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「死神のタナトーシス」#41(24b)「蛇足変 2」
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「僕なら蹴飛ばしてもいいと?」
「よかったね、おにいちゃん。はじめてのかのじょだよね」
「うん。初めてだ。25になって、ようやく」
「あとごねんで、まほうつかいになれたのにね」
「なれないよ?」
「だいまおうばーんの、かいざーふぇにっくすを、ゆびさきだけでむこうかする、おにいちゃんみたかった」
「できないよ? あれができるのは、ただの武器屋の息子だけだよ?」
「ぶらのほっくの、はずしかたとかわかる?」
「え? なんで?」
「はじめてえっちするときとか、なかなかはずせずに、もたもたしてたら、おねえさん、げんなりしちゃうよ?」
「え? マジ?」
「うん、おおまじ。かたてで、はずせるのが、りそう。わたしで、れんしゅうする?」
僕と妹は、一言一句全く同じ会話をしていた。
不思議なことに、その口調や表情からは、妹にはタイムリープしたという認識がないように見えた。
僕はこの時間の僕に干渉できないが、妹にとってこの時間はテイク2のはずだった。台詞は覚えてさえいれば同じようにできる。けれどその口調や表情、間までが全く同じになるのはおかしかった。
匣を手に入れた妹が、その力を使い、過去を変えようとしているのだと思ったが、もしかしたら違うのかもしれない。
ーー妹は、僕に彼女が出来たことを祝いに来たのだろうか。それとも夜這いをしにきたのだろうか。冗談なのか、本気で言ってるのかさえ、僕にはわからなかった。
黒き匣は300年以上前から西日野神社の歴代の巫女たちを、自分の子や孫のように愛し見守り続けていた。
だが、白き匣が彼と同じとは限らなかった。
むしろ、黒き匣の方がイレギュラーな存在だった。
彼は語ろうとしなかったが、きっと彼は初代の巫女かその母親と出会った頃に、人を愛するということを知ったのだろう。
もしかしたらその女性は、彼にとってはじめての、知恵を授かることを拒否した人間だったのかもしれない。
だから彼は、彼の役割であるはずの、人から人へと渡り歩いては、知恵を授けることを放棄してまで、あの神社の御神体として、この国にとどまることにしたのではないだろうか。
「おにいちゃんに、かのじょができた、おいわいをあげる」
「お祝い?」
「そう。おいわい。わたしと、えっちするか、わたしのひみつを、ひとつだけ、おしえるか、どっちがいい?」
白き匣が、巫女となった者を操り、道具のように使い捨てるような存在だとしたら、この妹はただ利用されているだけだった。
ーーきっとこれは大事な選択肢だと思った。
ーーマルチエンディングのノベルゲームの選択肢のように、選択を誤ればバットエンドルートに突入するような気がした。
ーー自慢じゃないけれど、僕は子どもの頃、かまいたちの夜3を何十周しても、犯人にたどりつけれなかった男だ。
僕は悩むことなく、妹の秘密を教えてもらうことを選ぶはずだった。
生まれてはじめての彼女ができた日の夜に、妹を抱くなんてありえないと。麻衣は血の繋がった実の妹だからと。彼女がいようがいまいが、妹を抱くという選択肢が僕にあるはずがないと。
そして、紆余曲折こそあったが、ハッピーエンドにたどり着くはずだった。
だが、ハッピーエンドがトゥルーエンドとは限らない。
ゲームの続編が製作されるとき、それがバッドエンドの続編だった事例は、僕が生まれる前の時代からいくつも存在していた。
そういう作品に出会う度に、僕はハッピーエンドにたどり着いたはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろうと何度も頭を悩ませてきた。
きっとこんな風に、ハッピーエンドを迎えた後に歴史に介入し、強制的にバッドエンドを迎えさせ、それをトゥルーエンドにしてしまうような存在が現れていたのだろう。
この過去の僕の頭に浮かんだ選択肢もまた、
→妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
二択が八択に増えてはいたが、もはや選択肢ですらないものに変えられてしまっていた。
「よかったね、おにいちゃん。はじめてのかのじょだよね」
「うん。初めてだ。25になって、ようやく」
「あとごねんで、まほうつかいになれたのにね」
「なれないよ?」
「だいまおうばーんの、かいざーふぇにっくすを、ゆびさきだけでむこうかする、おにいちゃんみたかった」
「できないよ? あれができるのは、ただの武器屋の息子だけだよ?」
「ぶらのほっくの、はずしかたとかわかる?」
「え? なんで?」
「はじめてえっちするときとか、なかなかはずせずに、もたもたしてたら、おねえさん、げんなりしちゃうよ?」
「え? マジ?」
「うん、おおまじ。かたてで、はずせるのが、りそう。わたしで、れんしゅうする?」
僕と妹は、一言一句全く同じ会話をしていた。
不思議なことに、その口調や表情からは、妹にはタイムリープしたという認識がないように見えた。
僕はこの時間の僕に干渉できないが、妹にとってこの時間はテイク2のはずだった。台詞は覚えてさえいれば同じようにできる。けれどその口調や表情、間までが全く同じになるのはおかしかった。
匣を手に入れた妹が、その力を使い、過去を変えようとしているのだと思ったが、もしかしたら違うのかもしれない。
ーー妹は、僕に彼女が出来たことを祝いに来たのだろうか。それとも夜這いをしにきたのだろうか。冗談なのか、本気で言ってるのかさえ、僕にはわからなかった。
黒き匣は300年以上前から西日野神社の歴代の巫女たちを、自分の子や孫のように愛し見守り続けていた。
だが、白き匣が彼と同じとは限らなかった。
むしろ、黒き匣の方がイレギュラーな存在だった。
彼は語ろうとしなかったが、きっと彼は初代の巫女かその母親と出会った頃に、人を愛するということを知ったのだろう。
もしかしたらその女性は、彼にとってはじめての、知恵を授かることを拒否した人間だったのかもしれない。
だから彼は、彼の役割であるはずの、人から人へと渡り歩いては、知恵を授けることを放棄してまで、あの神社の御神体として、この国にとどまることにしたのではないだろうか。
「おにいちゃんに、かのじょができた、おいわいをあげる」
「お祝い?」
「そう。おいわい。わたしと、えっちするか、わたしのひみつを、ひとつだけ、おしえるか、どっちがいい?」
白き匣が、巫女となった者を操り、道具のように使い捨てるような存在だとしたら、この妹はただ利用されているだけだった。
ーーきっとこれは大事な選択肢だと思った。
ーーマルチエンディングのノベルゲームの選択肢のように、選択を誤ればバットエンドルートに突入するような気がした。
ーー自慢じゃないけれど、僕は子どもの頃、かまいたちの夜3を何十周しても、犯人にたどりつけれなかった男だ。
僕は悩むことなく、妹の秘密を教えてもらうことを選ぶはずだった。
生まれてはじめての彼女ができた日の夜に、妹を抱くなんてありえないと。麻衣は血の繋がった実の妹だからと。彼女がいようがいまいが、妹を抱くという選択肢が僕にあるはずがないと。
そして、紆余曲折こそあったが、ハッピーエンドにたどり着くはずだった。
だが、ハッピーエンドがトゥルーエンドとは限らない。
ゲームの続編が製作されるとき、それがバッドエンドの続編だった事例は、僕が生まれる前の時代からいくつも存在していた。
そういう作品に出会う度に、僕はハッピーエンドにたどり着いたはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろうと何度も頭を悩ませてきた。
きっとこんな風に、ハッピーエンドを迎えた後に歴史に介入し、強制的にバッドエンドを迎えさせ、それをトゥルーエンドにしてしまうような存在が現れていたのだろう。
この過去の僕の頭に浮かんだ選択肢もまた、
→妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
妹とエッチをする。
二択が八択に増えてはいたが、もはや選択肢ですらないものに変えられてしまっていた。
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