青桜と双子の秘密

小学校5年生編

18話目

「なあ、お前、本当に高橋か？違うだろ。誰だ、お前。」　

一瞬、頭が真っ白になった。
「えっ」

僕は慌てて竹内の手を掴み、フォークダンスの輪から抜けた。

「なんで違うと思った？」
変装は完璧のはずだった。
髪の毛だって地毛にできる長さまで伸びたし、声だって作ってて完璧なはずだ。

すると竹内は僕の手を指し、
「手にほくろがない。コンプレックスだって言ってた、ほくろが。だから別人だと思った。違うか？」
といい放つ。

そんなことでバレてしまったのか…。
次からは気をつけなきゃなと思いながらも僕は竹内の方をじっと見る。

嘘をついてしまえばよかっただろう。
だけど…
「そうだよ。…僕は高橋佐月の双子の弟の高橋勇輝だ。」
嘘はつけなかった。
彼の目がとても真剣で誤魔化せなかった。

すると彼は大きく目を見開き、静かに言った。
「お前か。なんでまた…こんなこと…」
どこか呆れているようだ。

「佐月は亡くなったんだ。だから僕は佐月のふりをしてる。」　
僕だって真剣だった。
気軽な理由でやってるなんて思われたくなかったんだ。

すると竹内はますます驚いたような顔をし、僕の肩をガシッと掴んだ。
「なんでだ？俺が知ってる高橋は元気だった！」
取り乱しているようだった。　

当たり前だろう。
僕は黙っていることしかできなかった。
弁解も何もできない。　

竹内はそんな僕を見て呆れたように言う。
「事情があるのもお前がかなり辛いのもわかるんだよ。でもそんなことしたって何も変わらないだろ？」

「…………」
何も言い返せなかった。
彼の言ってることは正論だ。
これは僕の自己満足に過ぎない。

竹内は僕の肩を掴んでいた腕を離して、少し考えているようだった。
動揺が態度に現れていたが、真剣に頭を働かせてもいるようでしばらく無言の状態が続いた。

そして重い口を開いた。
「……わかった。誰にも言わないよ。理由がちゃんとあるんだろ？ふざけてやるんだったらここまでレベル高くはできないしな。」　
竹内はそう言うと僕の手を掴み、
「戻ろう。このことはここだけの秘密だ。勇輝、困ったことがあったら頼れ。俺協力するから。」
と言い、輪の中に僕を誘導した。

こうして僕達は何事もなかったかのように輪に戻った。

こうしてフォークダンスは幕を閉じたのだった…