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炎の国『イグニス』〜今こそ覚醒の時〜
第4話
しおりを挟む「あ゛あ゛あああ!!」
レインは背中から発せられる激痛に思わず声を上げた。爪で裂かれただけじゃない。そこから焼けるような匂いがする。爪に炎の属性でも持ってるのか?
レインは後ろからの攻撃の勢いで洞窟の出口にそのまま突っ込んだ。痛みと血が流れていく寒さと痛みに顔を歪ませながら。
しかしそこの光景にそれを忘れた。
「…………明かり?」
そこには光があった。魔法石を加工した街灯のような白い光とレインたち人間が住むような屋敷、手入れされた庭や噴水。
何だここは?貴族みたいな金持ちが暮らす屋敷と庭がそこにはあった。
ここがダンジョンボスの部屋?
ダンジョンを攻略するという事はボスを討伐し、その背後にある魔法石を破壊するという事だ。
その魔法石からモンスターは生まれているとされていて、それを守るのがボスの役目だ。さらにボスを守るモンスターも存在する。
今まで数回ボスの部屋に行った事があるけど、どれも広い空間が広がっているだけで建築物なんてなかった。
レインがそんな考えを巡らせるとすぐに後ろから現実が襲い掛かる。
ガアアアア!!!
闇のモンスターはレインに飛びかかろうとしている。もう避ける事も出来ない。
「…………クソ」
こんな時にも浮かぶのはやはりエリスの顔だった。俺がいなくても大丈夫か?寂しくないか?泣いてしまうだろうか。
「嗚呼……死にたくないなぁ」
レインはただ目を閉じた。もうどうする事も出来ないと理解した。
「………おーい」
嗚呼、死んだよ。完全に死んだ。
「……おーい!聞いてる?ねえってば!……おい!」
「…………え?」
レインはゆっくりと目を開けて前を見た。先程まで目の前に迫っていたはずのモンスターがいない。
さらに視線を後ろへ向ける。
「…………あなたは?」
レインの前には真っ黒な髪と赤い瞳、真っ黒で露出が多い服を着た女性がいた。妖艶という言葉が似合う女性だ。
「君さ……どうやってここへ来たの?」
レインの質問には答えてくれないみたいだ。
「さっき……の、モンスターに追われて……」
「嘘つかないでね?」
女性はいきなり真っ黒な剣を取り出しレインに向けた。どこから出したんだ?見えなかった。
「う、嘘なんか……ついてません!……ほ、本当に追われてて……。それよりもさっきのモンスターは?!」
「え?……あれは私が警戒にあたらせてた番犬だよ。そ、れ、よ、り、も!!君は誰の配下?どうやってここを嗅ぎつけたの!……正直に話せば楽に殺してあげてもいいわよ?」
女性は剣を向けながらこちらへ近付いてくる。配下?何のことかさっぱり分からない。
……どうしたら。
というか。
あれ?……視界が……ボヤけて。
そうか。そもそもレインは死にかけてるんだった。
「…………真っ黒な魔力を追いかけて……たら…ここ……に」
ドサッ!
クソ、意識がもう……。
「……なに?勝手に死んじゃったの?」
もう弁明する力も残されていない。しかし……。
「…………でも今…魔力の色って言ったよね?」
「……………………」
レインにはもう答えることも出来ない。
「……とりあえず話しだけは聞いてあげる。……えーと…どうやって治癒するんだっけ?」
ここでレインの意識は途絶えた。
◇◇◇
「……ん?……こ、ここは」
さっきまで倒れていた地面じゃない。フカフカだ。ベッドの上か?見える風景も明かりのあるの洞窟ではなく木の天井だ。
「……生きてる……のか?」
身体に痛みもない。手で触った感じ傷も塞がっている。というか服も変わってる。
「あら?お目覚め?」
「え?」
レインが寝ていたベッドのすぐ横に椅子に見覚えのある女性が座っている。読んでいた本をパタンと閉じた。
「どうかしたの?まだ身体の調子が良くない?」
「い、いえ……」
正直まだ混乱している。ここはどこでどれくらい時間が経っているのか全く分からない。レインがほぼ無意味な考察を頭の中でしていると
「………………」
女性は無言で立ち上がりレインの方へ寄ってきた。ベッドに腰掛け片手をついてレインにさらに近付く。
そして……。
コツンとレインのおでこに自分のおでこを当てた。熱を測る為の手段だけど……なぜ今?
「うおおおお!!!」
エリス以外の女性と関わる事がないから慣れていない。レインはその場から飛び退きベッドから飛び降りた。背中に壁が当たるまでジリジリと後退した。
「おやおやぁ?……あははッ!君さぁ…意外と可愛いねぇ。取って食べたりはしないよ?」
やはり……この女性の黒い髪。
「あっ!!!……お前!さっき俺を殺そうとしたっ……」
ズドンッ!!
レインの頬を掠めるように本が壁に突き刺さる。あれ?本って壁に刺さるのか?
「……ねえ?誰に向かって…お前って言ってるの?礼儀がなってない人は嫌いだよ?」
「……やっぱりその漆黒の魔力」
さっきまでの雰囲気が一転した。ほとんど感じてなかった真っ黒な魔力がいきなり溢れ出した。
「………………ふぅー…まあいいや」
「…………あれ?」
またその魔力が消えた。
「ごめんね?本当はもう殺してしまう予定だったんだけど事情が変わったの。とりあえず君は『魔色』を見る事ができるよね?」
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