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第2章 無限イチャイチャ計画

第52話 50万

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 家。俺は明日世界が爆発しますようにと願いながら天井を眺めていた。

 すると、世界の終わりを告げるかのごとく玄関から邪悪な音が響いてきた。ついにラグナロクかアポカリプスが始まるか。

 当然、そんなわけはなく、いつもの台風みたいな女が来たのだろう。

「ドタドタドタ! バッタン! ガシャーン! こんにちは! 風華ちゃんですよ!」

 効果音を自分で言うな!

「静かにしろ。床が抜けたらどうする」

「そうなったら私の財力でなんとかします!」

 チッ、金で解決かよ。これだから上級国民はよぉ。

「それより! ようやくフォロワー力50万を突破しましたよ!」

「ふぅん、驚異きょうい的だな」

 まぁこれくらいのポテンシャルはあったか。顔はいいし、喋ればおもしれー女だからな。

 弱点だった焦ると目が泳ぐ癖もいつの間にか克服していたし、マジで凄い。調子に乗るので口には出したくないが。

「いえーい! ハイタッチしましょう!」

 はぁ? 陽キャかよ。と言いつつやるのが俺である。ノリが悪いとハブられる世界で生きているからな。目をつけられないよう程々にノリを良くしておく。それがエリート弱男ってもんよ。

 二人の手が上手く合わさり、パンッと、いい音が鳴った。

 予想外のいい音に俺の肩がビクッとなった。ふざけやがって俺は小心者だからデカい音は苦手なんだぞ。電話と玄関チャイムよ、お前らは特に自重しろ。

「なんとわずかにですけど響さんも抜いちゃいました!」

 ついに会社内のお天気キャスターで二位か。すげぇな。数ヶ月前までクビ間近だった女とは思えねぇ。

「ビッキーはなんか言ってたのか?」

「すぐに連絡をくれて、おめでとうって言ってくれました」

 さすがビッキー。嫉妬とかなく純粋に祝ってそう。やっぱビッキーしか勝たん。

「これで無限イチャイチャ計画は一度終了です」

 ようやくか。……なんだかガッカリしている自分がいることに驚きだ。

 それにしても遠い人間になった気がする。いや、元々遠かったことにようやく気づいたのか。

 風華はアイドルみたいなもので画面の向こう側の人間。いずれ別れる時が来る。

 そろそろ覚悟を決めておかないといけないのかもな。

 俺は自分の感情にふたをして風華にいつも通りの表情を向けた。

「なので次は無限イチャイチャ計画2を始めます!」

 ……え?

「はぁ? 何が違うんだよ」

「やっぱりスケールを大きくしたいですねぇ」

 辞めておけ、映画なら無駄に予算だけかかって大爆死するパターンだぞ。

「そうだ! 次は白馬に乗って迎えに来てください!」

「絶対やらねぇ!」

 とか言いつつ、強引に押し切られそうで怖いなぁ。

 とにかく俺と風華の男女交際ごっこはもう少し続きそうである。


【第2章 無限イチャイチャ計画】 —終—
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