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第32話 婚約者の交換

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カリブラはソルティアの我儘が嫌になり、ソルティアはカリブラの屋敷で厳しくされるのが嫌になったというわけだ。ソルティアが文句を口にした途端、カリブラがソルティアにキレた。


「なっ、何だその言い方は! そもそもソルティア、お前に問題があるからだろ! 勝手なことばかりしやがって!」

「何よ! 女一人自由にさせるくらいの甲斐性があったっていいじゃない!?」

「やっていいことと悪いことがあるわ! おかげで僕までとばっちりを受けて叱られてんだぞ! こんな最悪の女だなんて思わなかったよ!」

「そっちこそケチくさいのよ! 母親や使用人をうまく宥めることもできないで何が嫡男よ!」


アスーナとハラドの眼の前で罵り合うカリブラとソルティア。以前仲良くアスーナにドッキリを仕掛けた仲の良さはどこへ行ったのだろう。


「……アスーナ、どうする? ほっといて教室に行こうか?」

「そうしたいところですが、そうしたらそうしたでまたうるさく騒がしくすることでしょう。不本意ではありますが言い分を聞くしかないでしょう……」


アスーナは二人を落ち着かせて本題に入ることにした。この二人から話しかけてきた以上、喧嘩されても話は進まない。この期に及んでこの二人に迷惑をかけられるのかとアスーナは嫌そうに思うがハラドもいるので仕方がなかった。


「カリブラ様もソルティアも落ち着いてください。お二人には私達に大事な話があるのではないですか?」

「「!」」


アスーナの言葉でカリブラとソルティアはハッとして我に返って喚くのを止めた。こういう時だけは息ピッタリだなとアスーナもハラドも密かに呆れた。


「おおっとそうだ。流石はアスーナだ。やはり僕に必要なのはお前の方だったようだ」

「お姉様は本当にカリブラ様のことがよく分かっていますわね」

「「…………」」


二人がニヤリと笑みを浮かべて口にした一言でアスーナは二人が何を言いたいのか大体分かってしまった。それはアスーナが絶対に拒む事柄であると。


(この様子だと私にカリブラ様との婚約を戻せと言うのね。お断りだけど)

(この様子だとアスーナを返せというのだろう。お断りだけど)


だが、カリブラの口から出たのは更に非常識なことだった。


「アスーナにハラド、この僕とソルティアの婚約を交換しよう! お互いのために!」

「「…………はぁ!?」」


アスーナとハラドは一瞬理解が遅れてから声を上げて驚いた。カリブラとソルティアの一言と下品な笑みからして、カリブラがアスーナとよりを戻そうと考えていることは予想していたが、婚約者の交換を提案してくるとは予想していなかった。


「アスーナとこの僕がもう一度婚約して、ハラドとソルティアは婚約すればいいんだ! 互いに相性のいい相手と婚約したほうが何かと都合がいいはずだ、そうだろう!」

「お姉様、カリブラ様を返きゃ――返して差し上げますのでハラド様をください。ハラド様、私がお姉様の代わりに婚約して差し上げますのでよろしくお願いします!」
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