女神様のたまご

無名小女

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第10話

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あの出来事の後、私とリリーはすごい仲良くなった気がする。
少なくとも信頼関係は前よりも確実にあった。
今ではパートナーでもあり親友にでもなれたような気もしている。

そんな中、試練の開始日は着々と進んでいた。
学校の試験も終わり、私は試練の方に全力投球した。
気分はまるで受験生だ。

でも私は苦しくない。
支えてくれる人がいる。大丈夫だ。
そんな思いを胸に秘め、私はついに試験当日を迎えた。

「では、テストを始めます。翼、ちゃんと女神様候補の服に着替えた?」
「うん、ばっちりだよ。リリー。」
テストでは不正が無いように天界に行って受けるらしい。
パートナー天使の監視だけでは不正が横行する可能性が高いかららしい。
中にはパートナー天使が不正を斡旋する場合もあるらしいとか…

「あたしはそんなことしないわよ。つばさはしなくても受かるって信じてるし。」
とリリーは若干怒っていたが、私はそれが嬉しかった。

でも不安なことがある。
もし、女神様になれなかったらリリーと過ごした日々はどうなるのだろうか。
その答えは本にあった。
答えは「忘れる」らしい。
願いが叶えられなかったことになるということはなかったことになるということ。
つまり前も言ったが自殺していることになる。

リリーは前に私に忘れたとしても死なないでほしいと言っていた。
同じ自殺をしようとして成功したものからすると、自殺程苦しい物はなく寂しい最期を終えるものはないと…
「大丈夫だよ。私、女神様になるつもりだから。忘れないよ。忘れたくないもん。」
そうは言ったけど私もリリーも不安そうだった。 

だって最終的に女神様になれるのは1人だ。
そう思うと今でも緊張する。
「さあ、そろそろ行こうか。準備はいい?」
リリーが天界へワープする魔法陣の書かれた絨毯を出してきた。
私はそれを見るだけでも緊張して足が震えた。
でも…覚悟を決めなきゃ。
大丈夫だよ。あんなに勉強したんだ。
私ならできる。大丈夫。と言い聞かせる。

「うん。大丈夫。怖いけど私ならいけるはずだから。そう信じてる。」
するとリリーはふわっと笑った。
「そうだね。あたしも翼ならいけるって信じてるよ。行こうか。翼。」
リリーは私の震える手をぎゅっと握った。
そして呪文を唱え始める。
私は目をぎゅっとつぶってリリーの手を握り返した。
そうすることで勇気を少し貰えた気がしたんだ。
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