36 / 68
第2章 無限イチャイチャ計画
第36話 難しすぎる男女交際2・あーん
しおりを挟む
無限イチャイチャ計画が始まった日の昼。俺は、変なあだ名を付けられそうになったり、ペアルックの服を着させられそうになったりしたお陰で既に疲れ切っていた。
対して風華は元気もりもりで真剣に計画ノートを見ている。かと思ったらお腹をさすり始めた。
「空雄さん、お腹が減りました」
「ウチには調味料しかないぞ」
大体母親か俺が半額弁当買ってきて食べるのが日課で、生鮮食品は腐らせるので無い。レトルトはあるが、貴重な食料をコイツに与える分はないので黙っておく。
「私、彼氏に“あーん”して貰うのが夢だったんです」
そう言って、アホヅラで口をあんぐりと開けている。丸めた紙クズでも放り込んでやろうか。
「焼肉のタレを流し込んだらいいのか?」
「もぅ、意地悪ですねぇ。男性のツンデレさんは受けませんよ?」
ふん、ツンはあってもデレはしませんけどー?
「お金渡すのでご飯買って来てください」
俺はパシリかよ。誰が上級国民の犬になるかってんだ。
「お釣りで好きなもの買っていいですよ」
「わかったよ、ふーたん!」
俺はお金で簡単にデレます!
いつものように白い目で見てくる風華。
「子供みたいですねぇ」
ふん、なんとでも言うがいい。いいから早く金を寄越せ上級国民。
「で、何を買ってきたらいいんだ?」
「あーん出来るものです」
「ホウ酸ダンゴか」
「あ、みたらし団子食べたいです」
ち、余計な気付きを与えてしまったか。
「他は弁当でいいよな? なんの弁当がいい?」
「愛妻弁当」
「妻がいねぇよ」
「ツマ……あ、お刺身食べたいです!」
連想ゲームしてんじゃねぇよ。
「じゃあ刺身と米とみたらし団子、それとお茶でいいか?」
「えー? お弁当も食べたいです。お肉メインのやつがいいですねぇ」
「そんなに食ったら太るぞ」
「やだなぁ、太っても天気図が見えにくくなるだけなので大丈夫ですよぉ」
我慢を覚えろよ!
「じゃあ行ってくる」
「車に気をつけるんですよ」
バカにしやがって、俺は子供かよ。いいえ、子供部屋おじさんです。
「それから知らないおじさんについて行かないように」
おじさんに片足突っ込んでる俺を連れて行くおじさんがいるとは思えないがな!
「あと、巨乳のお姉さんについて行ってはダメですよ」
それは時と場合によります!
「ふん、万が一にも誘惑されることがねぇよ」
「なに言ってるんですか。空雄さんが勝手について行くんですよ」
クソッ、そっちのパターンもあったか!
「それじゃあいってらっしゃい、ソナタ」
そこはアナタだろ! ピアノソナタでも弾いてやろうか! 弾けねぇけど!
それからそそくさと家を出る。歩いて数分、行きつけのスーパーに着いた。
手慣れた足取りで弁当コーナーを物色する。まだ昼なので半額シールは貼られていない。しかし今日はそんなの気にせず買える。なぜなら風華から一万円も渡されたからな。
ケケケ、必要なもの買ったら残りの金で爆買いしてやるぜ、ということを出来ないのが小心者の俺である。後で返せとか言われたら怖いしな。
でも少しくらい贅沢してもいいよな? 久しぶりにアイスでも食うか。
必要なものをカゴに入れた後、アイスコーナーに移動した。周囲を警戒する。俺は見知らぬ女学生に暴言を吐かれやすいので甘いものを買う時は気をつけなければならないのだ。
キョロキョロと入念に確認する。……よし、居ないな。……ハッ、まずい。早くしないと女学生どころか万引きGメンに目を付けられる。
急いでバニラとチョコ味のアイスをカゴに入れて立ち去ろうとした瞬間。
「あー! オジサンなのにアイス買ってるー!」
突然の大声に肩が跳ねた。振り返ると見知らぬ幼女がこちらを指差していた。
ガキがよぉ、オジサンがアイス買って何が悪いんだよ!
「しかもバニラとチョコ味買ってるー!」
んだぁ? オッサンは甘さ控えめコーヒー味にでもしろってかぁ? オジサンだってなぁサンマのハラワタとかサザエの肝とか苦味のあるものばっか食ってる訳じゃねえんだよ。糖分の塊を食いてぇ時もあるんだぞ。
つーか親はどこだよ。この無慈悲な幼女どうにかしろ。と考えていたら母親らしき人が幼女に駆け寄ってきた。
「こら、オジサンだってアイス食べてもいいのよ。すみませんうちの子が」
うんうん、奥さん、フォローは嬉しいけどねぇ……俺はオジサンじゃねぇんだよ! まだギリギリ若者じゃあ!
過激派弱男なら喧嘩に発展していたかもしれないが、残念ながら俺は哀れな穏健派弱男なので、『気にしないでください』と言った後、ニチャアと笑ってレジへと向かった。
会計を済ませてスーパーから外に出る。はぁ……メンタルごっそり削られたなぁ。アイス買うだけでなんでこんな傷付かないといけないの。ぐすん。
……まぁいいか。いつもの事だしな。何回もあるから立ち直りだけは早くなったわ。慣れって嫌だな。
こういう時は帰ってお天気お姉さんを見て癒されるんだ。風華以外のな。
そしてトボトボと歩いて帰宅。玄関を開けると奥から声が聞こえてきた。
「ぶーん!」
なんだ? でかいハエか? と思ったら風華がレースゲームで遊んでいた。
「ぶーん、キキッー、どぉーん! ピーポーピーポー! きゃはははは!」
車を壁に当てて楽しんでいる。何が楽しいんだよ。コイツみたいに能天気に生きられたらなぁ。本当に羨ましいよ。クソッ!
「帰ったぞ」
「あ、おかえりなさい。マンモスは狩れましたか?」
「どこの原始時代だよ。ほら、ゲーム片付けろ。飯食うぞ」
「はーい」
「これお釣りな」
「あれ? あんまり使ってないんですねぇ」
「欲しいものがなかったんだよ。所詮はスーパーだしな。それより弁当温めるから風華は他のやつ並べといてくれ。アイスあるからそれは冷凍庫な」
「裸エプロンはしてくれないんですか?」
弱男の裸エプロンなんて誰得だよ。
「まずエプロンがねぇよ」
「え、裸にはなってくれるんですか!?」
もー面倒くせぇ!
で。
なんやかんやでご飯の準備が整い、食卓に向かい合わせに座る。
「じゃあさっそく、あーんして下さい」
目をつむり、口を開ける風華。歯並びのいい白い歯と、綺麗な舌をしている。上級国民な口内しやがって。煮え湯を流し込んでやろうか。
もちろんそんな事は出来るはずもないので、仕方なく卵焼きを箸で半分に切って風華の口元へ持っていく。が、途中で口を閉じた。
「おい」
「ちゃんと定番の呪文を唱えてください」
「はぁ? 呪文?」
「“はい、あーん”ですよ。これがないとあーんされた気分になれません」
面倒くせぇ。
「……は、はい、あーん」
全身がゾワゾワするのに耐えながら、今度は口の中に入れることに成功した。
「うん、美味しいですぅ。死んだ卵焼きの味がします」
生きた卵焼きがいるのかよ。
「また夢が一つ叶いました。もう二、三回したいところですが、辞めておきます。何を飲まされるか分かりませんからねぇ」
まずは感謝しろよ。
まぁいい。それよりもだ。
「……お、俺にはないのかよ」
実は俺もあーんして貰うのが夢だった。昔、メイド喫茶に行った時にオプションであったので頼んでみたことがある。その時は頼んだ瞬間、メイドさんが真顔になり店長とヒソヒソ話をした後、なぜか売り切れということにされてあーんして貰えなかった。
売り切れってなんだよ。メイドさんの腕がちぎれない限りありえねぇだろ。ふざけやがって。当然、トラウマになり、それ以来メイド喫茶には行っていない。
勇気を出した俺の言葉を聞いて風華は目を丸くした後、片方の口角を上げてヘラヘラし始めた。
「えぇ? なんですかなんですかぁ? 散々小馬鹿にしといて、自分もしたくなっちゃったんですかぁ?」
うぜぇ。
「してあげたいんですけどねぇ。私にはお天気お姉さんというブランドがありますからねぇ。お天気お姉さんのあーんはお金では買えないんですよ? まぁどうしてもと言うなら考えますけどねぇ。ただ、それなりの誠意を見せてくれないとねぇ?」
このパワハラ野郎どうにかしてくれ。
「……誠意とは?」
「甲斐性なしの空雄さんが出来ることと言ったら頭を下げるしかないですよねぇ?」
このモラハラ彼女どうにかしてくれ。
くそぉ、どうするか? コイツに頭を下げたくない。しかし、この機を逃せば二度とあーんをして貰えることはないだろう。ちんけなプライドを取るか、夢を取るか。ぐぎぎ。
「……お、お願いします」
俺はプライドを捨てた。
「仕方ないですねぇ。特別ですよ?」
そう言って、いきなり俺の弁当の唐揚げを箸でぶっ刺した。おい、もっと丁寧に扱えよ。山賊かよ。
「はい、あーん」
俺はゆっくりと口を開けた。遂に夢が叶う。しかし直前で、ひょい、と箸を引かれた。
「今、私の胸見てましたね? やらしー」
見てねぇよ。食欲と性欲を一緒にするな。今はお前の胸肉より鶏のもも肉だ。
「見てないから。早く食べさせてくれよ」
「本当ですかぁ?」
と言って俺の唐揚げを食べている。どさくさに紛れて何してんだてめぇ。
「本当だよ。だから頼む、早くくれ」
風華はニヤニヤしている。絶対嫌がらせしたかっただけだろクソッ!
「じゃあ今度こそ行きますよ。はい、あーん」
今度は嫌がらせをせずに口に運んでくれた。
「おいしいですか? マンモスの肉」
鶏肉だろ。
「まぁな」
普通の唐揚げだけど、あーんして貰った分、心が満たされて余計に美味しく感じる気がする。
「それはよかったです。じゃあサービスでもう一回してあげます。でも胸を見られたくないので目をつむってください」
見ねぇっつーの。……いや言われてなかったらちょっと見てたかもだけど。
「はい、あーん」
目をつむったまま口を開ける。
「じゃあ口を閉じてください」
言われた通り口を閉じて咀嚼する。ん? なんだろう、ペースト状のものだな。その時。
「うわ、辛っ! んだこれ!?」
「えへ、ワサビですよ」
「てめぇふざけんぬぇ……!」
「ぬぇ、だって! きゃはははは!」
風華は腹を抱えて笑っている。
コイツ、ガキみてぇなことしやがってよぉ! くっそ、鼻が鼻がぁ、ツーンとしちゃううう!
対して風華は元気もりもりで真剣に計画ノートを見ている。かと思ったらお腹をさすり始めた。
「空雄さん、お腹が減りました」
「ウチには調味料しかないぞ」
大体母親か俺が半額弁当買ってきて食べるのが日課で、生鮮食品は腐らせるので無い。レトルトはあるが、貴重な食料をコイツに与える分はないので黙っておく。
「私、彼氏に“あーん”して貰うのが夢だったんです」
そう言って、アホヅラで口をあんぐりと開けている。丸めた紙クズでも放り込んでやろうか。
「焼肉のタレを流し込んだらいいのか?」
「もぅ、意地悪ですねぇ。男性のツンデレさんは受けませんよ?」
ふん、ツンはあってもデレはしませんけどー?
「お金渡すのでご飯買って来てください」
俺はパシリかよ。誰が上級国民の犬になるかってんだ。
「お釣りで好きなもの買っていいですよ」
「わかったよ、ふーたん!」
俺はお金で簡単にデレます!
いつものように白い目で見てくる風華。
「子供みたいですねぇ」
ふん、なんとでも言うがいい。いいから早く金を寄越せ上級国民。
「で、何を買ってきたらいいんだ?」
「あーん出来るものです」
「ホウ酸ダンゴか」
「あ、みたらし団子食べたいです」
ち、余計な気付きを与えてしまったか。
「他は弁当でいいよな? なんの弁当がいい?」
「愛妻弁当」
「妻がいねぇよ」
「ツマ……あ、お刺身食べたいです!」
連想ゲームしてんじゃねぇよ。
「じゃあ刺身と米とみたらし団子、それとお茶でいいか?」
「えー? お弁当も食べたいです。お肉メインのやつがいいですねぇ」
「そんなに食ったら太るぞ」
「やだなぁ、太っても天気図が見えにくくなるだけなので大丈夫ですよぉ」
我慢を覚えろよ!
「じゃあ行ってくる」
「車に気をつけるんですよ」
バカにしやがって、俺は子供かよ。いいえ、子供部屋おじさんです。
「それから知らないおじさんについて行かないように」
おじさんに片足突っ込んでる俺を連れて行くおじさんがいるとは思えないがな!
「あと、巨乳のお姉さんについて行ってはダメですよ」
それは時と場合によります!
「ふん、万が一にも誘惑されることがねぇよ」
「なに言ってるんですか。空雄さんが勝手について行くんですよ」
クソッ、そっちのパターンもあったか!
「それじゃあいってらっしゃい、ソナタ」
そこはアナタだろ! ピアノソナタでも弾いてやろうか! 弾けねぇけど!
それからそそくさと家を出る。歩いて数分、行きつけのスーパーに着いた。
手慣れた足取りで弁当コーナーを物色する。まだ昼なので半額シールは貼られていない。しかし今日はそんなの気にせず買える。なぜなら風華から一万円も渡されたからな。
ケケケ、必要なもの買ったら残りの金で爆買いしてやるぜ、ということを出来ないのが小心者の俺である。後で返せとか言われたら怖いしな。
でも少しくらい贅沢してもいいよな? 久しぶりにアイスでも食うか。
必要なものをカゴに入れた後、アイスコーナーに移動した。周囲を警戒する。俺は見知らぬ女学生に暴言を吐かれやすいので甘いものを買う時は気をつけなければならないのだ。
キョロキョロと入念に確認する。……よし、居ないな。……ハッ、まずい。早くしないと女学生どころか万引きGメンに目を付けられる。
急いでバニラとチョコ味のアイスをカゴに入れて立ち去ろうとした瞬間。
「あー! オジサンなのにアイス買ってるー!」
突然の大声に肩が跳ねた。振り返ると見知らぬ幼女がこちらを指差していた。
ガキがよぉ、オジサンがアイス買って何が悪いんだよ!
「しかもバニラとチョコ味買ってるー!」
んだぁ? オッサンは甘さ控えめコーヒー味にでもしろってかぁ? オジサンだってなぁサンマのハラワタとかサザエの肝とか苦味のあるものばっか食ってる訳じゃねえんだよ。糖分の塊を食いてぇ時もあるんだぞ。
つーか親はどこだよ。この無慈悲な幼女どうにかしろ。と考えていたら母親らしき人が幼女に駆け寄ってきた。
「こら、オジサンだってアイス食べてもいいのよ。すみませんうちの子が」
うんうん、奥さん、フォローは嬉しいけどねぇ……俺はオジサンじゃねぇんだよ! まだギリギリ若者じゃあ!
過激派弱男なら喧嘩に発展していたかもしれないが、残念ながら俺は哀れな穏健派弱男なので、『気にしないでください』と言った後、ニチャアと笑ってレジへと向かった。
会計を済ませてスーパーから外に出る。はぁ……メンタルごっそり削られたなぁ。アイス買うだけでなんでこんな傷付かないといけないの。ぐすん。
……まぁいいか。いつもの事だしな。何回もあるから立ち直りだけは早くなったわ。慣れって嫌だな。
こういう時は帰ってお天気お姉さんを見て癒されるんだ。風華以外のな。
そしてトボトボと歩いて帰宅。玄関を開けると奥から声が聞こえてきた。
「ぶーん!」
なんだ? でかいハエか? と思ったら風華がレースゲームで遊んでいた。
「ぶーん、キキッー、どぉーん! ピーポーピーポー! きゃはははは!」
車を壁に当てて楽しんでいる。何が楽しいんだよ。コイツみたいに能天気に生きられたらなぁ。本当に羨ましいよ。クソッ!
「帰ったぞ」
「あ、おかえりなさい。マンモスは狩れましたか?」
「どこの原始時代だよ。ほら、ゲーム片付けろ。飯食うぞ」
「はーい」
「これお釣りな」
「あれ? あんまり使ってないんですねぇ」
「欲しいものがなかったんだよ。所詮はスーパーだしな。それより弁当温めるから風華は他のやつ並べといてくれ。アイスあるからそれは冷凍庫な」
「裸エプロンはしてくれないんですか?」
弱男の裸エプロンなんて誰得だよ。
「まずエプロンがねぇよ」
「え、裸にはなってくれるんですか!?」
もー面倒くせぇ!
で。
なんやかんやでご飯の準備が整い、食卓に向かい合わせに座る。
「じゃあさっそく、あーんして下さい」
目をつむり、口を開ける風華。歯並びのいい白い歯と、綺麗な舌をしている。上級国民な口内しやがって。煮え湯を流し込んでやろうか。
もちろんそんな事は出来るはずもないので、仕方なく卵焼きを箸で半分に切って風華の口元へ持っていく。が、途中で口を閉じた。
「おい」
「ちゃんと定番の呪文を唱えてください」
「はぁ? 呪文?」
「“はい、あーん”ですよ。これがないとあーんされた気分になれません」
面倒くせぇ。
「……は、はい、あーん」
全身がゾワゾワするのに耐えながら、今度は口の中に入れることに成功した。
「うん、美味しいですぅ。死んだ卵焼きの味がします」
生きた卵焼きがいるのかよ。
「また夢が一つ叶いました。もう二、三回したいところですが、辞めておきます。何を飲まされるか分かりませんからねぇ」
まずは感謝しろよ。
まぁいい。それよりもだ。
「……お、俺にはないのかよ」
実は俺もあーんして貰うのが夢だった。昔、メイド喫茶に行った時にオプションであったので頼んでみたことがある。その時は頼んだ瞬間、メイドさんが真顔になり店長とヒソヒソ話をした後、なぜか売り切れということにされてあーんして貰えなかった。
売り切れってなんだよ。メイドさんの腕がちぎれない限りありえねぇだろ。ふざけやがって。当然、トラウマになり、それ以来メイド喫茶には行っていない。
勇気を出した俺の言葉を聞いて風華は目を丸くした後、片方の口角を上げてヘラヘラし始めた。
「えぇ? なんですかなんですかぁ? 散々小馬鹿にしといて、自分もしたくなっちゃったんですかぁ?」
うぜぇ。
「してあげたいんですけどねぇ。私にはお天気お姉さんというブランドがありますからねぇ。お天気お姉さんのあーんはお金では買えないんですよ? まぁどうしてもと言うなら考えますけどねぇ。ただ、それなりの誠意を見せてくれないとねぇ?」
このパワハラ野郎どうにかしてくれ。
「……誠意とは?」
「甲斐性なしの空雄さんが出来ることと言ったら頭を下げるしかないですよねぇ?」
このモラハラ彼女どうにかしてくれ。
くそぉ、どうするか? コイツに頭を下げたくない。しかし、この機を逃せば二度とあーんをして貰えることはないだろう。ちんけなプライドを取るか、夢を取るか。ぐぎぎ。
「……お、お願いします」
俺はプライドを捨てた。
「仕方ないですねぇ。特別ですよ?」
そう言って、いきなり俺の弁当の唐揚げを箸でぶっ刺した。おい、もっと丁寧に扱えよ。山賊かよ。
「はい、あーん」
俺はゆっくりと口を開けた。遂に夢が叶う。しかし直前で、ひょい、と箸を引かれた。
「今、私の胸見てましたね? やらしー」
見てねぇよ。食欲と性欲を一緒にするな。今はお前の胸肉より鶏のもも肉だ。
「見てないから。早く食べさせてくれよ」
「本当ですかぁ?」
と言って俺の唐揚げを食べている。どさくさに紛れて何してんだてめぇ。
「本当だよ。だから頼む、早くくれ」
風華はニヤニヤしている。絶対嫌がらせしたかっただけだろクソッ!
「じゃあ今度こそ行きますよ。はい、あーん」
今度は嫌がらせをせずに口に運んでくれた。
「おいしいですか? マンモスの肉」
鶏肉だろ。
「まぁな」
普通の唐揚げだけど、あーんして貰った分、心が満たされて余計に美味しく感じる気がする。
「それはよかったです。じゃあサービスでもう一回してあげます。でも胸を見られたくないので目をつむってください」
見ねぇっつーの。……いや言われてなかったらちょっと見てたかもだけど。
「はい、あーん」
目をつむったまま口を開ける。
「じゃあ口を閉じてください」
言われた通り口を閉じて咀嚼する。ん? なんだろう、ペースト状のものだな。その時。
「うわ、辛っ! んだこれ!?」
「えへ、ワサビですよ」
「てめぇふざけんぬぇ……!」
「ぬぇ、だって! きゃはははは!」
風華は腹を抱えて笑っている。
コイツ、ガキみてぇなことしやがってよぉ! くっそ、鼻が鼻がぁ、ツーンとしちゃううう!
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる