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第38話「小説投稿サイト攻略指南(仮)」④
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もっとも蓋を開けて見れば、俺のこの私小説もどきの内容とタイトルには大きな差異がある。
実際に俺の理想のヒロインが登場するラノベを書いているのは俺ではなく西日野亜美だし、ラノベとか理想のヒロインがどうこう言う前に、奥手男子の俺と奥手女子の亜美が、お互いに好きかなー好きだなーとか思いつつ言いつつも、ただもじもじしているだけで、全く恋路が進展せず、まわりが、というよりは亜美の姉の珠莉がひたすらイラついてるような、純愛小説だったりもするわけなのだが。
いや、純愛小説ではないな、うん。
まぁ、ぶっちゃけ、この私小説もどきの読者さんはいまのところ皆無に等しいのだが、もしこれが「にしひの白書」とか「パンティー×パンティー」とか、そんなんだった場合、読者さんはさらに減っていたのではないだろう。パンティー×パンティーはちょっと面白そうだけど。なんかレッドハーツの代表曲のサビにあわせて口ずさみたくなるし。パンティパンティー、パンティパンティパンティーみたいな!
とにかく、それくらいネット小説はタイトルが重要なわけだが、亜美がつけたタイトルは「アリステラピノア」というものだった。
ヒロインのステラとピノア、そしてふたりの母親であるアリスの名前を繋ぎあわせて亜美が作った造語であり、これはこれで謎めいたタイトルではある。
それに、ふたりのヒロインだけでなく、その母親のアリスもまた、作中ではすでに死亡しているが、主人公の過去に大きく関わるキャラクターでもあったから、正直これしかないと思えるタイトルであった。
だが、異世界転移とか、所持金チートとか、主人公もダブルヒロインも最初から最強装備で無双とか、そういう内容に全く触れていないのだ。タイトルから内容が全く想像できないのだ。
そこで俺はこの週末の間にタイトルの変更を考えていたわけなのだが、
『気づいたら異世界にいた。けれど目の前にはATMがあった。異世界の物価が安すぎるから、最初から最強装備で無双してみた』
という、なんとも残念極まりないタイトルしか思いつかず、それをこれから亜美に提案しなければいけないかと思うと、ますます脚が重くなっていくのだった。
そんなタイトルの小説を俺は絶対読みたくないからだ。
別ペンネームとはいえ破魔矢梨沙が書いた小説のタイトルが、そんなものになるのは一ファンとして許せなかった。アリステラピノアの方が1那由多倍は良いタイトルだった。
だが、
「別にいいんじゃない?」
部室で俺を出迎えた亜美は、あっけらかんとそう言った。
「本当にいいのか?
『気づいたら異世界にいた。けれど目の前にはATMがあった。異世界の物価が安すぎるから、最初から最強装備で無双してみた』だぞ?」
「構わないわ。だってわたしが目指してるのは、前にも言ったけどランキング1位と、あなたの夢をかなえることだもの。
あなたのピノアちゃんはもうわたしのピノアちゃんでもあるし、わたしもピノアちゃんのフィギュアのパンツ、ちょっと見てみたくなってきてるし」
女の子でも、そういうことを考えたりするんだな、と思った。
「今のタイトルじゃ1位になれないんだったら、1位になれるタイトルに変えるだけ。
内容がわかりやすいタイトルじゃないと駄目なんでしょう?
あなたが考えてくれたタイトルにしてもらって構わないわ」
まさか、ゴーサインが出るとは夢にも思わなかった。
いや、むしろ、彼女らしかったのかもしれない。
彼女は塵芥賞受賞作も直列賞受賞作も、確か受賞後にタイトルが変更され出版されていた。
一応タイトルをつけるが、あまりタイトルにこだわる作家ではなく、出版社や編集者がより売れるであろうタイトルを提示した場合は、それに変更しているようだった。
自分が書いた小説の内容に自信を持っているから、その内容を変えろと編集者ならともかく素人の俺に言われたなら怒るかもしれないが、タイトルを変えるだけで読者が増えるなら、どうぞ、どうぞどうぞという感覚なのかもしれなかった。
俺は早速スマホを取り出し、4つのサイトに連載中のタイトルを変更した。
その日の夕方の更新で、どのサイトもアクセス数が飛躍的に伸びた。
連載開始から丸1週間が経過していたため、物語がある程度進んでいたことも効果的だったのだろう。
特に伸びたのは、挿し絵が使えるサイトで、珠莉のコスプレ写真の効果がかなり大きいようだった。
挿し絵が使えないサイトは、ツブヤイターで写真と共にリンクを貼れば、ある程度伸ばせることもわかった。
だが、俺はまだ足りない気がしていた。
実際に俺の理想のヒロインが登場するラノベを書いているのは俺ではなく西日野亜美だし、ラノベとか理想のヒロインがどうこう言う前に、奥手男子の俺と奥手女子の亜美が、お互いに好きかなー好きだなーとか思いつつ言いつつも、ただもじもじしているだけで、全く恋路が進展せず、まわりが、というよりは亜美の姉の珠莉がひたすらイラついてるような、純愛小説だったりもするわけなのだが。
いや、純愛小説ではないな、うん。
まぁ、ぶっちゃけ、この私小説もどきの読者さんはいまのところ皆無に等しいのだが、もしこれが「にしひの白書」とか「パンティー×パンティー」とか、そんなんだった場合、読者さんはさらに減っていたのではないだろう。パンティー×パンティーはちょっと面白そうだけど。なんかレッドハーツの代表曲のサビにあわせて口ずさみたくなるし。パンティパンティー、パンティパンティパンティーみたいな!
とにかく、それくらいネット小説はタイトルが重要なわけだが、亜美がつけたタイトルは「アリステラピノア」というものだった。
ヒロインのステラとピノア、そしてふたりの母親であるアリスの名前を繋ぎあわせて亜美が作った造語であり、これはこれで謎めいたタイトルではある。
それに、ふたりのヒロインだけでなく、その母親のアリスもまた、作中ではすでに死亡しているが、主人公の過去に大きく関わるキャラクターでもあったから、正直これしかないと思えるタイトルであった。
だが、異世界転移とか、所持金チートとか、主人公もダブルヒロインも最初から最強装備で無双とか、そういう内容に全く触れていないのだ。タイトルから内容が全く想像できないのだ。
そこで俺はこの週末の間にタイトルの変更を考えていたわけなのだが、
『気づいたら異世界にいた。けれど目の前にはATMがあった。異世界の物価が安すぎるから、最初から最強装備で無双してみた』
という、なんとも残念極まりないタイトルしか思いつかず、それをこれから亜美に提案しなければいけないかと思うと、ますます脚が重くなっていくのだった。
そんなタイトルの小説を俺は絶対読みたくないからだ。
別ペンネームとはいえ破魔矢梨沙が書いた小説のタイトルが、そんなものになるのは一ファンとして許せなかった。アリステラピノアの方が1那由多倍は良いタイトルだった。
だが、
「別にいいんじゃない?」
部室で俺を出迎えた亜美は、あっけらかんとそう言った。
「本当にいいのか?
『気づいたら異世界にいた。けれど目の前にはATMがあった。異世界の物価が安すぎるから、最初から最強装備で無双してみた』だぞ?」
「構わないわ。だってわたしが目指してるのは、前にも言ったけどランキング1位と、あなたの夢をかなえることだもの。
あなたのピノアちゃんはもうわたしのピノアちゃんでもあるし、わたしもピノアちゃんのフィギュアのパンツ、ちょっと見てみたくなってきてるし」
女の子でも、そういうことを考えたりするんだな、と思った。
「今のタイトルじゃ1位になれないんだったら、1位になれるタイトルに変えるだけ。
内容がわかりやすいタイトルじゃないと駄目なんでしょう?
あなたが考えてくれたタイトルにしてもらって構わないわ」
まさか、ゴーサインが出るとは夢にも思わなかった。
いや、むしろ、彼女らしかったのかもしれない。
彼女は塵芥賞受賞作も直列賞受賞作も、確か受賞後にタイトルが変更され出版されていた。
一応タイトルをつけるが、あまりタイトルにこだわる作家ではなく、出版社や編集者がより売れるであろうタイトルを提示した場合は、それに変更しているようだった。
自分が書いた小説の内容に自信を持っているから、その内容を変えろと編集者ならともかく素人の俺に言われたなら怒るかもしれないが、タイトルを変えるだけで読者が増えるなら、どうぞ、どうぞどうぞという感覚なのかもしれなかった。
俺は早速スマホを取り出し、4つのサイトに連載中のタイトルを変更した。
その日の夕方の更新で、どのサイトもアクセス数が飛躍的に伸びた。
連載開始から丸1週間が経過していたため、物語がある程度進んでいたことも効果的だったのだろう。
特に伸びたのは、挿し絵が使えるサイトで、珠莉のコスプレ写真の効果がかなり大きいようだった。
挿し絵が使えないサイトは、ツブヤイターで写真と共にリンクを貼れば、ある程度伸ばせることもわかった。
だが、俺はまだ足りない気がしていた。
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