべきだ。
「ますます気に入ったな。俺は是非とも仲良くなりたい」
「俺はなりたくない!断わるッ!」
間髪入れず即答する俺に、カレスが愉快そうに笑い目を細めた。
フッと不敵に笑んだカレスの腕が引かれる。
手首を掴まれたまま、なす術なく、俺の体がカレスに抱き込まれた。
「な、っ、ちょっ、、!!」
俺の抵抗を物ともせず、カレスの顔が首すじに埋められた。
チリと微かな痛みを感じ、必死に体を捩り立てて逃げた。唇が当てられた首すじがピリピリと痺れてる。
「とりあえず、お手つきの証。よっぽど神経図太い人間じゃなければ、それ見て何も思わない奴はいないだろ」
それという言葉に、バッとそこへ手をやる。
顔が羞恥と怒りに熱くなる。見なくても赤くなってるのが分かる。
「今はここまで、な?次はもっと仲良くなろ?」
「~~~~~~~~~!!誰がなるかッッッ!!」
壮絶なまでの流し目つきで色っぽく言われるが、生憎と、女の子じゃないんだからよろめくわけもなく、ギッと強く睨みつけ言い放った。(若干、涙目なのは目を瞑る…)
悔しいが、ここは逃げるが勝ち!
また捕まる前にと、部屋を飛び出す。
背後から聞こえるカレスの愉快そうな笑い声には、耳に見えない蓋をして聞こえないふりをした。
*
*
*
「お揶揄いすぎなのでは?あまり構い過ぎて嫌われても知りませんよ?」
「構わないさ。可愛いから構うんだ。嫌う?上等だな。嫌われても逃す気はない。むしろ、手に入れる気満々だ」
侍従とカレスが交わした会話を知る由もなくーーーーー。
0
お気に入りに追加
1,332
あなたにおすすめの小説
無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~
白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。
そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!?
前世は嫌われもの。今世は愛されもの。
自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!!
****************
というようなものを書こうと思っています。
初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。
暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。
なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。
この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。
R15は保険です。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる