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第一章:落ちてきたのは異世界の女
第3話 打算だらけの婚約
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「カレヴィ王、お久しぶりです」
一国の王に対し、どこか気安い感じで挨拶をしながら女魔術師が突然執務室に現れた。先程噂になっていた最強の魔術師だ。
「ティカ殿、久しぶりだな。元気であったか?」
カレヴィは魔術に関しては神にも比類するのではないかと言われるこの美女が、大病を患う訳はないと思いつつも一応社交辞令でそう言っておいた。
実際にそんな事態になれば、それはガルディア、いやこの大陸の一大事だろう。
「はい、おかげさまで。カレヴィ王もお元気そうで喜ばしい限りです」
にこやかにこの最強の女魔術師はそう言ってくれたが、彼女がハルカを喚びだしたおかげで隣国の王女との婚約が破談になったことがほぼ確定したのだ。
できることなら、ハルカではなくこの美女に責任を取ってもらいたいカレヴィだったが、残念なことに彼女は既に人妻だった。
カレヴィは不条理なものを感じつつも、今回の顛末を彼女に相談するしかないだろうと思っていた。
そこへ、侍女に先導されて支度を終えたハルカが現れた。
カレヴィは先程とは別人のようになったハルカを思わずまじまじと観察した。
化粧をした顔はまあまあだろう。
胸は豊かだし、体つきも悪くない。
……これなら子も産めそうだ。
カレヴィがハルカに対してそんな評価をしていたところ、突然ハルカがかの魔術師の顔を見て叫んだ。
「千花~!?」
「はるか、久しぶりー。元気だったー?」
それから二人は仲良さげに抱き合い、しばし話に花を咲かせる。
その様子を目にしたカレヴィはなんとなく気が抜けたような気分を味わった。
「……知り合いだったのか?」
「知り合いっていうか……友達です」
聞けばティカが久しぶりに友人のハルカに会いたくて召喚したものの、失敗してここに喚びだしてしまったという。
そう聞けば、なるほどと納得できた。いかにもそれが自然な流れだったからだ。
まさかの展開に、カレヴィはもしかしたらこれはまたとない好機なのではないかと思い始めた。
ハルカはティカがわざわざ召喚までする友人なのだ。とすれば、かなり親しい友人と見ていいだろう。
そのハルカを王妃とすれば、最強の女魔術師と強固な繋がりを持つことが可能だ。
これは王家の血以外、特にこれといった利点が見つからないディアルスタンの王女と婚礼を挙げるよりも余程国益になる。
そんな計算を隠して、カレヴィはティカにハルカが婚約誓約書の上に現れたため、ディアルスタンの王女との婚約が破談になりそうなことを告げ、どうにかならないかと聞いてみた。
「そうですね、誓約書はどうにもなりませんが、ディアルスタンと話を付けることは出来ますよ。この場合、この婚礼はなしということになりますが」
「ああ、それでもいい。だが、国内に相手の名は伏せているが、近々婚礼を挙げることは知らせてしまってある。どうしたらいい」
それを聞いていたハルカが驚いたように瞳を見開くのが目に入る。
ティカは難しい顔をして考え込んでから、やがて仕方なさそうに言った。
「そうですね、はるかには申し訳ないですけど、このままあなたの花嫁になってもらうことになりますね」
──最強の女魔術師の後押し付きか。これはいい。
予定通りに事が進んで、カレヴィは内心笑い出しそうになりながら頷いた。
「ああ、それでいい」
「えええ、千花ちょっと、それは酷いよ」
そこでハルカが飛び上がって、ティカに猛抗議した。……まあ、これは巻き込まれた側からしたら当然の行動だろう。
しかし、最強の女魔術師は人を丸め込むのも上手かった。
たびたび家にも帰すし、勤め先を辞めさせる代わりに給金を更にはずんで出すという条件を出したのだ。
……その中にカレヴィに手を出させないというのがあって、それには引っかかったが、説得の最中だったのでカレヴィはとりあえず黙っていた。
……それはハルカが婚礼を了承した時に、子を成すことをこちらでなんとか納得させればいいだろうと思っていたからだ。
ティカのその説得に、ハルカは面白いくらいに食いついた。入れ食いとはこういうことだろう。
「カレヴィ王と結婚すれば、多少王妃の仕事はあるけど、それ以外は趣味に没頭できるよ。……はるか、どうする?」
ティカの言葉に、ハルカが満面の笑顔で頷いた。
「ええー、それなら結婚する!」
予定通りに物事が運んでカレヴィとしては大変喜ばしいはずだったのだが、ハルカのこのあまりの適当さに、「この女が王妃で本当に大丈夫か?」と彼は少々不安にならずにはいられなかった。
そんなわけで、カレヴィはハルカの安請け合いに呆れていたが、しばらくして大事なことを忘れていたのを思い出した。
「ちょっと待て。王妃になるなら子を成してもらわなければ困る」
いくらハルカが最強の女魔術師の大事な友人で国益になるからといえ、お飾りの王妃では困る。
ハルカには是が非でも王位継承者を産んでもらわなければならなかった。
しかし、なぜかティカはハルカを王妃に、と自分から言ったにも関わらず、カレヴィの子を成させることについてはあまりよい顔をしなかった。
「わたしなら別にいいよ。王様の子供産んでも」
ハルカがこう言ってくれて、カレヴィは内心ほっとした。
先程の王妃になる宣言の時は、少々軽薄なのではないかと思っていたが、実際はハルカはきちんと現実も見えているのではないかとカレヴィは彼女を見直していた。
そんな彼をよそに、ティカが心配げにハルカを見て言った。
「はるか、本当にいいの? もしかしたら、この先好きな人が出来るかもしれないのに」
……なんだ、そうなったらティカ殿はハルカに愛人を囲わせる気だったのか?
過去にそういう例がなかったとは言わないが、出来ればそういうのは自分がいない場所で話してほしかった。
もしそうなった場合、ティカは自分に妾妃をあてがう確率が高いのではないか?
それは妃は正妃だけでいいと思っている彼としては、まったくもって不本意だった。
カレヴィがなんとなく納得出来ない気持ちでいたところへ、ハルカがティカに頷いて言った。
「うん、いいよ。わたし自身、自分に好きな人が出来るとは思えないし、だから王様と結婚しちゃってもいいと思うんだ」
いやにあっさりと、ハルカがそう言うとティカは微妙な顔になったが、やがて溜息をついて頷いた。
「はるかがOKなら、わたしが口を挟むことじゃないよね。でも、なにかあったらすぐに言ってよ?」
ティカがハルカの手を取ってそう言うと、ハルカはうんと笑顔で頷いた。
「……話は済んだか? ハルカが子を成す覚悟をしてくれて助かったぞ」
話がうまくまとまってくれて心底ほっとしたところで、カレヴィは改めてハルカの歳を尋ねた。
「え、二十七歳」
それを聞いた時、カレヴィは一瞬自分の耳を疑った。
……事が決まる前に、こんな大事なことを聞いておかなかったのはまずかった。
「俺より三つも年上なのか? てっきり二十歳そこそこかと……」
若く見えたのですっかり安心していたが、ハルカはティカの友人だったのだ。……ならば、同い年の可能性に思い至ってもよいはずだった。
そうだとすると、惜しい話だがハルカを王妃にするのは考え直さなければならない。
「その歳では、既に男を知っているんじゃないのか? 王妃になるなら、清らかでなければならないぞ」
「ああ、それはないですから。わたしはとっても清らかですよー。なんといっても、わたしはもてない女ですから」
……それは女として自慢げに言うことではないだろう。
自信満々に言ったハルカにカレヴィは頭を抱えたくなった。
しかし、ここまで言うからには、ハルカが清らかなのは本当なのだろう。
「……そ、そうか、ならばいい。だが、おまえの年齢は二十歳ということにさせてもらう。二十七ではなにかと都合が悪い」
実年齢を公表すれば、貴族どもから不満が出かねない。それこそ、先程懸念したように、花嫁の清らかさを疑問視されかねない。それだけは避けなければならなかった。
「……まあ、いいですけど……」
ハルカもそれが分かったらしく、不承不承頷いた。
「それじゃあ、今後よろしくお願いします、カレヴィ王」
深々と頭を下げて心から挨拶してくるハルカに、カレヴィは好感を抱いた。
最初こそ破天荒に見えたが、そこそこ礼儀もなっているし、王妃としてそう心配することもないのかもしれないと思えた。
「ああ、よろしくな。俺のことはカレヴィでいいぞ、俺に対して敬語もいらない」
笑顔でカレヴィがそう言うと、明らかにハルカはほっとしたような顔になった。
「うん、分かった。カレヴィ」
……なんというか分かりやすい女だな。
カレヴィは笑いをこらえながらも、これからハルカが王宮で学ぶであろうことについて少々大げさに脅してみた。
「ただし、公式な場ではそれなりにやってもらうがな。とりあえず、おまえには趣味に没頭する前に礼儀作法をみっちり学んでもらう。覚悟しておけ」
するとハルカは「ええ~っ」と情けない声をあげた。
なんともからかいやすい女だ。
……まあ、上品な姫君を娶るよりも、こういう少々間の抜けた、いやいや、愛嬌のある女の方が楽しいかもしれないな。
その後、急遽作成した婚約誓約書に二人は署名し、婚約は成立された。
ハルカと巡り会ったのは事故ではあったが、まあ結果的にはよかったのかもしれないと思うカレヴィであった。
その後、カレヴィはハルカのいないところでティカにハルカに結婚後好きな男が出来たらどうするつもりだったのかと尋ねたら、予想とは違う答えが返ってきた。
「もちろんカレヴィ王の誇りを踏みにじるような真似はいたしませんよ。わたしは、はるかとあなたの間に信頼関係を築いてほしいのです。それまで、王にはお待ちいただくつもりでいました。もちろんはるかがあなたを愛することが出来れば一番よいのですが」
それくらい、彼女の魔術でいくらでもどうにか出来そうなものだが、しかしそう言ったらティカが凄絶な笑顔で「はるかを家に帰しますよ?」と脅してきたので、カレヴィは不承不承頷いた。
この魔術師を本気で怒らせると怖いことは諸国に知れ渡っているので、彼もそれ以上は強くは言えなかったのである。
一国の王に対し、どこか気安い感じで挨拶をしながら女魔術師が突然執務室に現れた。先程噂になっていた最強の魔術師だ。
「ティカ殿、久しぶりだな。元気であったか?」
カレヴィは魔術に関しては神にも比類するのではないかと言われるこの美女が、大病を患う訳はないと思いつつも一応社交辞令でそう言っておいた。
実際にそんな事態になれば、それはガルディア、いやこの大陸の一大事だろう。
「はい、おかげさまで。カレヴィ王もお元気そうで喜ばしい限りです」
にこやかにこの最強の女魔術師はそう言ってくれたが、彼女がハルカを喚びだしたおかげで隣国の王女との婚約が破談になったことがほぼ確定したのだ。
できることなら、ハルカではなくこの美女に責任を取ってもらいたいカレヴィだったが、残念なことに彼女は既に人妻だった。
カレヴィは不条理なものを感じつつも、今回の顛末を彼女に相談するしかないだろうと思っていた。
そこへ、侍女に先導されて支度を終えたハルカが現れた。
カレヴィは先程とは別人のようになったハルカを思わずまじまじと観察した。
化粧をした顔はまあまあだろう。
胸は豊かだし、体つきも悪くない。
……これなら子も産めそうだ。
カレヴィがハルカに対してそんな評価をしていたところ、突然ハルカがかの魔術師の顔を見て叫んだ。
「千花~!?」
「はるか、久しぶりー。元気だったー?」
それから二人は仲良さげに抱き合い、しばし話に花を咲かせる。
その様子を目にしたカレヴィはなんとなく気が抜けたような気分を味わった。
「……知り合いだったのか?」
「知り合いっていうか……友達です」
聞けばティカが久しぶりに友人のハルカに会いたくて召喚したものの、失敗してここに喚びだしてしまったという。
そう聞けば、なるほどと納得できた。いかにもそれが自然な流れだったからだ。
まさかの展開に、カレヴィはもしかしたらこれはまたとない好機なのではないかと思い始めた。
ハルカはティカがわざわざ召喚までする友人なのだ。とすれば、かなり親しい友人と見ていいだろう。
そのハルカを王妃とすれば、最強の女魔術師と強固な繋がりを持つことが可能だ。
これは王家の血以外、特にこれといった利点が見つからないディアルスタンの王女と婚礼を挙げるよりも余程国益になる。
そんな計算を隠して、カレヴィはティカにハルカが婚約誓約書の上に現れたため、ディアルスタンの王女との婚約が破談になりそうなことを告げ、どうにかならないかと聞いてみた。
「そうですね、誓約書はどうにもなりませんが、ディアルスタンと話を付けることは出来ますよ。この場合、この婚礼はなしということになりますが」
「ああ、それでもいい。だが、国内に相手の名は伏せているが、近々婚礼を挙げることは知らせてしまってある。どうしたらいい」
それを聞いていたハルカが驚いたように瞳を見開くのが目に入る。
ティカは難しい顔をして考え込んでから、やがて仕方なさそうに言った。
「そうですね、はるかには申し訳ないですけど、このままあなたの花嫁になってもらうことになりますね」
──最強の女魔術師の後押し付きか。これはいい。
予定通りに事が進んで、カレヴィは内心笑い出しそうになりながら頷いた。
「ああ、それでいい」
「えええ、千花ちょっと、それは酷いよ」
そこでハルカが飛び上がって、ティカに猛抗議した。……まあ、これは巻き込まれた側からしたら当然の行動だろう。
しかし、最強の女魔術師は人を丸め込むのも上手かった。
たびたび家にも帰すし、勤め先を辞めさせる代わりに給金を更にはずんで出すという条件を出したのだ。
……その中にカレヴィに手を出させないというのがあって、それには引っかかったが、説得の最中だったのでカレヴィはとりあえず黙っていた。
……それはハルカが婚礼を了承した時に、子を成すことをこちらでなんとか納得させればいいだろうと思っていたからだ。
ティカのその説得に、ハルカは面白いくらいに食いついた。入れ食いとはこういうことだろう。
「カレヴィ王と結婚すれば、多少王妃の仕事はあるけど、それ以外は趣味に没頭できるよ。……はるか、どうする?」
ティカの言葉に、ハルカが満面の笑顔で頷いた。
「ええー、それなら結婚する!」
予定通りに物事が運んでカレヴィとしては大変喜ばしいはずだったのだが、ハルカのこのあまりの適当さに、「この女が王妃で本当に大丈夫か?」と彼は少々不安にならずにはいられなかった。
そんなわけで、カレヴィはハルカの安請け合いに呆れていたが、しばらくして大事なことを忘れていたのを思い出した。
「ちょっと待て。王妃になるなら子を成してもらわなければ困る」
いくらハルカが最強の女魔術師の大事な友人で国益になるからといえ、お飾りの王妃では困る。
ハルカには是が非でも王位継承者を産んでもらわなければならなかった。
しかし、なぜかティカはハルカを王妃に、と自分から言ったにも関わらず、カレヴィの子を成させることについてはあまりよい顔をしなかった。
「わたしなら別にいいよ。王様の子供産んでも」
ハルカがこう言ってくれて、カレヴィは内心ほっとした。
先程の王妃になる宣言の時は、少々軽薄なのではないかと思っていたが、実際はハルカはきちんと現実も見えているのではないかとカレヴィは彼女を見直していた。
そんな彼をよそに、ティカが心配げにハルカを見て言った。
「はるか、本当にいいの? もしかしたら、この先好きな人が出来るかもしれないのに」
……なんだ、そうなったらティカ殿はハルカに愛人を囲わせる気だったのか?
過去にそういう例がなかったとは言わないが、出来ればそういうのは自分がいない場所で話してほしかった。
もしそうなった場合、ティカは自分に妾妃をあてがう確率が高いのではないか?
それは妃は正妃だけでいいと思っている彼としては、まったくもって不本意だった。
カレヴィがなんとなく納得出来ない気持ちでいたところへ、ハルカがティカに頷いて言った。
「うん、いいよ。わたし自身、自分に好きな人が出来るとは思えないし、だから王様と結婚しちゃってもいいと思うんだ」
いやにあっさりと、ハルカがそう言うとティカは微妙な顔になったが、やがて溜息をついて頷いた。
「はるかがOKなら、わたしが口を挟むことじゃないよね。でも、なにかあったらすぐに言ってよ?」
ティカがハルカの手を取ってそう言うと、ハルカはうんと笑顔で頷いた。
「……話は済んだか? ハルカが子を成す覚悟をしてくれて助かったぞ」
話がうまくまとまってくれて心底ほっとしたところで、カレヴィは改めてハルカの歳を尋ねた。
「え、二十七歳」
それを聞いた時、カレヴィは一瞬自分の耳を疑った。
……事が決まる前に、こんな大事なことを聞いておかなかったのはまずかった。
「俺より三つも年上なのか? てっきり二十歳そこそこかと……」
若く見えたのですっかり安心していたが、ハルカはティカの友人だったのだ。……ならば、同い年の可能性に思い至ってもよいはずだった。
そうだとすると、惜しい話だがハルカを王妃にするのは考え直さなければならない。
「その歳では、既に男を知っているんじゃないのか? 王妃になるなら、清らかでなければならないぞ」
「ああ、それはないですから。わたしはとっても清らかですよー。なんといっても、わたしはもてない女ですから」
……それは女として自慢げに言うことではないだろう。
自信満々に言ったハルカにカレヴィは頭を抱えたくなった。
しかし、ここまで言うからには、ハルカが清らかなのは本当なのだろう。
「……そ、そうか、ならばいい。だが、おまえの年齢は二十歳ということにさせてもらう。二十七ではなにかと都合が悪い」
実年齢を公表すれば、貴族どもから不満が出かねない。それこそ、先程懸念したように、花嫁の清らかさを疑問視されかねない。それだけは避けなければならなかった。
「……まあ、いいですけど……」
ハルカもそれが分かったらしく、不承不承頷いた。
「それじゃあ、今後よろしくお願いします、カレヴィ王」
深々と頭を下げて心から挨拶してくるハルカに、カレヴィは好感を抱いた。
最初こそ破天荒に見えたが、そこそこ礼儀もなっているし、王妃としてそう心配することもないのかもしれないと思えた。
「ああ、よろしくな。俺のことはカレヴィでいいぞ、俺に対して敬語もいらない」
笑顔でカレヴィがそう言うと、明らかにハルカはほっとしたような顔になった。
「うん、分かった。カレヴィ」
……なんというか分かりやすい女だな。
カレヴィは笑いをこらえながらも、これからハルカが王宮で学ぶであろうことについて少々大げさに脅してみた。
「ただし、公式な場ではそれなりにやってもらうがな。とりあえず、おまえには趣味に没頭する前に礼儀作法をみっちり学んでもらう。覚悟しておけ」
するとハルカは「ええ~っ」と情けない声をあげた。
なんともからかいやすい女だ。
……まあ、上品な姫君を娶るよりも、こういう少々間の抜けた、いやいや、愛嬌のある女の方が楽しいかもしれないな。
その後、急遽作成した婚約誓約書に二人は署名し、婚約は成立された。
ハルカと巡り会ったのは事故ではあったが、まあ結果的にはよかったのかもしれないと思うカレヴィであった。
その後、カレヴィはハルカのいないところでティカにハルカに結婚後好きな男が出来たらどうするつもりだったのかと尋ねたら、予想とは違う答えが返ってきた。
「もちろんカレヴィ王の誇りを踏みにじるような真似はいたしませんよ。わたしは、はるかとあなたの間に信頼関係を築いてほしいのです。それまで、王にはお待ちいただくつもりでいました。もちろんはるかがあなたを愛することが出来れば一番よいのですが」
それくらい、彼女の魔術でいくらでもどうにか出来そうなものだが、しかしそう言ったらティカが凄絶な笑顔で「はるかを家に帰しますよ?」と脅してきたので、カレヴィは不承不承頷いた。
この魔術師を本気で怒らせると怖いことは諸国に知れ渡っているので、彼もそれ以上は強くは言えなかったのである。
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