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10 オレがナイトで、お前がプリンセス

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市長指示事項:
・我が市では、無知による性犯罪の発生を予防し、また健全な異性交遊を促すため、高等教育からの性教育を強化する。
1)男子生徒は、性行為の実習を必須科目とする。
2)実習は、異性との初体験の前に行う事を推奨する。
以上。

****

とある私立男子校。
そこは、まさに金持ちの為の学校で、上流階級の市民の子息達が集う市内屈指のお坊ちゃま学校。
崇高な理念、高潔な精神、持たざる者達への慈悲の心、などをスローガンに掲げ、社会の上に立つ、未来のリーダー達を育成する。

この学校の特徴は、ただの上流市民向けの学校、というだけではない。
性行為実習の対応が一風変わっているのだ。

通常の高校では、保健体育や特別授業で行うのが常である。
しかし、この学校では、男女交遊を学べる専門の部活動、通称『目覚めの館』があり、その役割の一つとして、性行為の実習が定義されている。
つまり分かり易く言うと、男子生徒同士で疑似的な男女恋愛を楽しみ、その上で性教育を兼ねる、という画期的なシステムが採用されている、という事である。

****

ある日の放課後。
久我野 潤くがの じゅんは、校内でもひときわ豪華な扉の前に一人立っていた。

『目覚めの館』

その看板を見ては、扉の前をうろうろする。

「入るぞ! よし、入るぞ!」

潤は、勇気を振り絞り、その重い扉を開いた。

****

潤は、圧倒された。
部屋の中も豪華な造り。
カーテン、柱、天井、カーペット、調度品。
高級キャバクラそのもの。

受付では、黒服の男がお辞儀をした。
 
「いらっしゃいませ、お客様」
「あ、あの……これを」

潤は震える手で、手に持っていたチケットを差し出した。

「ああ……無料体験クーポン券ですね。では、あちらでキャストをお選びください」
「は、はい」

「では、ごゆっくり……」

黒服は、再びお辞儀をした。

****

画面には、キャストの子が映し出されている。
美人が勢ぞろい。

と、美人と言ったが、ここは男子校。しかも、部活動なので、当然全員男子生徒。
また、「キャスト」だから、ガチガチの女装なのか、というとそういう訳でもない。
少し女性寄りの化粧をし、ゆったり目の女性服を着用するといった最小限の女装なのだが、元が美形だからか、美男子を超えて美女に見えてしまうのだから不思議だ。

「どの子にしますか?」
「えっと……」

潤は、目移りして中々決められない。
そこに、とあるキャストの子がカーテンから顔を出した。

「遅くなりました! おはようございます!」
「こら、マコ。お客様がいらしゃっていますよ」

「あっ……ご、ごめんなさい」

すっと、奥に消えた。

「……失礼しました。まだあの子は、新米で……」

潤の胸は既に撃ち抜かれていた。

(なんて可愛い子なんだ……)

一目惚れである。

「今の子……いいですか?」
「新人ですがよろしいですか?」

「は、はい! オレ、あの子に決めました! お願いします!」

****

潤は、席に案内された。
二人掛けの椅子。
周りはカーテンで仕切られ、プライバシーは保護されている。

まずは、自己紹介をした。

「マコちゃん、ってうのか。オレは、潤。ジュンって呼んで」
「うん。分かった。ジュン君!」

マコは、にっこりと笑った。


さて、まずは飲み物という事で、マコはミックスジュースを作り始めたのだが、悪戦苦闘。
フルーツをカットする手があぶなっかしい。

「マコちゃん、大丈夫? 手伝おうか?」
「ご、ごめんなさい……でも大丈夫。ボク、慣れてないだけだから……」

「慌てなくていいからね」

潤は、一生懸命に作業するマコの顔を凝視していた。

(可愛いな……)

容姿は、アイドル風。
顔は、クリっとした大きな目に、小さな口。
笑うと、小動物のように抱き抱えたくなる可愛さ。
髪を綺麗に結い、フリル多めの上に、下は丈の短いプリーツスカート。

(まるでお人形さんみたいだ……)

「出来ました、どうぞ!」

差し出されたグラスに口を付けた潤は、歓声を上げた。

「とっても美味しいよ!! マコちゃん!」
「でしょ! だって、愛情入りのミックスジュースだから!! あっ……」

マコは、自分の口から出たセリフに、はっ、として口に手を当てた。

「……自分で言ってちょっと恥ずかしい……です」

ぽっ、と頬が赤く染まっている。

(可愛いすぎるだろ……マジで……でも、本当に男なのか?)

潤は、動揺を隠しきれない。
肌もキメが細かくて色白、声のトーンも高くて可愛らしいし、唇もプルップルッ。
身体つきだって、華奢で女の子っぽい。

(でも、胸は無さそうだし……なによりスカートの前はしっかり膨らんでいる。うん、確かに男だ。オレと同じモノが付いているんだよな……)

潤の視線に気が付いたマコは、スカートの前をさっと手で隠した。
 
「もう、ジロジロ見ないで! 恥ずかしいから!」
「ご、ごめん……あまりにも可愛いから」

「もう、ジュン君のエッチ!」
「でも、可愛いのは、本当だよ!」

「……そう? あ、ありがとう!」

マコは、目を潤ませて、本当に嬉しそうな顔をした。

****

どうやら、潤とマコは相性がいい。
普段、口下手な潤も、マコ相手だと饒舌になるようだ。

学校の行事、SNSの旬な情報、はたまた占いなどのキャチーなネタ。
それらがすらすらと出てくる。

マコは、関心して頷く。

「……ところで、ジュン君って、モテるでしょ?」
「え?」

「だって話おもしろいし、何より、とっても可愛いし」
「可愛い? オレが?」

「うん。ほら!」

マコは、手鏡をスッと潤の前に差し出した。
いつも見ている顔。
とくに特徴もない、一般高校生男子の顔である。
強いて言うなら、人から、童顔だの、おっとり顔だの、言われる時がある。
ただ、それだけ。

「……きっと、お化粧したら凄く可愛いくなると思う」
「オレ、自分の顔にまったく興味ないから」

「もったいない! ボク、ジュン君にお化粧してみたいな……」
「や、止めてよ。気持ち悪い……それより」

潤は、気になっている事があった。
キャストとお客さんが手を繋いで歩く姿がチラホラ見えるのだ。
皆、同じ場所、個室が並んでいる場所に向かっていく。

「ねぇ、マコちゃん。あそこには何があるの?」
「ああ、プレイルームだよ。ほら、個人レッスンするところ」

「あ、あそこで……セックス、いや性教育レッスンを?」
「……うん」

いつの間にか、真っ赤な顔なっているマコ。
上目遣いに潤の顔を見つめた。

「ジュン君も、そのうちレッスン受けるんでしょ?」
「う、うん。そのつもり」

「そうだよね……」

マコは、恥ずかしいのか、伏目がちになった。
潤は、なぜか、そんなマコを見てると、胸がドキドキして堪らない。

慌てて話題を変えようと、周囲を見回す。
と、タキシード姿のイケメン男子の姿が目に入った。黒服とは少し違う。

「……で、でも男の格好の人もいるんだね」
「あれは執事の子だよ」

「執事?」
「うん。お客さんによっては、そっちのをしたいって人いるから……」

「そっち?」
「わ、分かるでしょ? 例えばボク達、キャスト志望の子とか……」

マコは、さらに顔を赤くして目を泳がせた。

「ああ、なるほど。そっちね、そっちか……あははは」

折角話を変えようとしたのだが、あえなく失敗。
と、そこへ助け船が現れた。
館内放送が入ったのだ。

「皆さま、間もなく、全キャストによるダンスタイムです! ステージ中央を御覧ください!」

人の移動で、ざわざわする。
マコも立ち上がった。

「あっ、ボク、いかなきゃ。まだ、練習中なんだけど、頑張って踊るから見てて!」
「うん、ガンバって!」

マコは、ウインクしてテーブルを離れた。

****

ステージには、キャストの子達が集まった。
まさに壮観である。
潤は、キャスト達の華やかさに圧倒され、生唾をゴクリ、と飲みこんだ。

(これが、みんな男だっていうのかよ……信じられねぇ……でも、マコちゃんが一番かわいい)

マコを凝視する潤。
マコは、そんな潤に気が付いたのか、潤の方を見て、にっこりと笑った。
潤は、瞬時に胸を抑えた。

(ああ、ドキドキが止まんねぇ。マコちゃん最高!)



ステージは、数人ずつで交互に踊る形式。
ヒップホップのアレンジやアイドルステップの軽めなものがメイン。
それでも、くるくる回ったり、可愛い仕草で見る者を魅了した。

そして、最後は、お色気ダンス。
足上げを繰り返し、スカートがふわっとめくれショーツが丸見えになった。

(うっ、エッチだ……)

潤はそこでも、マコの股間に釘付けになっていた。



ダンスタイムが終ると、マコは息を切らせて戻ってきた。
潤は、拍手で迎えた。

「すごく良かったよ! マコちゃん、可愛かった!」
「ほんと!? 嬉しい!」

楽しい会話が続く。
潤は、ふと興味から尋ねた。

「……ところで、マコちゃんは、どうしてキャストになったの?」

マコは、えっとねぇ、と考え込んで天井を見た。
しばらくして、潤の方にむき直して言った。

「キャストをしている理由はね……恥ずかしいんだけど、見て」
「え!?」

何と、自分でスカートをめくったのだ。
股間には、パンツ越しでも分かる男の膨らみ。

「ボクのちっちゃいでしょ?」
「か、可愛い……」

潤は、そのこんもりした丘に見惚れて言った。

「もう! ジュン君のエッチ! ボクは真面目に話しているの!」
「ご、ごめん」

「ボク、このせいで男として自信がないんだ。でもね、ボクは男らしくなりたいの。パパとママを安心させたい。でね、ここで働くと、色んな男らしい人と話せるでしょ? ボクは、その話を参考にして、男らしくなりたいって思うんだ」
「……へぇ」

潤は、膨らみが気になって、まったく耳に入ってこない。
しかし、マコの続く言葉で、ハッとした。

「ねぇ、ジュン君のも見せて!」
「え!?」

「だって、ボクばっかり見せて、恥ずかしいもん!」
「オレだって……は、恥ずかしいよ」

「今なら、誰もみてないから! いいでしょ!」

上目遣い、そして口をすぼめてのおねだり。
可愛い子の最終兵器。
絶対に断れないやつである。

「いいけど……オレ、マコちゃんの見たから今興奮しちゃってるよ……」
「いいよ……ボク、そ、そういう風になっているの、好きだから……」

マコの目がキラキラしている。

「分かったよ……じゃあ、えい! あっ……」

潤は、ズボンを一気にずり下げた。
しかし、勢い余って、パンツも一緒に下げてしまった。
ポン、と隆々とした勃起チンポが登場する。

しまった、と慌ててパンツを引き上げて隠すが後の祭り。
嘘でしょ、嘘でしょ、とマコは連呼した。

「ご、ごめん、いきなり……粗末なモノ見せて」
「そんな事ないよ! おっきくて、カッコいい!」

興奮気味に話すマコ。

「そ、そっかな」
「そうだよ、ジュン君だったら執事になれるかも……いいな……」

顔を、赤らめて、尚も潤の股間から視線を外せずにいるマコ。
さすがの潤も、ちょっと恥ずかしくなった。

(オレのを見て興奮してくれてるんだ。オレ、なんだか超嬉しい! しかも、オレのって大きいって、マジかよ!)

潤は、照れ隠しに軽口を言った。

「よし! お、オレ、執事を目指そうかな!」
「うんうん! そうしなよ、きっとファンになる子つくよ!」

「へへへ、そうかな!」

(まてよ、オレが執事になれば、いつでもマコちゃんと話せるし、いずれエッチな事だって……)

「じゃあ、とりあえず、部のパンフレット貰ってくるね……」

マコは、立ち上がろうとした。

「あっ……」

その時、椅子の肘置きにマコのパンツの横紐が引っかかり、ほどけてしまった。
はらりと、落ちるパンツ。
と、同時に、ちょこんとしたペニスがあらわになった。

潤は、目を見開く。
なんと、ちいさいながらもピーンと勃起していたのだ。
マコは、サッと股間を隠した。

「み、みちゃ、ダメ!」

今日一番の恥じらいの表情。
潤の頭はキューっと沸騰。湯気が立ち上る。

潤の中で、何かが、プツンと切れた。

「お、オレ!! マコちゃんの事、大事にするから!」 

潤は、目がぐるぐる渦巻になって混乱。
突然、マコを押し倒した。

「どうしたのジュン君! あっ、ダメ!」
「い、いいだろ……少しぐらい。はぁ、はぁ……」

マコの勃起チンポを握りしめて離さない。

「だ、ダメだって……こんな事をしちゃ。怒られるよ」

もう一方の手で、キャミソール風のフリルの上を捲り上げた。
ぺったんこの胸に咲く、さくら色の男の乳首。

潤は、ガバッ、と抱き付き、マコのそれにしゃぶりついた。

「はぁ、はぁ……マコちゃん、マコちゃん……」
「……あっ、ダメ……」

と、その時、潤の肩を誰かが、トントン、と叩いた。

「失礼します、お客さま……そろそろお時間です」

それは、黒服だった。
冷静な目で、潤を見下ろす。

潤は、急速に現実に引き戻されていくのを感じていた。


****


会計係の黒服が言った。

「……パンツが脱げてしまったのはアクシデントとのことですが、陰茎愛撫と乳首愛撫は別料金ですね」

無料体験には当然含まれていない、オプション扱いというのだ。

「……ポイント、ギリギリですね……」

レジには、支払いポイントが表示された。
潤は、それを見て、やってしまった、とガックリと肩を落とした。

たかだか、ペニスを握って、乳首を少し舐めただけで、この値段である。
潤は、黒服から学生証を受けとりつつ、一番の関心事を問いかけた。

「あ、あの……も、もしセックス、いや、性教育レッスンするってなったら、どのくらいかかりますか?」
「性教育レッスンですね? えっと……あなたはブロンズ学生ですから、ざっと18ヶ月分のポイントですね」

「じゅ、18か月!? そんなに……」


****

寮の部屋に戻った潤は、ベッドに寝ころんだ。

目を閉じれば、マコの顔が、ポンっと浮かび上がる。
おとぎ話で例えれば、
マコこそがプリンセス。
そして、自分こそがプリンセスを守るナイト。

(オレは、出会ってしまった! 理想のパートナーに)

一方で、黒服の言葉を思い返す。

『いいですか、あなたもご存知の通り、ポイントは学生生活を送る上で必要不可欠なものです。マイナスになれば即退学。当部でのプレイはすべて後払いになりますので、気をつけて頂かないと、よもやの事態にもなりかねないですから……』

理性では分かっている。
だが、マコを前にして、暴走して止まらない自分にも理解できる。
愛に生きる男の生き方。
そんな人生もカッコいいと思ってしまうのだ。

潤は、人知れず叫ぶ。

「マコちゃんと付き合いたい! ああ、マコちゃん、好きだ!!」

****

潤は、股間のモノを握り締めて、目を閉じた。
そこには、一糸まとわぬマコがいる。
マコは、甘えん坊の猫のようにオレの体に体を擦りつけてくる。

『きて、ジュン君。そう、気持ちいい……』

潤は、マコの体中を愛撫する。
するとマコは、くねくねと体をくねらせて、可愛い喘ぎ声上げ始める。
しばらくすると、マコは潤の勃起したものを目ざとく見つける。
そして、エロい流し目で、潤を誘うのだ。

『嬉しい、もうこんなになってる……ボクも体が火照ってきて、これ欲しい……』

そして、挿入。
潤は、思いっきり腰を突き上げ、激しいピストン。

『ああ、おっきい……ボク、すごく感じちゃう……いっちゃう……いくっ』

エッチなマコの声。

「う、出る……」

潤は、自分の手を激しく上下に動かし、フィニッシュ。

ドピュ、ピュ、ピュ……。

熱いものが吹き出し、手の中で溢れた。

「はぁ、はぁ……」

潤の頭の中は、すうっと冷静になっていく。

(オレは、マコちゃんの笑顔を守りたい。だから、オレは、マコちゃんのナイトになるしかないんだ。その為にもとにかくポイント……ポイントが欲しい!)

潤は一般家庭の出である。
だから、とても裕福とは言えない。
ポイントが欲しいからと、親に支援を要求することはできない。

そもそも、この学校に入学するのにも、両親には相当な迷惑を掛けた。
では、どうして、わざわざ上流階級向けのこの学校を選んだのかというと、理由は、潤が通常高校の性教育レッスンに我慢できなかったからだ。

一般的には、いかつい男子体育教師のお尻の穴でレッスンを受けるのだという。
興醒めである。
潤は、いつか自分のプリンセスと美しい初体験をする事を夢みている。
その為には、それ相応の練習でなくてはいけない。
断じて、それが汚いおっさんのケツ穴であってはならないのだ。

潤は、そんな信念を持ち、親に頼み込み、練習であっても美しい思い出を残せるであろう、この学校を選んだのだ。

「こうなったら、片っ端からポイント稼ぎをやるしかねぇ!!」

そして、潤のポイント稼ぎの日々が始まった。

****

近隣の養老施設でのボランティア。
トイレ清掃。
食堂のお手伝い。
花壇整備。
地域公園のゴミ拾い。

それを、二週間続けた。
潤は、ベッドになだれ込んだ。

「き、キツい……これをずっと? 毎日やっても三か月でやっとか……」

実は、学生の本分である勉強の成績や学校行事でもポイントは稼げる。
しかし、勉強できない。スポーツダメ。文化部系の才能も無し。の潤ではハードルが高すぎる。

「くそ……せめて、定期考査で上位を取れれば、だいぶ楽になるのだが……オレには、そんな頭もないし……はぁ、疲れたなぁ。マコちゃんに会いたいなぁ」

思い浮かぶのは、マコの笑顔。
いつもは、それで何とか我慢できるのだが、今日に限っては無性に会いたい気持ちが収まらない。

「……そ、そうだ。会うのにはいくつポイントが必要なんだ?」

学校のイントラネットで、「目覚めの館」を調べポイントを確認した。

「……二週間分のポイントを考えると……よし、会うだけなら、まだ余裕がある! 戦士にも休息は必要だって言うしな!」

潤は、早速、目覚めの館へと向かっていた。

****

マコは、笑顔で潤を迎えてくれた。

「久しぶり! ジュン君! もう、来てくれないかと思ってた……」
「そんな事ないよ! ずっと、来たかったんだ!」

「本当に? ふふふ、でも、今日は、来てくれて嬉しいな。ありがとう!」

久ぶりの会話。
潤は、溜まりに溜まっていたものを吐き出す。
楽しくて仕方ない。

潤のポイント稼ぎの近況に、マコは感心して相槌を打つ。

「へぇ、ジュン君。ボランティア頑張っているんだ……すごいね! つらい仕事なのに」
「マコちゃんだって辛いでしょ?」

「ううん、ボクは、楽しいよ」
「でもほら、セ、セックス……いや、性教育レッスンやったりするでしょ?」

マコは、顔の前で手をブンブンと横に振った。

「ああ……レッスンはボクはまだ担当してなくて……実はボク、まだアナルバージンなんだ」
「え、嘘……」

「ふふふ。だって、初めては気に入った人じゃないとやっぱ……やだっていうか」
「そうなんだ……へぇ」

(ば、バージンってマジかよ!?)

潤は、思っても見なかったマコの重大情報に動揺を隠しきれない。
マコは、ポツリ、と呟いた。

「ボク、初めてはジュン君みたいな人だったらいいな……」
「え!?」

「あ、今の忘れて!!! 恥ずかしい!!」

マコは、真っ赤になった顔を手で覆い隠し、首を横にブンブンと振った。

(な、なにこれ……オレの事を? 嘘、まじか??)


その後、表向きは、マコとの会話を楽しんでいるのだが、頭の中には先ほど事が離れない。
やがて、マコは、指名で席を外す事になった。

「ごめんね、すぐに戻るから!」
「うん、待ってるよ。いってらっしゃい!」

潤は、よし、と気持ちの整理をする事にした。

(オレとマコちゃんは両想いなんだ……とすると、オレの初めては絶対にマコちゃん! そして、マコちゃんの初めてもオレ。これは絶対だ!)

(と、すると、やはりオレがボランティアを頑張るしかねぇって事だ)

(でも、それまで、マコちゃんは、バージンでいてくれるかな……いや、そんな事を考えている暇があったら、働くってことだ)

結局、ポイントを稼がないと何も始まらないのだ。

気が付くと、だいぶ時間が経っている事に気が付いた。
マコは、一向に戻ってこない。

潤は、黒服を呼び尋ねた。

「あの、すみません。マコちゃんって……」
「お待たせして、申し訳ありません。只今、ゴールドのお客様のご指名中で……別の子をお呼びしますか?」

「いいえ。大丈夫です。今日は帰ります」

潤が会計を済ませた帰り際、マコが潤の所にやってきた。

「あ、マコちゃん……今、丁度終ったのかな?」
「ごめなさいね……ジュン君」

マコは、本当に申し訳なさそうな顔をした。
潤は、それを見て笑って手を横に振る。

「いや、いいよ、気にしないで! それにしてもマコちゃんって人気なんだね!」
「そうでもないです……」

浮かない顔。
先ほど、テーブルで話していたマコとは別人のよう。

(あれ? どうしたんだろ……疲れているのかな……)

潤は、そう思ったが、これ以上いたら別料金になりかねないと思い、マコに手を振った。

「帰るよ、オレ。じゃあね、マコちゃん!」

と、その時、突然、マコが潤に抱き付いてきた。
潤は、驚いて棒立ちになった。

「ど、どうしたの? マコちゃん」
「ジュン君、ボク、さっきのお客さんに性教育レッスンの指名されちゃった……」

「え!?」
「う、ううっ……」

潤の胸で、すすり泣くマコ。

「ジュン君、ごめんなさい。ダメだよね。こんなボク……」

顔を上げると、そこには半べそのまま健気に笑うマコの顔があった。
潤の中で、愛に生きる男がむくむくと目覚め始めていた。

(オレはマコちゃんのナイト、だから、マコちゃんを泣かせる事などあってはいけない!)

「マコちゃん、来て!」
「え!?」


****

潤は、マコをプレイルームに連れ込んだ。
さすがにマコは、潤を止めに掛かった。

「だ、ダメだよ……ジュン君。勝手な事をしちゃ……ポイントもうないんでしょ?」
「オレなら、どうにでもなっていい。でも、マコちゃんが悲しむ顔なんて見たくない!!」

「ボクは、嬉しいけど……でもやっぱりダメ。ジュン君が酷いことになっちゃう……」
「オレは構わないんだ」

潤は、冷静にマコを説き伏せる。
ずっと、潤の事を気に病んでいたマコだったが、潤の真剣な眼差しを受け、心を決めたようだった。

二人は長いキスをした。
これは愛の誓。
そして、それは、これから始まる男と男の大事な儀式の開始を知らせるサイン。

二人は、繋がる。
といっても、初めて同士のセックス。
自分のモノを相手の中に挿れて、相手と一緒に絶頂に達する。
それが唯一にして最大の事。
気持ちよかったとか、すごく感じたとか、最高だったとか、無粋な事。

潤は、マコの名前を連呼し、マコは、潤の名を連呼し、互いに愛を確かめ合った。

「マコちゃん、マコちゃん……大好きだよ!」
「……ジュン君、ジュン君、ボクも大好き!……」

果てた二人は手を合わせて抱き合う。

余韻を楽しむ二人の元に、黒服が現れた。
プレイルームの扉が開く。
二人は、いよいよ、これまでと、覚悟を決めて最後に固いハグをした。
黒服は言った。

「お客様、困ります。予約なしでこんな事まで……さぁ、こちらへ来てもらえますか?」
「はい」

潤は、潔く立ち上がった。

「ジュン君……」
「マコちゃん、オレは大丈夫。愛してるよ、マコちゃん」

マコは、泣きそうな顔で潤を見送った。


****

小部屋に連れてこられた。
潤は、学生証を黒服に手渡した。

「……ポイント足りませんね。マイナス。それも取り返しがつかないくらい。明日までに用意出来ないと即、退学ですね」
「た、退学……」

サーっと血の気が引き、グニャっと、目の前の景色が歪む。
覚悟していたとは言え、現実を突き付けられると来るものがある。

心のどこかで、何とかなるだろう、と理由もなく思っていた自分の甘さが恨めしい。

(ああ、オレはこれで終わりだ……マコちゃんともお別れ……)

目の前が暗くなった。
貧血だろうか? 潤は、そのまま気を失った。

****

潤は、ハッとして目を覚ました。
全裸。それに椅子に縛られて身動きが取れないようにされている。

「こ、ここは?」
「目が覚めたか? ここは、お前みたいな自制ができずにポイントを失ったモノが行き着く場所」

薄暗い部屋。
目が慣れてくると、拷問らしき道具が壁に掛かっているのが分かった。
そういった嗜好の専用のプレイルームなのかもしれない。

目の前の男は、黒服とは違う。
タキシードを来ている。おそらく執事なのだろう。
かなりのイケメンである事には違いないが、獲物を捕らえる肉食動物のような鋭い目が、今の潤には恐ろしく映った。

「お前に、チャンスをやろう」
「チャンス?」

「退学か、ここで働くか……」
「働く?」

執事は潤の疑問に答える。

「そうだ。働けば、マイナスポイント分は部で立て替えてやる」

(働く……そんな選択肢がまだオレに有るのか!?)

そこで潤は、ピンときた。

(執事にスカウトか!? マコちゃんを通じて、オレのがでかい、って事が伝わっていた。そうに違いない)

潤は、考えを巡らせる。

(いいじゃないか? こき使われようが、マコちゃんといつもいっしょに居られる。ナイト冥利に尽きる。一石二鳥。大逆転だ)

何のデメリットもないし、どう考えても、これ以上の良策はないように思える。
答えは出た。
潤は、執事に答えた。

「分かった! 働くよ、オレ」
「そうか……甘い仕事じゃないぞ。いいんだな?」

「ああ。オレは必要とされているんだ。オレ、頑張って働くよ」
「二言はないな?」

執事は念押しをする。

「ああ、二言はない」
「よし、決まりだ。契約書にサインしてくれ」

潤は、執事が差し出した書類にササっとペンを走らせた。
そして、学生証の認証コードに指紋を当てた。ポイントが補充される。

(オレは、これでマコちゃんを守るナイトになった。マコちゃん、オレ、やったぜ!)

高ぶる熱い想いを胸に、潤は、意気揚々として執事に問いかけた。

「で、オレはいつから働けばいい? 執事の制服は支給してくれるんだろうな?」
「ん? お前、何をいっている……お前はキャストだ」

「え? キャスト? だって、オレはすげぇ、でけえし、それでスカウトされたんだろ?」

執事は、突然笑いだした。

「ははは。何を勘違いしている。お前のどこがデカいんだ?」
「な!?」

「でかいってのは……」

執事は、かちゃかちゃとベルトを外す。

「……こういうサイズを言うんだよ!」
「うぐっ、でけえ……」

そこには、見たこともないような巨根があった。
井の中の蛙。
自分のモノを改めて見ると、比べるのも恥ずかしい。

とは言え、この話に誤解があったのは事実。
潤は、誤解を解こうと、言い張った。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。オレは、入れたい側の人間だ。だからキャストなんてまっぴらだ。この話は無かった事にしてくれ」
「は? 男に二言はねぇ、って言ったよな? それに契約書にだってサインしている」

「お、オレはアナルの経験なんてねぇんだ。な? だから、オレにできるわけがねぇ」
「ふふふ、だから出来るようになるまで、ここで教えてやるんだよ! アナルセックスてやつをよ!」

「な、なんだと……」

執事は、口で咥えたコンドームをぺりぺりと切り裂き、手慣れた仕草で、自分のモノにするっとはめた。
ゆっくりと椅子に固定された潤に近づく。

「キャスト希望の入部者はともかくな……お前みたいな自覚のないノンケ男は、体に覚えさせるのが一番なんだよ!」

いきなり潤の両足首を持ち、乱暴にグイっと開き、勃起したモノを潤の秘部に当てがった。

「や、やめろ……あっ、あーっ!!」

****

潤のアナルバージンは、極太ペニスによって奪われた。
誰とも知らない男のモノが、自分の体の中で暴れる。
なんという屈辱。

「どうだ? アナルにチンコが挿っている感じは? あん? 気持ちいいか?」
「くっ、い、痛いに決まっているだろ! あぐっ、あぐ」

(畜生、オレは、マコちゃんを守るナイトのはずなのに……こんな事になるなんて……ちくしょう、ちくしょう!)

口惜し涙で顔を濡らす。
執事は、腰の振りを緩ませることなく続ける。

「ふふふ、最初は違和感があるかもしれないが、すぐに良くなるさ。男の体ってのは、チンコで気持ちよくなれるよう、ちゃんとケツ穴に性感帯が備わっているんだからよ! おら!」
「うぐっ……あうっ……」

肉棒の先が、奥の敏感な部分に直撃して弾ける。
今まで味わった事のない、初めての感覚。
体を突き抜ける快感。
気持ちよくて、体が勝手に、ブルブルと小刻みに震える。

(くそっ、口惜しいが確かに気持ちいい……適確にオレの気持ちいいところを攻めてきやがる……こいつ、どれだけの男と経験してんだ)

「だいぶ性感帯が開発されてきたみたいだな……突っ込む度に痙攣がやべぇぜ。なぁ、気持ち良くて堪らないだろ? チンコでケツ穴掘られるって」
「ふざけんな! 気持ち良い事なんてあるかよ!」

(とは言ったものの……うっ、ううっ、ちくしょう気持ちいいじゃねぇかよ……固いチンコがこんなに気持ちいいなんて……このままじゃ……や、やばい)

潤は、歯をギュッと噛み締めた。
しかし、オレなら、我慢できる。オレは、マコちゃんのナイトになるのだから。
そう潤は信じて喰いしばる。

一方で、強気な煽りで、潤を攻め続けていた執事だったが、徐々に顔を歪ませるようになった。

「うっ……そ、それにしてもお前のケツマンコ、最高に気持ちいい……ピストンの度に、ヒダが絡みついてきて……こんなの我慢できっかよ……いきそっ……いくっ」

潤は、ゴム越しでも、執事が大量に射精したのが分かった。

「いっちまった……」
「いったのなら、早くチンコ抜けよ!」

(ったく、危なかったぜ……こんな男にイカされるとこだった……)

潤がホッとしたのも束の間。
別の執事がいつの間にか、後ろに控えていた。

「じゃ、次は俺な……」
「ああ、交代だ」

「なんだと!!」

****


性に飢えたイケメン達が、代わる代わるに潤の中に入っていく。

「うっ、なるほど……中々の名器だな……俺は初めてだ。こんなの……いくっ!」

(はぁ、はぁ、くそっ……これで何人目だ? オレの中で、何度も何度もイキやがって……オレだってとっくに気持ちよくなちまってんだよ! くそっ)

「内壁がチンコに絡みつく……しかも締まり抜群かよ。うっ、こんなの直ぐにイキたくなっちまう! いくっ!」

スコスコと、肉棒が出たり入ったりを繰り返す。

潤は、天井を仰ぎ見た。
もう快感を抑えられない。我慢の限界。
足がピーンと張り、ぷるぷると震える。

潤は、堪りかねて怒鳴った。

「お前ら、い、いい加減にしろ……も、もう、いいだろ?」
「はぁ、はぁ……次は、俺だ……」

最初の執事の番が回ってきた。
へとへとになりながらも、潤のアナルを目掛けて男根を突きだしてくる。

(こいつら、目が血走って……まるで野獣の目だ)

「俺は認めねぇぜ……執事の俺達に恥じをかかせやがって! このやろう!」

挿入すると直ぐに高速ピストン。
潤は、きゅうっと、アナルが締まるのを感じた。

「うぐっ……や、やめろ……そんなに突いたら、オレ……」

同時に、執事も叫ぶ。

「くっ、なんだよこれ……突く度に亀頭にザラザラした電気が走るような刺激……まさか、数の子天井ってやつか……うおっ、堪らねぇ……こんなの、止まれねぇよ!!」

暴走するピストン。
執事のイキリ勃ったものが、なり振り構わずにガンガンに突いてくる。

絶対にイクものか。
そう潤は心の中で唱え、必死に耐えていたが、ついに一線を超えた。

(ごめん、マコちゃん……)

潤の目からは、一筋の涙が頬を伝わった。

****

寮の部屋。
潤は、ベッドに寝ころんだ。

壁には、キャスト用のコスチュームが掛かっている。
フリフリのメイド服。

どう見ても、オレに似合うはずがない。
潤は、ため息を付いた。

執事は、潤に言った。

『これが、お前の制服だ。お前は、男を誘うようなエロ可愛い顔をしているから似合うはずだ。しっかり客をとってポイントを返済しろよ。それとな……俺達の相手をたまにしてもらうからな、わ、わかったな……い、嫌とは言わせないぞ。べ、別に、お前の事が気になるとか、そう言うんじゃないからな! 勘違いするなよ!』

思い出すと無性に腹が立つ。
自分の事を有無を言わさず、無理やりキャストに仕立て上げたくせに。

潤は、イライラを爆発させて吠えた。

「くそっ……勝手な事をいいやがって!」

しかし、マコの事を思うと、一転、切ない気持ちが込み上げてくる。

「マコちゃん……オレ、君を守るナイトになるつもりだったのに……こんな事になって。ごめん」

うっ、うううっ……。

潤は、男泣きに泣いた。

****


それから、一か月ほど過ぎた。

目覚めの館。
潤は、プレイルームの中でもプラチナ生徒しか入室を許されない豪華絢爛な部屋にいた。
ハンサムな長身の男が、潤の唇を弄ぶようにキスをする。

「君は最高だよ。ジュンコ」
「ありがとうございます、会長」

「またくるよ。マイハニー」

再びキス。
潤は、生徒会長の背中に手を回して、キスを受け止める。

「また、いつでもいらしてください」

潤は、メイド服の両裾を掴み、淑女の礼をして見送った。


****


更衣室。
着替え中の潤の後ろから、まことが飛び付いてきた。

「ジュン!」

マコの声。
真はそのまま、潤の背中にひしっと抱き付く。
ちなみに、真は、マコの本名で、部活中は禁止なのだが、二人の時はその名前で呼び合う。

「真、お疲れ!」

「お疲れさま! 今日も大忙しだったね、潤」
「まぁね」

「最後の人って、生徒会長でしょ?」
「あ、ああ、そうだけど」

「すごいよね、潤は。生徒会長も虜にしちゃうんだから。さすが、一番人気のキャストだよね」
「いや、別に大したことないよ」

「ううん。ボクは誇っていいと思う」

潤は、真のいつもの買い被りに、ため息をついた。

(オレは、この通り、可愛くもないし、愛想もないし、ましてや、スタイル、ダンスがいい訳でもない。全部、真の方が優れている)

しかしながら、潤のアナルがとんでもない程の名器だという噂は、潤が目を背けようにも、疑いようのない事実。

噂は、学校中にあっという間に知られることになり、潤をトップキャストの座へと押し上げた。
特に、筆おろしには人気が有り、同級生のほどんどは、潤のアナルで童貞は捨てたという事実がある。

もちろん、生徒会長を含め、潤のアナルに恋をしてしまったリピーターは後を絶たない。
ちなみに、イケメンの執事達は、豪華な花束だの有名店の焼き菓子だのを持参し、しきりの潤の気を引こうとする。
で、しばしば抜け駆けがバレ、身内で喧嘩をする始末。

「……そんな事より、真。この後、するだろ?」
「う、うん」

潤の誘いに、真は、顔を赤らめて俯く。

(ったく、真は、変わらないな。可愛いすぎだぜ……)

****

皆が帰った後のプレイルーム。
真は、潤のモノをしゃぶる。

「……れろれろ……潤のチンコ、美味しい……ちゅっぱ」
「うっ……はぁ、はぁ……」

「でも、固くならないなぁ……潤、気持ちよくない?」
「ごめん、真。気持ちいいんだけど……最近あまり固くならいんだ。すっかり、お尻の方が気持ちよくなっちゃって……だから、ペニバンもってきたよ。これで挿れてやるから」
「ありがとう。はむはむ」

「でも、潤。先に、ボクが潤の中に挿れさせて」
「ん? いいけど」

真は嬉しそうな顔で、前を突きだした。

「じゃん! 見て、ボクのおチンチン!」

ピーンと勃起したペニス。
心なしか、セックスの度に逞しくなっている気がする。
潤は、まじまじと見つめながら、言った。

「へぇ、真のってだいぶ立派になってきたなぁ」
「えへへ。潤のお陰かな。潤の中って気持ちよくて、野生の男に目覚めるっていうか、そういう雄々しい気持ちになるんだ!」

「それはよかったね。さぁ、おいで。ほら、ここ」

潤は、M字開脚して、アナルの淵を指で開いた。
ぱっくりと開いた口。
ヒクヒクとうごめき、男を誘う。
真のペニスは、吸い込まれるように、そこの中に挿っていった。

****


真は、一生懸命に腰を振る。

「あっ、すごい。潤の中、気持ちいいっ」
「いいよ、真。確かに、男らしくなってきた……固くて大きい……あっ、そこ。オレも気持ちいいっ」

「あっ、いくっ、ボク、直ぐにいっちゃうよ……」
「まだ、ダメだよ。真、頑張って……」

「う、うん。ボク、頑張る……はぁ、はぁ。で、でも……やっぱり、ボク、いきそう」
「うん。オレも気持ちよくなってきた……いっしょに」

「……うん」
「い、いくーっ!!」

潤に覆いかぶさる真。
二人、イキの余韻を噛み締めながら抱き合う。

「はぁ、はぁ……潤。大好き」
「オレもだ。真」

そして、そのままキス。
ちゅぱ、ちゅぱ、と繰り返し唇や舌を吸い付き舐め合う。

「ボク、幸せ……潤と一緒だから」
「ああ、オレも幸せさ。ずっと、一緒にいような」

「うん!」

潤は、結局のところ、無事、真と付き合う事ができた。
キャストになる、という潤が望まなかった事があったにしろ、実際には、一番の近道だったと言える。

という事で、目標が達成されたのだから、「目覚めの館」など辞めてしまえば、と思うだろう。
実際、潤が部に借りていたポイントはとうに返済済みで、逆にポイントは使いきれない程貯まっているのが現状だ。

その上でも、まだ辞められない理由がある。
それは、シルバー、ゴールドを飛び越え、プラチナ学生になれるチャンスがあるのだ。

実は、潤の性教育での功績で、市長賞なる名誉ある賞の候補者にノミネートされているのである。
もし賞を受賞すれば、プラチナに昇格するのは確実で、そうなれば名実ともに真のナイトになれる、という訳。
潤としても、これを貰わずして、部を辞める訳には行かない。

ただ、潤には、一つ心配事があった。

(このままキャストを続けるとオレのモノは役立たずになりそうな雲行……そうなれば、どう足掻いてもオレはナイトではなくプリンセスの立ち位置になってしまう)

それだけが潤の気がかりだった。

真が潤の胸の中で言った。

「ねぇ、潤。何を考えているの?」
「ん? ああ、何でもない……」

「心配ごと? 大丈夫だよ、潤! ボクは、どんな事があっても潤の味方。ボクは潤のナイトだから!」
「え? ナイト??」

「そうだよ。だって、潤は、可愛いからボクのプリンセスだもん! ボクを男らしくさせてくれるし……」

ぽっ、と顔を赤らめる真。

「は? はぁ?」
「えへへ。ずっと守って上げるからね。潤!」

潤はガクッとこうべを垂れた。

(言わんこっちゃない……でも、まぁ、いいか。ちょっと思ってたのとは違うけど、幸せな事には何も変わらない)

潤は冗談混じりに言った。

「……ちゃんと、守ってくれよな。オレのナイト様」
「うん! ボクの可愛いプリンセス!」

真は、元気な声でそう言うと、満面の笑みを浮かべた。

(ったく、その笑顔はずるいぜ)

潤は、真を力いっぱい抱き締め、そして、心の中で呟いた。

(いいぜ、プリンセス上等だぜ! たっぷりナイトを甘やかすプリンセスになってやる、覚悟しろよ、真!)

もしこれがおとぎ話だったら、こう終るに違いない。
二人は、それからもずっと仲良く暮らしたとさ。
めでたし、めでたし。
、と。
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