139 / 142
水の国『メルクーア』〜水が創り出す魔物の大海〜
第138話
しおりを挟む「だから服脱いでって言ってるのよ。私とアンタは顔が似てるから入れ替わろうと思ってね。いきなり私が出てきたら何者かと思われるかもしれないじゃない?私が出ている間はレインの武器にでもなっててよ」
「…………最初からそう言ってください」
そう言って阿頼耶も本来のスライムの姿に戻った。そして着用していた防具だけがその場に落ちた。すぐに阿頼耶は武器の形に変わってレインの手に収まる。
「…………なんかこの感じも久しぶりだな」
やはり阿頼耶は手に馴染む。アルティから貰った剣を使っていたけど、あの場所でずっと使っていたのは阿頼耶だった。
「こんな感じ?勝手にサイズが変わるってすごいね。人間も面白いこと考えるね」
振り返るとアルティは既に阿頼耶が身につけていた防具を着用していた。話し方と髪の長さ以外はほとんど阿頼耶だ。いや瞳の色が違うな。あと抑え込んでるんだろけど、溢れ出ている魔力の質があまりにも異質だ。
「あとは……髪だね。死んでも切りたくないから結ぶか。紐ないね。魔法で縛るか」
何やらぶつぶつと呟きながらアルティは長い髪を後ろで一つに束ねる。それだけでもかなり印象が変わる。
「………何?惚れた?」
アルティは髪を結びながらレインの視線に気付いた。そしてニヤリと笑いからかってみる。
「いや……エリスがやったら可愛いだろうなぁって」
「ああ……そうですか」
「なんだよ?」
「別に?」
アルティは機嫌が悪くなってしまった。何故なのだろう?
「でもその姿で阿頼耶を名乗るのは無理があるだろ?見た目は似てるけど髪が……」
阿頼耶の髪は肩くらいの長さだ。しかしアルティは背中の真ん中くらいまでの長さがある。後ろで一つ結びをしているから少し短く見えなくもないが、阿頼耶よりは普通に長い。
「…………成長期って事にしといて」
「いやそれは無理がある」
「もうーうるさいなぁ。じゃあ……お団子みたいにしてみようか」
そう言ってアルティは手際良く髪を結んでいく。すぐに首の位置に髪で出来たお団子?と言っていいのか分からないものが出来た。アメリアがたまにあんな髪型をしていた。
「これでいいだろ?阿頼耶が突然おしゃれに目覚めたとか言っておいてよ。じゃあ行くよ!ここの主人はこの島の地下にいる。別に周りの海を枯らすまでモンスターを倒し続ける必要はないからね?」
アルティがとんでもない事を言い出した。その言葉にレインも耳を疑う。
「な、何で分かるんだ?」
「え?……魔力探知したらここの真下から大きな反応があったから。その反応がずっと地下を通って外側から黒い水になって溢れ出してるって感じかな?このままモンスターを倒し続けても主人の場所には辿り着けそうにないね」
「魔力……探知?それが俺にも出来たらもっと簡単に攻略できたのに」
「……まあまあそんなに落ち込む事ないんじゃない?私とレインでは生きてきた歴史が違うからね。そんなに焦る事じゃない」
アルティは少し俯いたレインの頭を撫でる。
「歴史って……アルティ何さ」
「歳聞いたら全部の骨をへし折るよ?」
「すいません」
「分かればよろしい。じゃあとりあえず行こうか」
そう言ってアルティは歩き出す。地面を見ながら何かを探しているようだ。レインはそれを追いかける。
しかしアルティは島の中心ではなく外側へと向かって歩いていく。下を向き、何かを呟きながら歩いている。
レインは声をかけようと思ったが、集中しているようなのでやめておく。アルティはそのまま森を抜けて海岸へと行く。そこは先程までレインがニーナたちといた所だ。
「レインさん?それにアラヤ……さん?」
ニーナは先程と同じ場所にいた。リグドはいなくなっていた。別の場所に呼ばれたんだろう。そしてニーナはやはり阿頼耶の違和感に気付く。レインだって誤魔化せるなんて思っていない。
「…………あなた、誰ですか?アラヤさんではありませんね?」
ニーナは警戒する。レインと一緒にいるから太刀を抜いてないだけだ。
「いやぁ?阿頼耶だよ。ねぇレイン?そうだよね?」
そう言いながらアルティはレインの肩に触れる。こいつは隠す気がないのかと思った。
「アラヤさんはレインさんをそう呼びません。そのような態度を取った所も見たことがありません。貴方は何者ですか?」
ニーナは太刀に手をかける。これはもう正直に話した方が良さそうだ。そもそもアルティに隠す気がない。
「アルティ、正直に話そう。……ニーナさん、すいません。前に話した俺の師匠の事を覚えてますか?」
「え?……あ、ああ…前にダンジョン攻略後にうちの新人たちの前で仰ってた御方ですね?……まさかその方が?どうしてここに?」
「俺が……」
「いやぁーこの子がSランクダンジョンに行ってるって聞いてね!流石に死ぬんじゃないかなぁって思って助けに来たんだ。まあ見た目が阿頼耶に似てるし、阿頼耶って事にしたら混乱少ないかなぁって思ったんだけど……無理だったね」
アルティはレインの頭をワシャワシャしながら話す。
「そうですか。……失礼ですが覚醒者としてのランクは?あと職業もお伺いしてもいいですか?」
やはり聞くよな……とレインは思った。阿頼耶はその辺りはちゃんと考えていた。でも今回はアルティだ。まともに考えているわけがない。
「ランクは……分からないね。昔から魔力を扱えたけど、人とは関わらずに生きてたから覚醒者なんてのは、この子に会うまで知らなかった。
だから職業もよく分からないけど、強いてあげるなら『上位魔道士』と『剣聖』って感じ?」
ちゃんと考えてたよ。申し訳ない。
0
お気に入りに追加
162
あなたにおすすめの小説
落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!
酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。
スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ
個人差はあるが5〜8歳で開花する。
そのスキルによって今後の人生が決まる。
しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。
世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。
カイアスもスキルは開花しなかった。
しかし、それは気付いていないだけだった。
遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!!
それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使う事でスキルを強化、更に新スキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった…
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…
※小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~
椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。
探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。
このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。
自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。
ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。
しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。
その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。
まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた!
そして、その美少女達とパーティを組むことにも!
パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく!
泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる