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女神選抜試験
第5話 ルーカスとの魔物討伐
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クリスは半ば夢見心地でハーヴェイの部屋を辞した後、気持ちを入れ替えてルーカスの部屋へ訪ねた。
マリーはティルナノーグに行ったのか、もういなかった。
「やあ、いらっしゃい」
ルーカスは非常に友好的にクリスを迎えてくれた。
「ルーカス様、こんにちは。本日は楽園の魔物討伐のお願いに参りました」
スカートをつまんで挨拶すると、ルーカスはその瞳に色気を滲ませて微笑んだ。
「そんなことよりも、君と二人で語らいたいのだが」
これはもしかしなくても、面倒くさくて言ってるなとクリスは感づいた。
「……申し訳ございません。楽園では火属性の魔物が蔓延っていて、どうしてもルーカス様のご協力が必要なんですの。語らうのは、その場ではいけませんか」
すると視界の脇にあるルーカスの愛情度のグラフが急に伸び出した。
──そうだった。この方は親密度よりも愛情度の方が伸びやすいんだった。
「そうか、それでは君と一緒に魔物討伐に行くとするか」
それを聞いてクリスはほっと息をついた。そして自然と微笑みがでてくる。
すると、また愛情度のグラフが伸びた。
──うん? ちょっと短期間に上がり過ぎじゃない? いくらルーカス様がタラシだと言っても……。
この時、クリスは自分が特上級の美貌と言われているのをすっかり忘れていた。
「はい。よろしくお願いしますわ」
うっかりグラフに気を取られて間が開いてしまい、クリスは慌てて返事をした。
「女神様! お待ちしておりました!」
楽園に赴くと、ハンスが感動のあまり涙目になって、クリス達を出迎えた。
昨日会ったばかりなのに大袈裟だなと思ったが、こちらの時間では一週間が経過しているらしい。
「水の魔術師様をお連れしたわ。これから早速魔物討伐に出かけます」
「お願いいたします。わたくしも連れていってくださいますか」
それを聞いて、クリスは一瞬眉をひそめた。
ハンスの気概は認めるが、確か神官はゲーム中で戦闘に参加することはなかったはずだ。
「君になにかあったら困るし、ここはわたし達にまかせてほしい」
ルーカスがそう言ってくれたので、クリスはほっとした。
「ええ、そうですわね。ハンス、あなたはここで戦況を見守っていてほしいの。お願いね?」
すると、ハンスは渋々とだが頷いた。
そして、クリスとルーカスは展開した地図の、神殿から一番近い場所にいる魔物の場所へと降りた。
すると、小柄で醜い魔物は二人を見て黄色い歯を剥き出した。
「……あれはゴブリンですの?」
「そのようだね。だが油断は禁物だ。……それでは行くよ」
ルーカスはつい、と進み出ると、素早く呪文を唱えた。
すると、水色の光がゴブリンを襲い、瞬く間に消滅した。
「……すごい」
自分の出番さえも作らなかったルーカスにクリスは素直な感想を漏らした。
「ありがとう。だが、ここらは神殿が近いから弱い魔物ですんでいるようだね」
「そうなんですの。気がつきませんでしたわ」
そう言われてみれば、地図上には神殿の周りにはゴブリンなどの比較的弱い魔物が点在していたように思える。
クリスが尊敬の目でルーカスを見ると、視界の隅の親密度が上がった。
いけない、このままではハーヴェイ様とでなくて、ルーカス様と仲良くなってしまう。
しかし、魔物は楽園を襲うのを待ってはくれない。
クリスは小さく息をつくとその場で祈りを捧げる。──こうすると、魔物が発生しにくくなるのだ。
ルーカスは、土地が白く煌めく様子を目を細めてから、おもむろに言った。
「それでは、次に行こうか」
「はい」
それから二人はゴブリンを退治して回った。
その中にはちょっと手強いオーガも混じっていて、クリスは少しだけ防御の祈りを使うことができた。
しかし、その後の祈りを捧げて浄化するのも力を使う。
「ふぅ……」
──ちょっと疲れたかな。力を使いすぎたかも。
でも昨日よりも能力が格段に伸びたのを感じる。言わばレベルアップというところか。
「疲れたかい? 気がつかなくて悪かったね」
どうやらルーカスも知らないうちに魔物討伐に熱くなっていたようだ。
「いいえ、わたくしも夢中でしたし。自分の限界に気がつかないわたくしが悪いんですわ」
クリスがそう言った途端、ルーカスとの親密度と愛情度がぐん、と上がった。
──これはいけない。
タラシだとばかり思っていたら、ルーカス様は意外と熱しやすい方だったみたい。
ルーカスはクリスを熱心に見ると、おもむろに言った。
「そろそろ、わたし達は戻ったほうがいいようだ」
「そのようですわね。あ……、ルーカス様、明日も魔物討伐をお願いしたいんですけれど、よろしいでしょうか」
「いいよ、明日はマリーが訪ねてきても、いないことにするよ」
「まあ、そこまでしていただくのは申し訳ないですわ」
それにそこまでしてもらったら、マリーも気の毒な気がする。
でもまあ、魔物討伐するにはそうしてもらった方が大いに助かることは助かるのだが。
「いいんだよ。……もっともマリーには少々申し訳ないがね」
「……ええ」
マリーへの申し訳なさにそれ以上言うことが出来ずに、クリスはルーカスを見た。
すると、その瞳の中に情けない顔をしている自分が映っているのが見えた。
そしてまた、ルーカスの愛情度が少し増えた。……これはいけない。
「そ、それでは神殿に戻りましょう。きっとハンスがやきもきして待っていますわ」
「そうだね。……それでは失礼するよ」
なにを? と思う間もなくクリスはルーカスにお姫様抱っこされた。
「ルルル、ルーカス様……っ」
クリスはびっくりするやら恥ずかしいやらであたふたしてしまった。
真っ赤になるクリスを見て、ルーカスがくすりと笑う。
「そんな顔をすると、君はとても可愛らしいのだね」
さすがタラシ、褒め言葉にそつがない。
おかげでクリスはよけいに真っ赤になってしまい、そんな彼女を見て、ルーカスが楽しそうにくすくすと笑いを零した。
「か……! ルーカス様恥ずかしいですわ、下ろしてくださいませ」
そうクリスが懇願しても、ルーカスは楽しそうに笑うだけで、そのまま転移用の魔法陣に乗ってしまった。
そうしている間にも、ルーカスの親密度と愛情度はぐんぐんと上がっていく。
──ああ。
ルーカス様の数値がMAXになるのも遠い未来じゃないかもしれない。
マリーはティルナノーグに行ったのか、もういなかった。
「やあ、いらっしゃい」
ルーカスは非常に友好的にクリスを迎えてくれた。
「ルーカス様、こんにちは。本日は楽園の魔物討伐のお願いに参りました」
スカートをつまんで挨拶すると、ルーカスはその瞳に色気を滲ませて微笑んだ。
「そんなことよりも、君と二人で語らいたいのだが」
これはもしかしなくても、面倒くさくて言ってるなとクリスは感づいた。
「……申し訳ございません。楽園では火属性の魔物が蔓延っていて、どうしてもルーカス様のご協力が必要なんですの。語らうのは、その場ではいけませんか」
すると視界の脇にあるルーカスの愛情度のグラフが急に伸び出した。
──そうだった。この方は親密度よりも愛情度の方が伸びやすいんだった。
「そうか、それでは君と一緒に魔物討伐に行くとするか」
それを聞いてクリスはほっと息をついた。そして自然と微笑みがでてくる。
すると、また愛情度のグラフが伸びた。
──うん? ちょっと短期間に上がり過ぎじゃない? いくらルーカス様がタラシだと言っても……。
この時、クリスは自分が特上級の美貌と言われているのをすっかり忘れていた。
「はい。よろしくお願いしますわ」
うっかりグラフに気を取られて間が開いてしまい、クリスは慌てて返事をした。
「女神様! お待ちしておりました!」
楽園に赴くと、ハンスが感動のあまり涙目になって、クリス達を出迎えた。
昨日会ったばかりなのに大袈裟だなと思ったが、こちらの時間では一週間が経過しているらしい。
「水の魔術師様をお連れしたわ。これから早速魔物討伐に出かけます」
「お願いいたします。わたくしも連れていってくださいますか」
それを聞いて、クリスは一瞬眉をひそめた。
ハンスの気概は認めるが、確か神官はゲーム中で戦闘に参加することはなかったはずだ。
「君になにかあったら困るし、ここはわたし達にまかせてほしい」
ルーカスがそう言ってくれたので、クリスはほっとした。
「ええ、そうですわね。ハンス、あなたはここで戦況を見守っていてほしいの。お願いね?」
すると、ハンスは渋々とだが頷いた。
そして、クリスとルーカスは展開した地図の、神殿から一番近い場所にいる魔物の場所へと降りた。
すると、小柄で醜い魔物は二人を見て黄色い歯を剥き出した。
「……あれはゴブリンですの?」
「そのようだね。だが油断は禁物だ。……それでは行くよ」
ルーカスはつい、と進み出ると、素早く呪文を唱えた。
すると、水色の光がゴブリンを襲い、瞬く間に消滅した。
「……すごい」
自分の出番さえも作らなかったルーカスにクリスは素直な感想を漏らした。
「ありがとう。だが、ここらは神殿が近いから弱い魔物ですんでいるようだね」
「そうなんですの。気がつきませんでしたわ」
そう言われてみれば、地図上には神殿の周りにはゴブリンなどの比較的弱い魔物が点在していたように思える。
クリスが尊敬の目でルーカスを見ると、視界の隅の親密度が上がった。
いけない、このままではハーヴェイ様とでなくて、ルーカス様と仲良くなってしまう。
しかし、魔物は楽園を襲うのを待ってはくれない。
クリスは小さく息をつくとその場で祈りを捧げる。──こうすると、魔物が発生しにくくなるのだ。
ルーカスは、土地が白く煌めく様子を目を細めてから、おもむろに言った。
「それでは、次に行こうか」
「はい」
それから二人はゴブリンを退治して回った。
その中にはちょっと手強いオーガも混じっていて、クリスは少しだけ防御の祈りを使うことができた。
しかし、その後の祈りを捧げて浄化するのも力を使う。
「ふぅ……」
──ちょっと疲れたかな。力を使いすぎたかも。
でも昨日よりも能力が格段に伸びたのを感じる。言わばレベルアップというところか。
「疲れたかい? 気がつかなくて悪かったね」
どうやらルーカスも知らないうちに魔物討伐に熱くなっていたようだ。
「いいえ、わたくしも夢中でしたし。自分の限界に気がつかないわたくしが悪いんですわ」
クリスがそう言った途端、ルーカスとの親密度と愛情度がぐん、と上がった。
──これはいけない。
タラシだとばかり思っていたら、ルーカス様は意外と熱しやすい方だったみたい。
ルーカスはクリスを熱心に見ると、おもむろに言った。
「そろそろ、わたし達は戻ったほうがいいようだ」
「そのようですわね。あ……、ルーカス様、明日も魔物討伐をお願いしたいんですけれど、よろしいでしょうか」
「いいよ、明日はマリーが訪ねてきても、いないことにするよ」
「まあ、そこまでしていただくのは申し訳ないですわ」
それにそこまでしてもらったら、マリーも気の毒な気がする。
でもまあ、魔物討伐するにはそうしてもらった方が大いに助かることは助かるのだが。
「いいんだよ。……もっともマリーには少々申し訳ないがね」
「……ええ」
マリーへの申し訳なさにそれ以上言うことが出来ずに、クリスはルーカスを見た。
すると、その瞳の中に情けない顔をしている自分が映っているのが見えた。
そしてまた、ルーカスの愛情度が少し増えた。……これはいけない。
「そ、それでは神殿に戻りましょう。きっとハンスがやきもきして待っていますわ」
「そうだね。……それでは失礼するよ」
なにを? と思う間もなくクリスはルーカスにお姫様抱っこされた。
「ルルル、ルーカス様……っ」
クリスはびっくりするやら恥ずかしいやらであたふたしてしまった。
真っ赤になるクリスを見て、ルーカスがくすりと笑う。
「そんな顔をすると、君はとても可愛らしいのだね」
さすがタラシ、褒め言葉にそつがない。
おかげでクリスはよけいに真っ赤になってしまい、そんな彼女を見て、ルーカスが楽しそうにくすくすと笑いを零した。
「か……! ルーカス様恥ずかしいですわ、下ろしてくださいませ」
そうクリスが懇願しても、ルーカスは楽しそうに笑うだけで、そのまま転移用の魔法陣に乗ってしまった。
そうしている間にも、ルーカスの親密度と愛情度はぐんぐんと上がっていく。
──ああ。
ルーカス様の数値がMAXになるのも遠い未来じゃないかもしれない。
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